- 古賀
- 僕は三連休があったら、
やっぱりもう1日半ぐらいで
仕事のことを考えちゃうんですよね。
でもそれはワーカホリックなのかっていうと、
ちょっと違うんですよ。 - 糸井
- あえて言えば、
僕らは仕事嫌いなはずなのに、
こんなにいろいろ手出してさ。
しかも人から見たらよく頑張ってるな、
っていうぐらいはやってるって、
何なんでしょうね(笑)

- 古賀
- さっきのスライムの話だと、
ゲームはクリアしないと気持ち悪いじゃないですか。
そのクリアに向かって動いてる、
目の前に何か課題があったら
解かずにはいられない、
みたいな感じが近いのかな。 - 糸井
- 「解決して欲しい課題があるからやる」
っていう形はとってるけど、
でも課題がなくても、やりたいんじゃないかな。
僕が引退した時計職人だとして、
近所の中学生がさ、
「時計壊れちゃったんだ」って時、
「おじさんはね、昔時計職人だったんだよ。
貸してごらん」みたいな…
仕事ってそんなことのような気がする。
その代わり直った時「どうだ」って、
1回だけ言わしてみたいな(笑)

- 古賀
- ふふふ(笑)
そうですね、わかります。 - 糸井
- もうそれで十分だから。
「お礼に…」なんてことになったら、
「あ、それは要らない」みたいな(笑)
その1回どうだって言わせて感は、
年取ってもちょっと残るね。 - 古賀
- あぁ、そうですね。
特にライターだと担当の編集者がいるんで、
まずはその人をビックリさせたい
というのがあるんですよね。
全然期待してなかったはずの原稿に
120点で返した時の、どうだ!という、
なんかそういう喜びはありますね。

- 糸井
- 僕はこの頃はね、
主役自分じゃないんだけど、
自分が苗を植えたみたいな仕事、
増えてるんですね。 - 古賀
- そうなんですね。
- 糸井
- そうすると、自分の植えた苗で
実ったお米やら果物やらを食べて
喜ぶ人がいるっていう、
循環そのものを作るようになって、
仕事の面白さが飽きない面白さになったんですよ。
やっぱり喜んだ話が聞こえてくるというのが、
仕事の喜びとして大きいですよね。
古賀さんもこの間あったじゃない、それ。 - 古賀
- あぁ、はい。
僕の会社の子が。 - 糸井
- ヒットしたんだよね。
- 古賀
- そうですね、あれは気持ちいいですね。
自分のこと以上に全然、
会社の子が10万部いって、
それは嬉しかったですね。

- 糸井
- 嬉しいと思うんですよ。
人が喜んでくれることこそが
自分の嬉しいことです。
って言葉にすると綺麗事みたいで
すごく通じないんだけど…
例えばお母さんが子供に、
自分は食べないで、
子供にイチゴを食べさせるみたいな。
あれも全く同じ喜びですよね。
そしてそういう経験をすればするほど、
人の喜ぶことを考えつきやすくなりますよね。

- 古賀
- そうですね。
僕は自分で組織を作る前は、
もっと露骨な出世欲みたいなのがあったんですよね。 - 糸井
- 一人の方がね。
- 古賀
- ライターの中で一番になりたいとか。
- 糸井
- 僕がコピーライターやってる時にも、
それの浅いのはありました。
あいつがこのぐらいのところで出してくるんだったら、
おれはそれよりずっと飛んじゃいたいな、とか。
永ちゃんですよね。 - 古賀
- そうですね(笑)
あいつには負けたくないとか、
そういうチンケな欲はすごくあって。
じゃあ今それがあるかというと、
そこで競争して消耗するのは、
なんか勿体ないなという気持ちがあって。
それは結局、
狭い世界のその中しか見てないわけなので。
今は中じゃなくて外に目を向けた時の面白さを、
ようやく知りつつある感じですね。 - 糸井
- その意味でも、組織を作って良かったですね。
- 古賀
- それは本当にそうですね。

(つづきます)