糸井重里
・子どもも泳いでいるような水深のないプールで泳ぐのと、
ここは水深10メートルですという海で泳ぐのとでは、
泳いでいるときの覚悟がちがわないですか?
でも、マリアナ海溝(水深10,924m)で平泳ぎするのと、
水深1メートルのプールでクロールするのと、
ほんとは同じことなんだよね。
海底までどれくらいの深さがあろうがなかろうが、
どうせ、海表面のあたりに浮かんで泳いでるのだからね。
でも、「おまえのいる海の底は1万メートル下だぞ」とか
脅かされたらやっぱり怖くない?
この深さについての怖れって、
なんだか人間と人間の関係にも似てるかもと思ったですよ。
ま、大統領だとか、陛下だとか、大富豪だとか、
大スターだとか、大博士だとかに出会ったときって、
なにかふだんよく会ってる近所の人とちがうような、
「オーラがある」だとか「巨大な人」だとか、
ちょっとその「怖れめいた感じ」を言いますよね。
これが、海の深さと同じじゃないかと思うんですよ。
ボブ・ディランでも、アインシュタインでも、
そこにいるのは人間の背丈の、人間じゃないですか。
こっちも、同じく人間じゃないですか。
どれほど海が深くとも、泳ぐのは同じであるように、
どんなに巨匠であろうが名のある方であろうが、
サイズとか見た目とかやることとかは変わらないですよね。
200円のドリンクを飲むのに、200円支払う。
椅子に腰掛けたり、少々歩いたり、みんな同じですよね。
海表面でしか泳がないなら、海底のことはどうでもいい。
日常のあれこれには、人間の立場や高さなんか関係ない。
そりゃぁ、人と人の間の敬意は必要ですよ、でも、
そのくらいの敬意は近所の子どもにだって必要ですよね。
いやぁ、マリアナ海溝で泳ぐことを想像してて、
思わぬ方向に話が転がったけど、ちょっとおもしろくない?
◆今日の質問no.082「いちばん安心できる場所は?」
どこですか?考えて、よかったらメールも送ってください。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
思えば、空を見上げても無限の遠さがそこにあるんだよね。
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