
- 古賀
- 僕は10年以上かかって、
今ようやく自分のやりたい企画が
できるような状態になったんですけど、
僕が今やりたいことと
「ほぼ日」がすごく重なる部分があって。
「ほぼ日」って、糸井さんが俺が俺がって
前にでてる場所ではないじゃないですか。
もちろん毎日「今日のダーリン」という
大きなコンテンツはあるんですけど。
それよりも、こんな面白い人がいるから
対談して、TOBICHIで展示会してとか…

- 糸井
- 場所作り。
- 古賀
- 場所を作って、面白い人たちを紹介していく。
多分それって今「ほぼ日」の中で毎日のように
できてるんじゃないかなと思うんですよね。
その姿勢というのは矢沢さんの「成りあがり」を
作られてた頃から一貫してるのかな?と。 - 糸井
- 浅いところでは多分目立ちたがりやですよ、僕。
でも、それはどういう種類のものなんだろう?
なんてちょっと深く掘るだけで
急にどうでもよくなりますね。 - 古賀
- それは、それこそ30歳位の時に目立って
痛い目に遭ったりした経験があるからですか? - 糸井
- じゃないですね。
一番目立ちたかった時期って
高校生の時じゃないかな?
その時期っていうのは、
何をしてでも目立ちたいわけで、
その欲求を服装にしてみたり(笑)
やがてそれを残しながらも、
「目立ちたい欲求って、
たかがこんなもんか」っていうのが、
ものすごく見えた感じがする。

- 古賀
- あぁ、なるほど。
- 糸井
- だから僕みたいな加減で
そんなにガツガツ目立とうとしなくても、
1つの面白い世界はやれるんだな。
っていうのは、
古賀さんや他の若い世代の人等が
僕を見た時に、あぁあれいいなって
思う理由の一つですよね。 - 古賀
- はい。…あの、聞きたかったんですけど、
糸井さんの中にはヒットするとはこういうものだ、
という基準のようなものはあるんですか?

- 糸井
- 「ほぼ日」はすべてがコンテンツです、
と言い始めてからは、
もうヒット多様性になりましたね。 - 古賀
- ヒット多様性。
- 糸井
- 生物多様性みたいに。
これはせいぜい黒字程度でヒット、
あれは結構売れたけどヒットとは言い難い、
みたいな独自のルールを
いっぱい持つようになりましたね。
例えば事務所を引っ越したんですが、
普通引越しは金銭的に言ったらマイナスになりますよね。
でもこれヒットなんですよね。
何がヒットなのか説明もできるんです。
そういうような、
みんながすでに持ってる価値観じゃないところに
自分の価値観を増やしていくということを、
僕は「ほぼ日」以後するようになったんでしょうね。

- 古賀
- 糸井さんの中では一山当てたい、
みたいな気持ちはあるんですか? - 糸井
- 今のヒット論みたいに言えば、
いつも一山当てたいです。
楽になりたくて仕事してるわけだから。 - 古賀
- それ、おっしゃいますよね。
- 糸井
- 仕事は苦しくてしょうがないわけですよ、僕は。
- 古賀
- 「ほぼ日」を始められた頃に、
「働くことが流行ってる」というのを
書かれてたじゃないですか。
あの時期と今とは、
仕事に対する感覚って違うんですか。 - 糸井
- あの時期も、我慢してたんだと思います。
明らかに我慢してた。
釣りを一生懸命やる経験と、
働くことが流行ってるという経験が同じで。
釣りは、前の日に糸を巻いて、
友達の分まで釣りのセッティングして、
車を運転して迎えに行って、
さぁ行こうってやってるのって、
苦労ですよね。 - 古賀
- うん、そうですね。
- 糸井
- でも、それをやりたくて、
楽しくてやってるわけだから、いいんですよ。
それと同じで、「ほぼ日」っていう、
まだ名前もない頃から、
こういうことって面白いぞと思ってたんで。
釣りから帰って夜遅くからほぼ日の仕事することも、
釣りするのと同じくらい楽しかったんですよね。
その時の苦労はあるけど楽しい気持ちは、
ちょっと形を変えてますけど、実は似てますよね。
でもね、1つずつの仕事については、
ああ嫌だ嫌だ。

- 古賀
- あはは(笑)
まあそうですよね。
僕も本書くの嫌です(笑)

- 一同
- 爆笑
- 糸井
- 楽しくないですよね(笑)

- 古賀
- うん、楽しくないです、本当は(笑)。
辛いです。 - 糸井
- 辛いですよね。
- 古賀
- 辛いです、ほんとに辛いです。
ほんとに子供の頃にドラクエに
はまってた感覚と、あまり変わらなくて。
やっていく仕事の1個1個は
ほんとにめんどくさくて、
スライムと戦うような日々なんですけど、
でもそこ行かないと竜王に会えないしな、とか。
そういうような感覚が結構近いんですよね。

(つづきます)