「これ、お土産。」と、
いきなりカンガルージャーキーを片手に現れたのが
大学のサークルで一緒だった樋口くんです。
男子校出身の彼は、その歯に衣着せぬ発言で、
サークルの男の子の中でも異彩を放っていました。
屁理屈をこね続けて煙たがられることもあれば、
ハッとさせられるような時もあって、
とにかく面白い人だなと思っていました。
「男の子」に聞きに行くと言っても
私の周りにこんな話に付き合ってくれそうな人は
多くはありません。
ちょっと異質かもしれないけど
面白い話が聞けるかもしれないと期待を胸に、
私は樋口くんに会いに行きました。

- 樋口
- これは、どういう記事になるの?
- ——
- 「女の子」について考える記事かな。
- 樋口
-
へえ。
まあ、あなたは世間で浮いてますからね。
- ——
- え?何が?
- 樋口
- いえいえ。これ以上言及はしません(笑)。
- ——
-
えー(笑)。
でもまあ、今回聞きたいことは浮いてるってことに
通じるのかな。
- 樋口
- へえ。
- ——
-
もう、いきなり本題に入っちゃうけど、なんか、
私って自分で「女の子」じゃないなって思うことがあるの。
- 樋口
- うん。
- ——
-
だからそれはなんなんだろうなっていうのを
客観的に分析したくなったの。
- 樋口
-
自分がなぜ女の子じゃないと思うのかっていう、
主観的なことを客観的に?
- ——
- そう。
- 樋口
- 知らねーよって感じ(笑)。
- ——
-
(笑)
そういう難しそうな内容だから、
喋るのがうまそうで、客観的に分析してくれそうで、
記事に期待しないような人を探して、
樋口くんにしようって。
なので、よろしくお願いします(笑)。
- 樋口
- 頑張ります(笑)。
- ——
-
私が樋口くんで印象的だったのは、飲み会の時に
「俺は女の子が苦手なんだよ!」って言いながら
お酒を飲んでた姿なんだよね。
で、先輩が「トミカは女じゃないだろ」って言って。
そしたら「いや、生物学的に女だから苦手!」って(笑)。
- 樋口
- (笑)
- ——
-
うちのサークルの一部の男性には、
女っていうものに先入観があるのを感じてて。
女の子面倒くさいとか女の子嫌いとか思ってそうだから、
そもそも女の子をなんだと思ってるんだろうって。
- 樋口
-
同じだな。
戸籍上生物学的に女と分類されているっていうだけ。
- ——
- それじゃ面倒くさいってならなくない?
- 樋口
-
なんで女が面倒くさいかってことか。
うーん、確率の問題だな。
女だから面倒くさいんじゃなくて、
女に分類されている人間に
面倒を感じる確率が高いっていう。
- ——
- どこで面倒くさいって感じたの?
- 樋口
- たぶんね、共学の女の子が嫌いなんだと思うんだよね。
- ——
- でもさ、小学校までは女の子と一緒にいたわけでしょ?
- 樋口
-
うーん。
でも小学校だと、特に男女っていうのを
特別に意識するものはないじゃない。
で、中高男子校で、他校の文化祭行ったときとかかなあ。
中3くらいまで普通だったんだよ、俺は。
うわ、めんどくさ!ってなっちゃったんだよ。
- ——
-
わかんないねえ。
でも妹いるじゃん。
- 樋口
- 妹いる。
- ——
- 妹って、もう身近に女の子がいるわけじゃん。
- 樋口
-
うーん、だから私は女ですって思ってる女が、面倒くさい。
女の子に対して女の子扱いしてるって思ってる時点で
女の子って自覚してるってことでしょ?
それがもう、ね。
- ——
- へえ。
- 樋口
-
自分が女だとか男だとかもうどうでも良くない?っていう。
世間一般で女の子扱いは当たり前のことかもしれないけど。
例えばある人に対して嫌な行動をとってしまった時に
それが男だったら、男って理由で何か言われることは
ないじゃん。単純にその行為が嫌だったら嫌って言う。
けどそれが女だったらもう、大騒ぎでしょ(笑)。
- ——
- そういう人に共学の女の子が多いってこと?
- 樋口
- うん。それが、中2か中3の結論。
- ——
-
えー。
でも、文化祭でしか接点がないんでしょ。
- 樋口
-
まあ周りにいないからね。
でも文化祭でそのまま遊びに行ったりするじゃない。
で、そういう時に面倒だなってなっちゃった。
まあそれを面倒と思わない人が
世間一般の大多数なんだと思うけど。
意識せずに女の子扱いできてる人って多いんだろうな。
- ——
- それは男子校だから?自分がそういう人間だから?
- 樋口
-
俺がそういう人だから。
でも、男子校のいいところは、関わろうとしなければ
女性には関わらなくて済むわけじゃん。
生活するフィールドには基本的に男しかいないから。
だから高校3年間は何事もなかった。
でも大学に入ったときにさ、
残念ながら男子大学ってもう滅んだのよ。世の中的には。
- ——
- うん、みたことない。
- 樋口
-
確かね、ないはず。
で、大学に入ると女性の存在があるわけじゃない。
なるべく関わらないことはできるけど
完璧に関わらないのは無理。
だから、あ〜めんどくせえっていう(笑)。
- ——
-
そういう気持ちがあって、
あの飲み会で、女が苦手ですって言って、
先輩は私が女を意識しないでいられる人だよって言ったけど
樋口くんは、もともと20年間培ってきた
女めんどくせえ、嫌いっていうものを
「生物学上女だから苦手」って言葉で表したのね。
- 樋口
-
だからまあ、確率の問題だよ。
もう女って時点で面倒くさいかもしれないっていう。
そういうフィルターだよ。
これは俺の偏見だよ(笑)。
- ——
- まあド偏見だね。
- 樋口
-
だから多分サークルの3年間では共学女子みたいなのは
周りから徹底的に排除してきたと思う……。
- ——
- なんでそんなに……?
- 樋口
- めんどくせえから(笑)。