
- 糸井
- ほんとのこというと、
そういうピシッとした演出なんかを
やるべきことなのかどうかもわからないんですよね。
昔はね、タバコの煙がモクモクの部屋でみんな仕事して、
お酒飲みながら働いてる上司がいるような、
そんな環境があったりしてね。
ああいう時代に生きてたっていうのが、
僕の中にはやっぱり尻尾がついてますから
今と比べる機会がものすごく多いんです。 - 古賀
- ははぁ。
- 糸井
- つまり、変なハンドルの切り方してみないと
真っ直ぐがみえない、みたいなとこがあってね。
今ってすぐにチェックし合うみたいな
雰囲気あるじゃないですか。
これ変じゃない?歯に青のりついてない?
みたいなさ。
でもいっそ青のりつけちゃった方が(笑)
人として健全な免疫を
作れるんじゃないかなと思うんですよ。 - 古賀
- あぁ、なるほど。

- 糸井
- さっき古賀さんがネット業界の方が
華やかに見えるんじゃないかって言ってたけど、
それは楽しいとしたら痙攣的な、
ピリピリするような楽しさなんじゃないですかね。 - 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- 今の時代って、
僕の若い時が月刊誌の尺度で動いてたとしたら、
週間さえ越えて時間単位で動いてますよね。
そんなところで、俺は裏の裏まで読んでるんだごっこを
ピリピリしながらやってるというのは、
何にも育たない気がする(笑)
やっぱり追い抜く方法を自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。

- 古賀
- そうですねぇ…うんうん。
だから、先日糸井さんが今日のダーリンで
「3年後の話」というのを書かれてたじゃないですか。 - 糸井
- あれビリビリくるでしょ?俺にきたの(笑)
- 古賀
- はい(笑)
僕は今の時代に時間軸をどういう風に設定できるか、
というのはすごく大事なことだと思うんです。
見えもしない10年20年後を語りたがる人って… - 糸井
- まずそれは嫌だね。
- 古賀
- でもそこで満足している人達というのは結構いて。
僕はどちらかというと、今日明日しかないんだ、
だって先のことなんてわからないじゃんって、
そういう立場だったんですよね。
でも糸井さんの「今日のダーリン」で、
今考えに考えたら3年先にこっちに向かってるとか、
あっちに向かってるだろう、
とかの大きなハンドルは切れるんだ、
っていう言葉はビリビリきました。 - 糸井
- 古賀さんの歳でもわかる人はいるかも知れない。
でも若かったりすると、
そんなに簡単にその考えになりたくない
と思ってたぶん抵抗するんですよね。
僕は今の歳でわかったわけですから(笑) - 古賀
- あぁ(笑)

- 糸井
- 例えばの話、大きな災害があった後とかは、
こういうこともあるんだから今日を充実させていこう!
これは立派な考え方だと思うんですよ。
今日にしっかり重心を置いてたら3年後はわからないから、
今をやり残すことなく1日中精一杯生きよう!
というのは説得力があるんです。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- たぶん僕も、
一旦は本当にそう思えたんじゃないかな。
で、それを繰り返していったら
「これはどうしましょう?」
って聞かれることが多くなって
「俺もわかんないけど…」
っていうのをずっと言ってきたけど、
3年前からしたら、
今日ぐらいのところはわかってたな、
っていうことを思うようになったんですよ。 - 古賀
- それは震災があって、
気仙沼に関わるようになったというのは関係してますか? - 糸井
- 震災の影響は大きいですねぇ…。
だって「君たちがこのままじゃダメだろう」
なんて言うんだったら
「じゃあお前はどうしてるの」
っていつも聞かれるわけだし。 - 古賀
- あぁ、そうですよねぇ。

(つづきます)