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ほぼ日刊イトイ新聞

2024-04-27

糸井重里が毎日書くエッセイのようなもの今日のダーリン

・洋服姿で一万円札の肖像にもなっている渋沢栄一といえば、
 日本初の銀行を設立したことをはじめ、
 数多くの事業を起こした人として知られている。
 たまたま、ぼくはいまさら「論語」に興味をもったために、
 『論語と算盤』の著者である渋沢栄一のことを、
 いままでよりちょっと余計に知ることになった。
 渋沢栄一と明治時代の歴史上の人物たちとの交流は、
 当然、想像できることなので意外なところはない。
 しかし、新選組の近藤勇(1834〜1868年)について、
 「私は近藤勇と二度面会したが」というのだ。
 「会ってみると意外に穏当な人物で、
 少しも暴虎馮河のおもむきはなく、
 事理のよくわかる人であった」という印象も記している。
 『論語」の読み方』三笠書房より)
 ふたつの大河ドラマが重なるような時空である。
 だが、考えてみたら、なんの不思議もない。
 渋沢栄一と、近藤勇は「同時代」を生きていたのだ。
 それぞれの運命の糸が、重なったり切れたりしただけで、
 同じ時代に生きていたのだから、会うことも不思議はない。

 「同時代」を生きるということは、すごいことだ。
 あなたが生きてるこの同じ時代に、
 たとえば大谷翔平が生きていてアメリカで活躍している。
 たとえば、藤井聡太が将棋をさしている。
 彼がどんなおやつを食べたかもニュースになっている。
 先日まで同時代に生きていた人たちが、
 この時代に亡くなった人として記録されていく。
 和田誠さんのことだとか、坂本龍一のことだとかも、
 知っている人として感じているのは、同時代にいたからだ。
 この時代にたくさん読まれた本は、ぼくらの同時代の本だ。
 50年後、100年後に、もし生きていたとしたら、
 「大谷翔平って、見たことあるの?」なんて、
 その時代の人から質問をされるかもしれない。
 50年後のヒーローと比較されたりもするのだろう。
 総理大臣が撃たれて亡くなった事件も、
 コロナウイルスの世界的な流行についても、 
 ぼくらの同時代の出来事として心に刻まれている。
 いま、この同時代に見聞きしている人や出来事は、
 前の時代の人も、後の時代の人も、
 「知識としてのみ知れること」ばかりなのである。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
出身地が同じというくらい、時代が同じって関係が濃いね。


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