REPORT

ハワイ 工藤まやさん
スノーケルの日々、
あらためて考える環境のこと、
愛犬を見送ったこと。

コロナ禍のなか、伊藤まさこさんが、
世界各国の9つの街に住む友人たちと
オンラインで話をしたのは、
ちょうど1年前のことでした。
「1年後にはきっと会えるね」
‥‥なんて、そのときは思っていたのに、
いまも、わたしたちの暮らしは、ままならないまま。
ひさしぶりにみなさんに連絡をとり、
それぞれの様子を綴っていただくことにしました。
遠い町のようすを、たっぷり、連載でおとどけします。

(前回のオンライン対談は、こちらからごらんくださいね。)

登場するみなさま

(登場順)
ストックホルム‥‥明知直子さん
ロンドン‥‥イセキアヤコさん
ホーチミン‥‥田中博子さん
パリ‥‥鈴木ひろこさん
ハワイ‥‥工藤まやさん
ミラノ‥‥小林もりみさん
メルボルン‥‥田中博子さん
ニューヨーク‥‥仁平綾さん
ヘルシンキ‥‥森下圭子さん


工藤まやさんのプロフィール

くどう・まや
TV、CM、雑誌、イベントなどで活躍する
メディアコーディネーター。
虹がかかることで知られるマノアバレーに住む。
連載などの執筆も行い、
近著に『ハワイ暮らしのお気に入り:
オアフ島ライフスタイルガイド My Daily Hawaii』

がある。
CREAのウェブサイトで
「工藤まやのおもてなしハワイ」を連載中。
ハワイの日々はインスタグラムからどうぞ。

■Instagram


私は今、マーメイドとなっている。

ハワイのロックダウンから1年が経つ中、
毎朝暗いうちにマノアの家を出て
オアフ島のあらゆるビーチへ行き
スノーケルをする日々。
天気予報を見て、
波の高さ、風の強さ、潮の満ち引きをチェックし、
海のコンディションと相談しながら
海中に身を委ねる。

そこには野生のイルカが100頭と群れをなして泳ぐ姿、
ぷかぷかと気持ちよさそうにワイキキビーチをただよう亀、
人間をどこか達観した様子で見つめるあざらしなどがいて、
肩を張らない生き様なのに
圧倒的な存在感を放ってくるのだ。
夜行性のイルカが漁を終えて
湾にまどろみにくる朝の時間に、
元気いっぱいでジャンプを繰り返す
目立ちたがりやの子イルカがいたり、
寄せては返す高波にのまれそうになる
おっちょこちょいの亀、
ちょっとおでぶのアザラシには哀愁と親近感を感じ、
人と会えないコロナ禍に
出会いという喜びを与えられたのは
自然界からの贈り物かしら、と思っている。

▲ハワイアン・スピナーズ・ドルフィンこと、
ハワイ固有のハシナガイルカ。
数頭から数百頭までその時々ですが、
ハワイのビーチ近くまできてくれます。
好奇心いっぱいでかわいい。

▲ハワイではホヌと呼ばれ守り神と言われています。
これはノースショアで撮ったもの。

▲ワイキキにも亀はたくさん。
朝日を浴びるダイヤモンドヘッドと亀のショット。

▲ハワイアンモンクシールです。
ハワイ諸島にぜんぶで1300頭ほど、
人が住んでいる本島には
そのうちの300頭が棲んでいます。
この愛嬌ある見かけからは想像もつきませんが、
絶滅危惧種。

11月から4月の間は
アラスカからザトウクジラが
出産と育児のためにやってくる。
泳ぐのにも慣れてきた頃で、
少し潜ると鯨たちのさえずりが聞こえる。
物悲しいような、でもそれでいて力強い
「ほぉ~」と響き合う歌声。
泳ぎながら見る水平線上で
どっしりと黒いザトウクジラが見せる
ブリーチや潮吹きには感動したなあ。
今でも時折あの「ほぉ~」が聞こえると、
私みたいにぐずぐずしているのか、
ハワイが気持ち良くて
アラスカに帰るのを先延ばしにしているのがいるんだなあと
クスッとしてしまう。

観光客が来れない間にハワイの海は驚くほど美しくなった。
ワイキキビーチは澄み、
コロナ感染拡大を受け数ヶ月閉鎖していたハナウマ湾は
透明度が64%もあがり、
入場人数を制限して昨年12月に再オープンした。

▲アウトリガー・ワイキキ・ビーチ・リゾートのラナイから撮影した
9月のワイキキビーチの様子。
人がほとんどいないけれど海はきれいで、
地元の人がサーフィン。

▲人が少し戻ってきた2月のカイマナビーチの様子。
綺麗な海のグラデーション。
新しくオープンしたカイマナビーチホテルから撮影。

久しぶりに行く人の少ないハナウマは、
湾に囲まれた楽園のようなビーチをもち、
大きな魚たちが湾内に戻ってきた。

▲1日に入場できる人数が720人まで。
のんびりな雰囲気となったハナウマ。

人間が使用する日焼け止めが珊瑚に与える影響、
有害物質を海中に持ち込まないことだけで
こんなにも変わる。
自然は美しくあるためにとても強い。
改めて私たちができることを感じて、
珊瑚にも環境にも優しい日焼け止めを開発した友人と
「Lani & Kai」をより多くの人たちに使ってもらえるよう
呼びかけている。
勝手にアンバサダーです(笑)。

▲Lani & Kaiは、ハワイ発のリーフセーフ、
チャイルドセーフの日焼け止め。
これのおかげで安心して海で泳げます。

海にばかりいたから、この日焼け止めを持って
友人知人が経営するお店に行くため
久しぶりに陸にあがったら、
街には人がたくさんいた。

▲本土からの観光客で賑わう。

アメリカではワクチン摂取が進み、
アメリカ本土からの観光客は
PCR検査を受けてでも旅をしたい、
ハワイへ来たいという人たちが多くいて、
春休みの時期には1日3万人ものアメリカ人がやってきた。
ハワイの人たちはマスク着用、ソーシャルディスタンスを
日常のこととして受け入れ遂行しているから、
観光客のほとんどもそれにならってくれている。
ありがたいなあと思う。
楽しそうにワイキキを歩く家族を見て、
「来てくれてありがとう」
と口にこそ出さずにいるが、心で思う。

▲ソーシャルディスタンスを守って
ビーチラウンジしています。

コロナになって、まだ私の仕事は戻らないから、
生活の速度は落ちたけれど、
海の世界を知り、見える世界の幅が広がった。
ゆっくりと暮らす間、
18歳の愛犬ベルとも多くの時間を過ごすことができ、
私の誕生日に、自宅にて、
腕の中で安らかに見送ることもできた。

▲ベルと最後の日に撮った写真です。

▲その日、マノアの谷にかかった夕方の虹。

生と死を強く感じた1年だからこそ、
今、人生は豊かだなあと思える。
コロナでちょっと太めのマーメイドになったのが
玉に瑕なんだけど。

2021-04-30-FRI