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ほぼ日刊イトイ新聞

2023-02-06

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・全国での上映館もそれほど多くはないし、
 まだまだ映画館での上映以外で見られそうもないし、
 という条件なのですが、ぼくが昨日見てかなり興奮して、
 とにかく紹介しておきたいと思ったので、書きます。
 『イニシェリン島の精霊』というアイルランド映画です。

 『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督、
 ということで、ぼくは興味を持ったのですが、
 絶対に見ようと決めたのは、
 予告編を見てしまったことからでした。
 これはアイルランドの小さな島の話です。
 主人公が、長年の親友の男に、突然
 「お前を嫌いになった、もう話しかけないでくれ」
 と絶縁を告げられるのです。
 これ以上、ストーリーについては語らないことにします。
 男と女の間で、「嫌いになった」という話はよくあります。
 でも、男が男の友人から突然絶交を申し渡されるって、
 そういえばあんまり聞いたことがない。
 理由も言ってくれないのですから、主人公だけでなく、
 観客もそれを知りたくてたまらなくなります。
 その気持のまま、脚本家であり監督の引いていく線の上を、
 ぼくらはたどっていくだけです「なんでなんだよ」と。
 景色も登場人物たちも時間の流れも、
 セリフからもれてくる事実も、気になることだらけです。
 いつでも強烈なリアリティを感じるのですが、
 これは1923年という設定で、「時代劇」でありますし、
 映画のジャンルでは「コメディ」なんですよね。
 人物にもストーリーにも「まさか」が含まれています。
 でも、ずっとはらはらするくらい切実なのです。
 「イニシェリン島」という鍋だけでつくる料理ですが、
 時間が経っていくと、どんどん煮込まれていって、
 よく出汁の効いた不思議なおいしさになっていきます。
 たのしくもないし爽快でもないのですが、
 ぼくは「この映画をつくった人たち」に驚かされたし、
 お礼を言いたくなりました、すごいです。
 テーマとか何を言おうとしているかとか、
 正解を考えようとするよりも、監督に手を引かれて、
 そのまま時間の流れをたどっていくのが一番だと思います。
 考えたりしゃべったりするのは、後でいくらでもできます。
 ついでに、ロバ好きの人にもたまらない映画です。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
映画賞とかも取っているし、そのうち大きな話題になるか?


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