糸井重里
・ぼくは、この同じ話を何度も何度もしている。
それは、夢中になって釣りをしていた時代のことだ。
河口湖でローカルなバス釣りの大会があった。
定期的に、年に数回行われる競技大会で、
いつも150人くらいが参加していたかなぁ。
ぼくはいい年をしたオヤジとして、早朝6時くらいから、
じぶんよりも釣りの先輩になる若い人たちや
学生さんたちと受付の列に並んでスタートを待つ。
大会の終了時間が午後1時だったか、忘れてしまったけど、
釣ってきた魚を順番に計量して、順位を争うわけだ。
新参者のぼくは、年上の社会人だけれどヘタなほうだった。
たいてい80位とかそのあたりの「参加賞」グループだ。
ところが、ある日、ちょっとは釣れたなぁという気がして、
計量してもらって結果が出たら「8位」になっていた。
このだらだらと書いた文章、ほんとは
「8位」の二文字だけで成立するくらいのものなのだ。
ふだんから、スポーツ観戦やらで優勝争いばかり見ていて、
2位で負けたと悲しんだり5位で残念がったりしていた、
そんなじぶんが優勝でも5位でもなく「8位」になったら、
ほんとにうれしくて涙が出てきてしまったのだった。
「8位」はすげぇんだよ、と、わかったのだ。
じぶんが選手じゃなくて、優勝争いを眺めているときには、
「8位」のことなんて考えることもできない。
しかし、じぶんが当事者になったら、
「8位」になることがどれくらいうれしいかがわかる
(むろん「8位」の悔しさもわかるのだろうけど)。
富士山を眺めるのにも、てっぺんを見るのがふつうだ。
しかし、その広々とした裾野を含めて富士山はある。
調べたらバスで行ける五合目でも標高約2,300mだって。
歩いて頂上まで登るとしたら、五合目でもえらいものだ。
「当事者じゃないから発想できることもある、
とわかったうえで、当事者のことを想像できるようになる」
ぼくらは、そういう練習をやっているのかもしれない。
でも、まだ、ほんとはぜんぜんわかっちゃいないんだよな。
◆今日の質問no.057「賞とかもらったことありますか?」
どうだろう?考えて、よければメールで送ってください。
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