- ——
-
樋口くんは、自分が嫌だと思うような
判断基準を持った人たちから離脱したら
もう未練がない人なんだ。
- 樋口
-
うん。面倒くさいじゃん。
その基準を捨てても死ぬわけじゃないんだから。
- ——
-
究極ね(笑)。
そういう人多いかな。男の子に。
- 樋口
-
男の方が、そういう基準みたいな、
人を分類するようなことをあんまり考えてないと思う。
よくさ、共学の女の子とかで、オタクみたいな子よりも
スポーツしてる子の方がいいって言うけど
男は結構分け隔てなく接してると思う。
俺がいたクラスとか高校がそうだったのかもしれないけど。
どっちが優れてるかとかは特になくて、
運動ができるやつ、ゲームが好きなやつ、
アニメが好きなやつは、同じフィールドにいた。
でも、それが共学の女の子は、個々に分類してて、
さらにランク付けしてるなって思う。
- ——
-
スクールカーストみたいな?
私はその言葉を大学で初めて知った。
- 樋口
-
うん。俺も知らなかった。
なんの意味があるのか全然わからないけど。
- ——
-
私もそっち側だったけど、
スクールカーストってものを知った瞬間に
私が感じてた窮屈さは、スクールカーストみたいな
ランクづけの中の出来事なのかなって思った。
- 樋口
- だからマウント取ってくるやつはめんどくせえっていう。
- ——
-
その樋口くんの面倒くさいっていう感情が
私の場合は、あーやだなって感情なんだろうね。
- 樋口
-
面倒くさいからいいやっていう。
バイバーイって、離脱(笑)。
- ——
-
いいね、それは。さっぱりしてるね。
いやだなって思っちゃうもん。
- 樋口
-
本当はその人と仲良くしたいなって思ってるんじゃない?
嫌なことからは逃げたくない?
嫌なことはしたくないから。
- ——
-
ううん。
嫌なことから逃げたら負けになるじゃん。
- 樋口
- 何と戦って、何に負けるの?(笑)
- ——
-
それ、前から樋口くんによく言われてたね。
私にとって、人生は戦いなんだよ(笑)。
だから、嫌いな人を嫌いって思って逃げると
それを許容できなかった自分がその人に負けたと思うわけ。
私はこの人と対等でありたいのに、
この人を受け入れられる器がないんだって思っちゃうから
嫌いにはなれない。
- 樋口
-
進んで同じフィールドに立ちたい人ってことか。
でも逆にいえば一切の多様性を認めないのと一緒じゃない?
相手を理解してあげたいっていうのは
一見いいことのように思うじゃん?
- ——
-
うん。
自分の考えは理解されなくてもいいけど、
相手の考えは理解したいなって思う。
- 樋口
-
それは結局自分の知的欲求を満たしたいだけのエゴで、
自己中心的な行為なんじゃない?
- ——
- うーーん。
- 樋口
-
なんの関係もない話をしちゃった(笑)。
けど、そう言うことだと思うんだよな。
- ——
- 今考えてるのにも同じことが言えるってことか。
- 樋口
-
うん。
今、世間を理解しようとしてるじゃん。
- ——
- うん。理解しようとしてる。
- 樋口
-
けど、それは見方を変えてみれば、
世間に自分という存在を押し付けているのかもしれない。
世間にって言うと主語がでかいかもしれないけど、
「自分と同じ考えじゃない人」に対して、
「自分」を押し付けてるだけかもしれないっていう。
なんで自分が思ったようにしてくれないんだろうって。
- ——
-
なんで世間は私を、
「女の子じゃない女の子」に分類してるんだろうって?
- 樋口
-
まあ、その答えは簡単だよね。
世間が思う女の子じゃないって、ただそれだけで。
- ——
-
えー(笑)。
なんかそんな論理で終わる話じゃないんだよね。
もっと感情的な話なのよ(笑)。
- 樋口
- じゃあ私は優遇されたい、で終わりじゃない(笑)。
- ——
-
ええ?優遇されたいわけじゃないよ。
優遇されないことに傷ついた自分がいるって
気づいたってだけ。
- 樋口
-
傷つくってことは、嫌な思いをしたってことじゃん?
嫌な思いをしたなら、
マイナスをプラスとまではいかなくても
ゼロにしたいってことでしょ。
じゃあやっぱ優遇されたいんじゃん?
- ——
-
うーん。
じゃあ、マイナスかけてみる?(笑)
- 樋口
-
俺はマイナスにマイナスをかけるとプラスになるのは
自分と似た境遇の人を見つけると嬉しくて盛り上がるのと
同じことだと思う。
- ——
-
あぁ、そうだね。
でも、それは今回したくなかったの。
だから似た境遇の人にインタビューしなかった。
キラキラな女の子にはインタビューできなかったけど、
少なくとも自分とは違う人にお願いした。
- 樋口
-
じゃあ、俺の見解は
私も世間の男にちやほやされたい!ってとこに
落ち着くな。
- ——
- いや、それは、はず、恥ずかしいわ(笑)。
- 樋口
-
ええ?(笑)
でも、できることならちやほやされたくない?
ちやほやされて悪いことってなくない?
- ——
- ない。
- 樋口
-
じゃあちやほやされた方がいいじゃん。
それが俺の見解。
- ——
- うーーーーーーん。

なんだか煮え切らないまま終わってしまいました。
樋口くんの言い方や考え方がはっきりしすぎていて、
びっくりした人もいたかもしれません。
でも、これが樋口くんというやつ、なのです。
本人もこの文字起こしを見て、
「我ながら口が悪すぎたな」と言ってました。
言ってることはまさに正論だと思います。
でも、それを認めたくない気持ちが
私にはあるのだと思います。
自分をずっとチクチクと苦しめてきたことが、
そんな簡単に解決していいはずがないという気持ちです。
きっと何かに少し傷つくたびに変わろうと思って、
でもやっぱり自分らしくいたいと思う自分もいて、
それでもまだ、女の子らしい女の子に憧れてしまう。
そんな自分がなんだかみじめで、
だからこそ、ちやほやされたい人と一緒にしないでよと
突っぱねてしまうのかもしれません。
ちなみに、この樋口くんという人は
私が以前片思いをしていた相手なのですが、
それはここだけの秘密です。
もう終わった気持ちなので、
インタビューに影響はないと思っていますが
いまいち踏み込んだことを聞けなかったのは
見栄や変な気遣いがあったからかもしれません。
でもそういう相手と「女の子」についてや
自分のコンプレックスについて話すのは
苦しいけどちょっと面白い体験でした。