胸から伝わるっ。
ピーチ・ジョンがふくらんでいく物語。

 
第11回 リンダと出会う。


糸井 そういう中で、
徐々にふたりは、仲良くなってったの?
佐藤 例えば、ごはんを一緒に、
食べにいくじゃないですか。
それで、サンドイッチを食べた場合……。

サンドイッチが、
ふたつに切ってありますよ。
そしたら、
両方食べたいじゃないですか、女子は。
だから、半分ずつ食べて、
「とりかえっこしようよ。
 そしたら、両方、食べられるじゃん」
って言ったんです。

「あ、取りかえて、くれるんだ?」
「なんで?」
「……こっちに来てから、
 そういうことを、
 言われたことがなかったから」

それを聞いて、ほろっと。
野口 ……(笑)
糸井 ふたりの心理が、すごいよね。
映画の『真夜中のカウボーイ』みたい。
ジョン・ボイドとダスティン・ホフマンで。
野口 でも、優しい人が、
ほんと、いなかったんです。
はじめてはたらいてた
あの会社を思い出すと、
涙が出るんだけど、ほんとに。

「イナカモン、帰れよ、仙台に」
「何しに東京に来たんだよ」
みたいなトップだったの、男のひとたちが。
糸井 力のないヤツに限って、
だいたい、そういうことするでしょ?
野口 そう。
なまってる言葉を、まねされたりとか。
佐藤 会社の入り口近くに、黒板があるんです。
「今日の予定」とかを、
書くところなんだけど。
ミカちゃんは、アルバイトなので、
早く来ますよね。

そうすると、ミカちゃん、
何をやっているかと言うと、
その黒板に、
会社の人全員の似顔絵だとか、
わたしみたいな
フリーのコピーライターだとか、
いつも出入りしている人の
顔を描いてるの。

そっくりなんです。
お腹が痛くなるほどうまいのに、
CDが消しちゃうんですよ。
似すぎていて、イヤだったのかも。
CDハゲだったし。
野口 いやな描き方じゃなかったと思うのに。
下品な絵じゃ、ないんですよ。
佐藤 すごいかわいい、愛があったよね。
糸井 その素直さが、
ひねくれた人から見たら、
嫌なんだろうね。
野口 きっとそう。
糸井 そこのCDとかAD
(アートディレクター)は?
その時何歳ぐらいだったんだろう?
佐藤 わからないけど、
今思えば、意外と
若かったのかもしれないね。
野口 白い麻のスーツとかを着て、
営業に行っちゃうタイプで。
佐藤 40歳ぐらいだったんじゃない?
糸井 業界用語、混ぜたりする?
野口 カタカナを半分使うみたいな略語を。
糸井 今ならソリューションとか言いそうだな。
野口 (笑)そうー。
佐藤 兄弟でやってた会社なんですよ。
太ってるハゲの人がADで、
細いハゲの人がCDだった。
野口 ふたりとも、若ハゲなんです(笑)。
糸井 (笑)ツルピカ・ブラザーズ?
野口 (笑)ええ。
しかもそこに、また
営業担当の社長というのがいて、
3人で仕事をやってました。
糸井 3人、ハゲ?
佐藤 (笑)いえ。
社長はハゲじゃなくてチビ、です。
野口 これぐらい(そうとう小さい)の人。
10人しかいないのに、
3人の権力のある会社で。

わたしはいちばん下っ端だったんで、
みんなの手伝いを
しなきゃいけないですよね。
だから、3人それぞれの、
ほかのふたりに対する悪口まで聞かされて。

「すいません、社長からお電話です」
「今、出れねえって言ってんだろ!」
と言われますよね。
で、社長に
「出れないそうです」と伝えると、
「なんでつながないんだよ、オマエ!」
みたいな。
糸井 テレビドラマに出る
プロダクションみたいなもんね。
野口 まあ、
わたしのほうが悪いところも、
もちろんたくさんあって、
実は、わたしのほうが
8割ぐらい悪いんですけど(笑)。
佐藤 (笑)そう。悪い。
ミカちゃん、会社のお金で
サンドイッチ買って、
食べてましたもん。
糸井 あはははは。
佐藤 それ、もらいましたから。
糸井 リンダも、食うは食うんだ(笑)。
佐藤 (笑)一応。


(つづきます)

2001-09-21-FRI
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