古典を学ぶ場「ほぼ日の学校」の学校長の河野通和は、
もともとは編集者、そして大の本好き。
あらゆるジャンルの本を読み尽くしてきました。
その、学校長がコツコツ口説いてきた本屋さん、
この場限りでオープンする本屋さんなど
「おもしろい本屋さん」8店舗が、
2月22日〜24日の3日間だけこの場にあつまります。
しかも、日替わりママの「バー・X」も開店。

このイベントの詳細と、
「おもしろい本屋さん」の1軒ずつを、
これまた本屋好きの作家の
浅生鴨さんとご紹介していきます。
紹介の順番は取材の順番です。

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no.3 往来堂書店

本と出会う場所を作り出す。

前回の「青山ブックセンター」に取材にお伺いした
同じ日に、浅生鴨さんと
今度は東京・千駄木へ向かいました。
「往来堂書店」さんです。
テキストは、学校チームのモギ、
写真はフジーでお送りしています。

往来堂さんに到着!往来堂さんに到着!

この入口!
実家の近所の本屋さんの入口みたいだ!
(ところで、カメラマン・フジーよ。
鴨さんが、右の隅にいすぎだ。
もうちょっと鴨さんを内側にもってきてくれ。)

入口にたたずみ、懐かしい気持ちになってきました。
「なかよし」とか「りぼん」とかの
発売日に駆け込んでいた、
近所の「かみや書店」を思い出して
遠い目になっていたら、
鴨さんは、さっさと店内に突撃をしていました。

お話をお伺いしたのは、
店長の笈入建志(おいりけんじ)さん。
ここでも、鴨さんは、
同人誌の納品をはじめました。
現在、鴨さんの同人誌「異人と同人」は、
取次さんに取り扱っていただくようになったということで
この日が最後の方の「直接納品」となりました。
(くわしいことは、鴨さんのサイトまでどうぞ。)

いかんいかん。
また寄り道をしています。本題へGO!

早速ですが、今回はご参加ありがとうございます!
笈入
こちらこそ。
先日、河野さんが直接こちらに来られて
イベントの説明をしてくださって。
せっかくのお声がけですから、ぜひと思いまして。

店主の笈入さん 店主の笈入さん

うれしいです。
お話をお伺いする前にちょっと時間があったので、
何気なく本棚を拝見していたら、
もう、ちょっと欲しいものがどんどんと見つかるので、
ちょっと目をそらしました。
そっちが気がかりでお話をお伺いするのが
散漫になりそうなので。
早速ですけれど、お店の外観は町の本屋さんですが、
このセレクトにびっくりしました。
いつも、どんなふうにお店の本棚は
作っておられるのでしょうか?
笈入
特にこれだという書店のポリシーがあるわけでは無いんです。
売れ行きを通した情報の積み上げで出来上がったものです。
この本だったら、
お店のある千駄木のエリアで5冊は売れるな、とか
この本だったら3冊だな、とか。
3冊〜5冊だったらお客さんの顔が思い浮かびます。
10冊を超えるとさすがに数だけで
お顔まではちょっと難しくなりますが、
そういう日々のお客さんとの関係があり、
そこから見積もって、実際に発注をしています。
とはいえですよ。
お客さんの顔が想像できる本を
膨大な本のなかから見つけ出すというのは、
どうなさっているんでしょうか。
年間の書籍の発行部数は7万部ともいわれていています。
笈入
数多くの書籍のなかから、
きちんとセレクトをしていくのは
難しいかといわれればそうでもないと思っています。
たとえば、小さな出版社さんですと、
一回発注をさせていただくと、
新刊がでるたびにきちんと
ご案内をいただくことになります。
それに、最近は大きな出版社の営業さんも、
力をいれている書籍を紹介しに
まめに本屋さんにも足を運んでくださる方も
いらっしゃいますしね。

これからの本屋さんについてなど、真剣に語り合う。ふむふむ これからの本屋さんについてなど、真剣に語り合う。ふむふむ

取次さんが、各出版社からの新刊をまとめて、
そこから書店さんが選んで本屋さんに並べるという
いま普通に行われている選書よりも
踏み込んだというか、昔にもどった感じですね。
笈入
そうかもしれません。
うちのお客さんのお買い物の傾向として、
高いものはちゃんと売れているけれど、
逆に安いものが売れなくなっている
ということもあるんです。
本の価格は、本当に欲しい本がある人には
関係がなくなっているのかな。
笈入
出版社の方が、10円、20円の価格を下げるために
すごい努力をされているのも聞いていますけれど‥‥。
本のセレクトは、書店の見識が問われることですから
結局は、これはいいぞ、と思ったものを
真面目に売っていくということなんでしょうね。
(しみじみと)そうですね。
そんなふうに選ばれた本だと思うと、
のちほどまた本棚を拝見するのがたのしみです。
そんななかから、PARCOにはどういう系の本を
持っていかれる予定でしょうか?
笈入
いろいろ考えたのですが、
なにか特定のジャンルだけを
PARCOに持っていくって考えても
難しいなあと思ったんですよ。
そうですね。
笈入
なので、
「読んだ人のおすすめの言葉が具体的にあるもの」を
もっていこうかなと考えました。
こちらのコーナーなんですが。

D坂文庫 D坂文庫

「往来堂書店のD坂文庫」ですか?
笈入
はい。日頃お世話になっている、
出版社の書店営業さん、編集者さん、
作家さんや書店主さんなどに、
最近読んで面白かった本を
紹介してもらっているんです。

うわ!
これ・・・・。
(しばらく見入る)
ああ、いかんいかん。
宣伝文句ではない、読んだ人の言葉があるんですね。
笈入
目的があって本を買いに来るときじゃない場合に、
本屋にいって「なにかおすすめないですか?」って
書店の店員さんに聞くのは
なかなかいいんじゃないかと思うんです。
それも、本屋さんの重要な役割でもありますよね。
この企画の場合は、
書店のおじさんである僕だけじゃなくて、
たくさんの方におすすめを
いただいているものなのですが。
いままで読んでなかったジャンルでも
おすすめされると読んでみようかと思いますしね。
あたらしい出会いを作り出す機会になりますね。
笈入
さらにこんなのもあります。
中にはいっているのは、「D坂」のどれかなんですが
本をそっくりカバーしちゃって
中身が見えなくしているものもあるんですよ。
本のおみくじみたいだ!
これだと、強制的に新しい本に出会えてしまう!

笈入
おみくじはちょっと考えました(笑)。
みなさん、お好きでしょう?
引いた本が何かで、考えますよね。
いま、この本を引いたということは・・。
って、こじつけをしたくなります。
笈入
さて、どうしましょうかね・・。
当日、どんなことになっているか
たのしみにしています。
僕、この「往来堂書店のD坂文庫」が
小冊子になっているもの、
買っていっていいですか?

D坂文庫の小冊子 D坂文庫の小冊子

笈入
どうぞどうぞ。

たくさんお話を聞き、お店を出る頃には日が暮れた。 たくさんお話を聞き、お店を出る頃には日が暮れた。

そして、わたしたちはまたそれぞれに
書籍をどっさりと買い込んで、
夕暮れの町を千駄木駅にむかって歩きました。

(つづく。次回は「光文社古典新訳文庫の編集部」さんへGO!)

2020-02-05-WED

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