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ほぼ日刊イトイ新聞

2025-01-24

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・ま、ま、よく来たね。
 お燗がいいかい冷やがいいかい、とは言うものの、
 酒はいまちょうど切らしていてね。
 しょうがないから、せめて茶でもと思うんだけど、
 それがあいにくなことに出がらししかなくてね。
 いやなに、三日ばかりお湯を入れては飲んでたんだけど、
 さすがに白湯よりも薄くなっちまったようで、
 もうしわけないが色もついてないんで、やめとくよ。
 じぶんで持ってきた水でものんでておくれ、すまないね。

 お、そうかい、笑いの話をしたいってかい。
 ああ、そうだね、笑いとか冗談というものは、
 世間のだれもが思っていることを、
 ちょっとばかし破ってるんで、だから妙な感じになる。
 そこの妙な感じがおもしろいんだね。
 そうさね、そういう世間の決まりごとを破るってのは、
 なんだそのカタカナでいう「いのべーしょん」とかね、
 「ぶれいくするー」だとか、そういうことも同じこった。
 もっと言えばね「げいじゅつ」だってそういうものだ。
 いい意味で世の中の決まりごとに頓着しないんだからね。
 それはそうなんだけど、これがね、
 いい風に取ればいいことになるんだけどね。
 世間の決まりごとを壊すだの破るだのってことは、
 そうそう、ひょっとするとそれは「はんざい」になる。
 え、そんなおおげさなって? 
 おおげさじゃぁないんだ、そういうものなんだ。
 ミラン・クンデラという物書きのね
 『冗談』という小説が、そういった話でね。
 なんだったか、彼女に送ったハガキだったかに
 ちょいと書いた冗談が、お上に目をつけられてね。
 ずうっと追いかけ回されるという筋書きだったかな。
 もうほとんど忘れちまったけど、怖さはおぼえてるよ。
 「冗談」というのは、怖いものにもつながってるんだね。
 「冗談」の隣り合わせに「悪ふざけ」というものがあって、
 「悪ふざけ」の隣りには「犯罪」があるというわけさ。
 最初に冗談言ったり悪ふざけしている者には、
 そんなつもりはなくっても、これはいったん
 一線を踏み越えちまったら後戻りはできなくなるんだよ。
 「笑い」というものが、得も言われぬ魅力があるのも、
 そういう怖さが隣り合わせにあるからだろうねぇ。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
書き始めたけど、オチを考える前に、終わってしまったね。


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