お気に入り記事の保存はアプリが便利!

ほぼ日刊イトイ新聞

2024-09-17

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・スポーツジムのトレーナーは、それぞれが
 じぶんでも選手だった経験を持っている。
 種目はもういろいろで、バスケットボールもいれば、
 陸上競技もいるし、ダンス出身の人もいる。
 そのなかで大学時代に野球をやってきたトレーナーが、
 なにげなくこんなことを言った。
「ぼく、野球やっていた期間に、
 練習も、練習試合も、公式戦も、ぜんぶ含めて、
 ホームランって3本打ってるんですよ。
 あらゆる打席をぜんぶ含めて3本なんです。
 大谷選手が、どれだけすごいかと思うんですよね」
 二塁手をやっていたという彼は、
 スポーツ選手としては大柄なほうじゃないけれど、
 とても優秀なコーチで、おそらく選手のときでも
 たくさん研究も練習もしてきたにちがいないと思う。
 その彼が、3本しか、3本だけ打ったホームランが、
 はるか遠くで活躍している大谷翔平選手のすごさを、
 つくづくわからせてくれているのだ。
 ホームランというものの実感を知っている人には、
 他人のホームランのことがよく伝わっているのだろう。
 ま、それは同じ野球でも、死球を受けたことのある人が、
 試合観戦をしていてデッドボールの場面を見たときに、
 「これは痛いぞ」と感じているのと同じようなことだ。

 こういうことは、あらゆる分野である。
 ぼくのように将棋のことをよく知らない人間には、
 将棋界のスターたちが、どれほどすごい勝負をしているか、
 実はまったくよくわかっていない。
 物理学の世界での大発見があったというニュースを読んで、
 それがどういうものなのか、わかっているのは
 いちばん近いところで研究をしてきた人たちであろう。
 一般人には、感心することもなかなかできにくいのである。

 ぼくは、いつも「感心したい」と思って生きている。
 ホームランの実感や、デッドボールの痛みは知らなくても、
 将棋の一手一手のことがわからなくても、
 物理の最新理論について理解が届かなくても、
 「どこかに感心できる要素が見つかる」と信じている。
 「ほぼ日の學校」をはじめ、ぼくの毎日やっていることは、
 すべて、「だれもが感心できる世界」の開拓かもしれない。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
「感心する」というのは、ぼくの好物であり趣味なのです。


ここ1週間のほぼ日を見る コンテンツ一覧を見る
ほぼ日の學校
吉本隆明の183講演
ドコノコ
ほぼ日アプリ
生活のたのしみ展
TOBICHI東京
TOBICHI京都