もくじ
第1回無意識の天狗 2016-05-16-Mon
第2回業界のために!…ってほんと? 2016-05-16-Mon
第3回今日、3年後を考える 2016-05-16-Mon
第4回友達になりたい 2016-05-16-Mon
第5回個人の名前でできることを 2016-05-16-Mon
第6回仕事はつらいよ 2016-05-16-Mon
第7回1回だけ「どうだ」って言わせて 2016-05-16-Mon
第8回一緒に見上げるエベレスト 2016-05-16-Mon
第9回気休めの、鬼 2016-05-16-Mon

大阪で生まれ育ち、京都で大学生活を送り、2011年に上京。
2015年10月の初取材をきっかけに目が覚める。
取材した記事を公開前夜に読み返す時間が好きです。

組織を作るとショートケーキのいちごをあげることが嬉しくなるよね。

「嫌われる勇気」がミリオンセラーを突破し、
続編「幸せになる勇気」も話題となっている
ライターの古賀史健さん。実は、
「ほぼ日創刊以来の熱心な読者」なんだそう。

日頃からツイッター上でよく交流されてる
古賀さんと糸井さんですが、
対談するのは今回が初めてでした。
しかし「ほぼ日」をよく知る
古賀さんの合いの手もあり、
対談の話題は多岐に渡りました。

そして二人には経歴の共通点がありました。
それは、組織で働いた後フリーランスとなり、
更に自ら組織を作って今に至る、というもの。
途中「仕事ってほんとに辛いよね」と
共感し合った場面もありましたが、
仕事の喜びについては更に大きな共感がありました。

それは一体どういうものだったのでしょうか?
きっと「あぁその感覚知ってる!」
と思う方も多いのではと思います。
どうぞじっくりお楽しみください。

プロフィール
古賀史健(こが・ふみたけ)さんのプロフィール
糸井重里(いとい・しげさと)さんのプロフィール

第1回 無意識の天狗

糸井
古賀さんの、売れてますねぇ。
古賀
ははは、ありがとうございます(笑)
糸井
100万部って「えぇ〜!?」っていう
嬉しさがある数字だと思うんですけど、
漠とした実感としてどうですか?

古賀
そうですねぇ…。
ずっと裏方の仕事という意識で
ライターをしてきたんですけど、
昔から、本が100万部売れたら
さすがに僕も天狗になるだろうと思ってたんですよ。
糸井
100万部、その数字ですよね。
古賀
はい。
その時は天狗になって、世の中に対して
「俺の話を聞け」みたいなことをしたくなるのかな、
って思ってたんですけど、
ほんとにその欲求がないんですよね。
 
僕は基本的に「この人の話を聞いてください」なんですよ。
糸井
それは古賀さんを見ていてまっすぐ伝わってきます。
古賀
ほんとですか。

糸井
古賀さんは例えば、
美味しいりんごを作ってる農家さんが
「りんごが売れないから作るのやめようと思うんだよね」
ってときに「僕が売るのでりんご作ってください!」って、
そういう仕事をしてますよね。
古賀
あぁ、そうですね。
「こんなに面白い人がいる、みんな聞いてください!」
でずっとやってきてます。なので常に、
僕が次にマイクを渡す人を探し回ってる状態ですね。
 
糸井さんも吉本隆明さんや矢沢永吉さんといった方々の
出版のお手伝いをされてきたと思うんですけど、
それもやっぱり自分が前に出るよりも、
「この人の言葉を聞いてください」なんですか?
糸井
僕は「とっても驚いたよ」とか
「とってもいいなと思ったよ」とかの
間接話法で僕の本になるんですよね。
「その人が考えてることを、僕はとても好きなんです」
ということは、
そこに自分のメッセージが入り込みますよね。
古賀
うんうん、そうですね。
糸井
だから自分を前に出す必要は全くなくて。
古賀
なるほど。

糸井
でもね、僕の場合は30歳くらいのタイミングで
なったんですよね…天狗に。
古賀
へぇぇ。
糸井
自分ではなんなかったつもりでいたのに、
無意識のうちになってるんですよ。
 
それは例えば、過剰に攻撃されたり、
無視されたりするというのが聞こえてくるので、
それに対して矛と盾で言うと、
盾のつもりで肩を張るんですね。
 
「俺はそんなところにいないよ、
 そんなチンケな人間じゃない」
みたいなことは言いたくなって、
お座敷があって座布団があると座る、
っていうようなことをするんですよね。
古賀
はい、はい。
糸井
他にもつい気持ちよくてやっちゃうのが、
わかりやすい例で言うと、
「女子大で講演してもらえませんか?」
という依頼があったとして、本来は
女子大で言うことなんかあるはずないじゃないですか。
古賀
はい、思います(笑)
糸井
でも「ぜひ来てください!」
なんて言われたら悪い気はしないので、
「そう?じゃあいこうか?」なんて言って
気持ち良く引き受けたとしても、
楽しいのは控え室までで。
古賀
ははは(笑)

糸井
いざしてみたら、そんなに僕の話を
聞く気のある人がいるとも思えないし、
これはやってはいけないことをやったかなという感じで。
 
あとはテレビの仕事の影響ですね。
テレビは帯でやってたので、
その道具立てがあって色んな人に会えたことは
もうほんとにはっきりと良かったことですけど、
同時に過剰なそしりや余計な拍手を
うけることにもなりました。
古賀
拍手も余計ですか。
糸井
余計ですよね。だってそんなじゃないですよ。
でも当時は「天才だね」とか「言葉の魔術師ですね」とか
言われたりしたときに、特に否定しないんですよね(笑)
古賀
ふふふ(笑)
糸井
黙ってることによって認めるような…
それは仕事の営業上のことも
無意識にあったのかもしれないけど、
今振り返ってもその辺はわかんないですね。
古賀
そうなんですね。
糸井
でもだんだんと、自分が何をやってきたかとか、
何を考えてたかって自分でわかるようになりますから。
 
すると、あぁ原寸大がいいなって思うようになりましたね。

(つづきます)

第2回 業界のために!…ってほんと?