胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第7回 シワもシミも、カタログに載せたい。


糸井 『ピーチジョン』のカタログの写真は、
時にはシミとか体毛とかを出したり、
化粧をしてない顔もパーッと出したり、
そんなことをしているじゃないですか。
あれは、敢えて体毛が出ていることや
化粧が落ちていることを、
社長たちが知りながらゴーサイン出してる感じが、
すごいおもしろいなあと思うんです。
野口 ありがとうございます。
他の下着のカタログを見ていて時に、
もともと肌のきれいな人を選んだりとか、
商品を身につけた時にはシワひとつないとか、
そういうのがありますよね?
わたし、それはもともとすごくイヤだったんです。
読んでいて「ウソだろ?」と思うから。
わたしは、リアルなものが好きなので。

だから、掲載しないものといったら、
見苦しくはみでた肉とか、
ビキニラインの毛を抜いた跡とか、
浮きすぎた腕の血管とかです。

タトゥーや、シミやそばかすや、
独特のアクセサリーだとか、
その人の人生を表現しているものに関しては、
カタログに掲載する時であっても、
そのままにしていい、
というようにしているんです。
佐藤 でも、社長がこうやって考えているんだ、
ということを、ふだんから
さんざん言っているにも関わらず、
スタッフの中には、「におい消し」のように
写真をなおしたり変えようとするヤツもいて。

そんなことをしたら、
真正面を向いた写真しかなくなっちゃいますよ。
そういうものは作りたくないんです。

胸を内側に寄せるブラジャーをつけた時に、
ワキの下の肉にシワが寄るって、
当たり前のことじゃないですか。
糸井 そうだよねえ。
逆にその時に、
シワもシミも載せた写真にすることで、
「あなたとカタログ上は、地面がつながってるよ」
というメッセージを、読み手は感じていますよね。
写真が空中に浮いた夢物語にはならないから、
逆に信頼できるカタログとして読めますよね。
佐藤 そう思います。
糸井 ピーチジョンって、
もともとゼロからのスタートで、
貧乏で忙しいところからやっているから、
カタログづくりにしても、ひとつずつ、
「あ、いけね」の連続で
現実を覚えていったと思うんですよ。
そこがすごい。

シミを残していることだって、
一般的にやっていたら、最初から
「取っとくんじゃないの?」
って、曖昧にすませがちなことですよね。
最初は、貧乏と多忙ゆえに、
そうはできなかったんでしょ・
そんなにのんびりやっていたら
1冊もカタログが出ないわけだから、
すごいスピードでつくってみちゃう。

「あ、ここは、しょうがないや。
 ・・・というより、そのままのほうがいい」
そう、あとから考えられるんだと思うんです。

だから、思わずやっちゃったことの
いいところだけを残して今日まで来れたんだね。
佐藤 はい。
野口 ただ、すごい悔しい思いは、していますよ。

例えば、かっこいいブランドの広告は、
写真がスコーンとあって、
ピッとブランド名だけ、書いてありますよね。
確かにかっこいいけども、それは
私たち通販の仕事ではないじゃないですか。
紙の上だけで商品のよさを伝えて
はじめて、の商売ですから。

だから、まっとうなことをやっていますが、
やはり通販って、なんかブランドとして
「下」に見られがちなんですよね。

センスとして「下」に見られる
コメントをされたりすると、悔しい。

「だったら、
 カタログを200ページ作ってみろよ!」
と言いたいぐらいです。
ブランド名だけ入れるなら、
誰だってできるじゃないですか(笑)。
わたしたちが1ページつくるのに、
どれだけ労力を使っているか・・・。


(つづきます)

2001-09-07-FRI
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