前回、大久保佳代子さんに登場いただいたのは
2019年の対談「女子たるもの。」でした。
かねがね「また、大久保さんとおしゃべりしたいなあ」
と考えていた伊藤まさこさん、ちょうど大久保さんの新刊
『パジャマあるよと言われても』を読んで、
ますますその気持ちが強くなったそう。
6年ぶりに会うにあたり、テーマはずばり「加齢」。
この6年の変化を語りつつ、
それぞれ最近お気に入りのセルフケア・アイテムを
持ち寄っての対談となりました。
ふたりのおしゃべり、あまりに楽しかったものですから、
ほぼノーカットでお届けします。
なお、このテキストは、「weeksdays」の編集版。
生のトークは「ほぼ日の學校」で
音声中心に配信予定です。そちらもお楽しみに!

写真=有賀 傑
スタイリング(大久保佳代子)=野田奈菜子
ヘアメイク(大久保佳代子)=春山輝江
ヘアメイク(伊藤まさこ)=廣瀬 瑠美

大久保佳代子さんのプロフィール

大久保佳代子 おおくぼ・かよこ

1971年5月12日、愛知県生まれ。
タレント、プロダクション人力舎所属。
小・中・高の同級生だった光浦靖子さんと
お笑いサークルでコンビ「オアシズ」を結成。
OLとお笑いの二足のわらじ時代に
『めちゃ2イケてるッ!』で注目をあび、
2010年からはお笑い専業に。
いま、テレビでは見かけない日がないほどの人気に。
文筆業も長く続けており、著書に
『不細工な友情』(光浦靖子さんと共著、幻冬舎文庫)、
『美女のたしなみ』(徳間文庫)、
『まるごとバナナが、食べきれない』
(集英社学芸単行本)、
最新刊に『パジャマあるよと言われても』
(マガジンハウス)などがある。

「weeksdays」では2019年に対談
女子たるもの。」に登場。

●X

05
無言の圧力

伊藤
毎日どれぐらいの時間に寝てるんですか。
大久保
疲れちゃうから、もう11時前後。
伊藤
疲れますよね。なんでこんな疲れるんだろう。
大久保
すっごい疲れます。
伊藤
疲れるなって感じだしたの、何歳ぐらいからですか。
大久保
私、ここ数年。
伊藤
やっぱり!
大久保
コロナ明けぐらいからの方が疲れてる。
仕事の現場が落ち着いて、
昔の働き方じゃなくなり、
長時間拘束されるみたいなことが
なくなってるのもたしかなんですけど、
午前中から仕事して、
昔、たとえば2本(収録が)できた、
なんなら3本やってたのが、
いまは2本目にちょっと集中力が切れる。
女性10人ぐらいの番組に出たりするんですけど、
その中で頑張って喋ろう、みたいなのは、
ほんとにもう1本で疲れちゃって、
2本目はちょっと静かになっちゃう。
伊藤
そうですよね。
トークのできるかたって、
普通の人の5人分をひとりで喋ると言うから。
大久保
そうなんですよ、もう。
伊藤
それが10人ぐらいいるんですよね。
それぐらいパワフルな人が。
大久保
個性の塊のパワー録りで、
今日前に出て売れてやろうみたいな人が入ってると、
もう大変で。
伊藤
なんか「もらっちゃい」そうですね。
大久保
「もらっちゃう」ってありますね。人の影響ね。
昔はたぶん自分がそこまで食らわなかったけど、
やっぱりちょっと、なんでしょう、
すごくパワフルな人とか、
すっごい元気だったりする人がいると、
ちょっと疲れてきちゃうっていうのは、昔よりあるかも。
伊藤
そうかぁ。
でも、私の希望として、
更年期を過ぎた人って“ぶり返し”ませんか。
元気になってません? 
大久保
どうだろう。
私、今更年期真っ只中な気がするから、
もうちょっとなのかな。
伊藤
あ、炭酸、お注ぎしますよ。
大久保
このぐらいかしら。
大久保
あー、おいしい。おいしーい!
伊藤
ほぼ日で「生活のたのしみ展」っていう
イベントがあって、モノを売るお店が
ワーッと並ぶんですけど、
前だったらけっこうずっと立っていられたのに、
最近は1時間お店でお客様の相手をすると、
2時間ぐらい横にならないと回復できない。
大久保
回復しないですよね。
寂しがり屋‥‥そんなかわいい言葉、あれですけど、
ひとりがしんどいなとも思ったり、
人も好きなとこは好きですけど。
1日、人といたら、
ほんとにひとりの時間がないと、回復できない。
伊藤
あ、ひとりの時間!
大久保
絶対に必要ですね、
昔は休みがあったら、誰か誘ったり、
夜は飲もうかなと思ったけど、
今はもうひとりでいいよって。
その方が回復するということがわかりましたんで。
ほんとは会いたいな、
ちょっと行っちゃおうかなって衝動にかられるんですけど、
いや、これ、行ったらまたいつもと同じで、
疲れて、翌日また仕事スタートしたときに
スッキリしてないぞ、
だったら今日我慢してひとりでいよう、とか。
伊藤
そうか。それはでもこの本でいうと、
年代ごとにけっこういとうあさこさんとか、
島崎和歌子さんとか。
大久保
いやあ、疲れる。
もう今の「二大疲れます」です。
二人とも声がでかい。ほんとに。
ありがたいことに、私が年取ったように、
ふたりをはじめとする友だちも年を取ってるんで、
同じように疲れ出してます。
和歌子さんも2回「もう帰ります」って言ったら、
「わかったぁ」って言うようになったんで。
伊藤
なるほど、なるほど。
同世代のお友だちって大切ですよね。
大久保
大切ですね。
話が早い。ほんとに。
伊藤
親の話とか、
自分の健康の話とか。
大久保
そうですね。
やっぱり、20代の子にそんな話、ねえ。
伊藤
「疲れるんだよ~」とか言っても、
「そんなの知らねえよ」っていう話ですもんね。
大久保
「親がさぁ」とか言っても、
親が私の年ぐらいですからね、ピンとこないから。
伊藤
実際自分が若いときも、
そういう話を振られると、ちょっとわかんないし、
みたいな気持ちではいた。
大久保
たしかにね。
あれ、そうするとほんとに
若い子と何を喋ったらいいか、むずかしくないですか。
伊藤
若干緊張しちゃいません?
大久保
そうですね。今「何ハラ」みたいなのがあるし、
それは個人情報だ、みたいになっちゃうと、
訊けないことがいっぱいありますから。
あれかな、
「最近どのアーティストが流行ってるの?」とか、
教えを乞うというスタンスがまだ。
伊藤
なるほど。私はつい「肌キレイだねー」とか
「何使ってるの」って言うんだけど、
同じもの使ったってそんなになるわけないのにね。
だから「かわいいね」とか言っちゃうかも。
大久保
あれ、どうなんですかね~。
伊藤
気持ち悪いですかね。
気持ち悪いですよね。
大久保
年上のババアが。
伊藤
そうですよね。でも言っちゃうの。
大久保
私もすぐ「かわいい」って、女の子にも言うし、
男の子にも言っちゃうんですよ。
「かわいい顔してるね」とかさ。
気持ち悪いかもしれないですね。
伊藤
うーん。注意しましょ!
大久保
でも注意し出すと‥‥。
伊藤
注意したら、注意だらけなんですよ、今の世の中。
大久保
そう。無言ですよ。
そうしたら無言の圧力って言われて。
伊藤
あ、そうか。なんにも言わないと。
大久保
無言は怖い。
何考えてるかわかんないおばさんになりますよ。
伊藤
あ、そうか。
じゃ、言わなくて、
口角上げてるっていうのはどうかな。
こうして‥‥(無表情で口角を上げる)。
大久保
怖い! 絶対怖いです! 
何も言わないで、かたまった口角上げ。
伊藤
そうですよね。そうか。
なんかほんとにどうしたらいいんだろうって気持ち。
大久保
まあだからと言って、何を毎日実践して、
「こっちから声をかけよう、一言必ず」
とも思ってもないし、
交わらないところは交わらないんだろうな。
でも、まあ嫌な感じにならなければいいな、
ぐらいを目標にしときます。
伊藤
そうしましょう。じゃあ、無言で、口角上げはなし。
大久保
それが一番手っ取り早いってみんな思ってますよね。
この業界の人ってやたらと口角上げてません? 
黙ってるとき。
感じ悪くならない方法の一つが
口角上げるってことなんだろうなと思う。
伊藤
たしかにそうです。
下がってるとやっぱり不機嫌そうに見えるから。
(つづきます)
2025-12-30-TUE