
- 糸井
- なんでその商売やってるかっていうところに、
生まれた時から思ってた人なんか、
あまりいないじゃないですか。
歌舞伎の御曹司とかは別だと思うんですよね。 - 古賀
- ええ、ええ、そうですね。
- 糸井
- あれは、「業界が私」だからね。
どういうふうに自分を気に入ってくれる人と
付き合うかとか、
全部が、人生がもう芸ですからね。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- ライターとかコピーライターとかって、
古賀さんが自転車をすごく何か好きになって、
すっごい素敵な自転車屋作ったとして、
どんどん上手くいったら、
ライターの仕事どうしてますかったら、
「うん、たまにやりたくなるんだよね」
という感じだよね(笑) - 古賀
- (笑)はいはいはい、そうですね。
- 糸井
- 追い詰めすぎなのかも知れないけど、
どうですか、逆に(笑) - 古賀
- 僕は、やっぱり、
つい業界のためとかっていうことを言っちゃうし、
考えるんですよね。自分が新人だった頃は、
こんな格好いい先輩達がいたって、
今自分らがそれになれてるんだろうかとか、
今残ってる50代60代の中に、
どれぐらい格好いい人達がいるだろうと思うと、
やっぱり昔の思い出の方が格好良く見えるんですよ。 - 糸井
- そうですね。
- 古賀
- その時に、若くて優秀な人が、格好いいなとか、
入りたいなって思う場所になってるか
どうかっていうのは、たぶん端的に言って、
ネット業界とかの方がキラキラして見えるはずなので。
だから多少のキラキラとか、
羽振りの良さみたいなものとか、
サッカーの本田圭佑さんが白いスーツ着たりとか、
ポルシェに乗って成田にやって来ましたとか… - 糸井
- 敢えてやってますよね。
- 古賀
- はいはい、ああいう演出とかも、
何かしら出版業界の中とか、僕らみたいな立場の人間が、
多少はやった方がいいのかなという思いも
若干あるんですけど。
でも、今の糸井さんの話を聞いて、
三日三晩自分に、もしそれを問いかけたら(笑) - 糸井
- (笑)
- 古賀
- 問い詰めると、どこかには
チヤホヤして欲しいという気持ちはあるんで、
それを良くないことと片付けるのは、
あまりにも勿体ない原動力だから。 - 糸井
- 人間じゃなくなっちゃうってとこがあるからね。
- 古賀
- はい。だからチヤホヤされたいと、どう向き合って、
そこを下品にならないようにとか、
人を傷つけたりしないようにとかの中で
自分を前に進めていくというのが、
今やるべきことなのかなという気はします。

- 糸井
- ほんとのこと言うと、
やるべきことなのかどうかもわからないんですよね。
つまり変なハンドル切り方してみないと、
真っ直ぐが見えないみたいなとこがあって。
やっぱり、僕はよく社内で言うんだけど、
「昔はみんな立ちションベンしてたんだよ」
って言い方して。
地方に住んでた人は、もっとですよね。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 田んぼと都市の境目みたいな場所だらけになったから、
田んぼや山の中でするのはおかしくないわけで、
重なってる領域みたいな所にみんな生きてるわけだから。
立ち小便してた。それから、
今倫理的にものすごくあちこちで追求されるけど、
お妾さんのいる人とかって、いくらだっていた。
今の基準でいい悪いって言うのは簡単ですよ。
答えわかってて、その後押ししてるわけだから。
女・子どものいる所でタバコ吸ってモクモクの部屋で
偉そうなことをオヤジ達がしゃべってて、
「あ、酒こぼしちゃった」なんつって、
「あらあら」なんて拭いてもらう。
ああいう時代に生きてたっていうのが、
僕の中には、まだやっぱり尻尾が付いてますからね、
そっちにね。
だから、比べる機会がものすごく多いんですよね。
あのままそっち行ってたら、これは今袋叩きだぞと。

- 糸井
- そんなこと山ほどあるんだけど、今ってゼロにして、
すぐにチェックし合うみたいなことになるじゃないですか。
歯に青のり付いてない?
みたいなとこから始まるじゃないですか。
青のり付けちゃった方が人として健全な免疫というか、
それを作れるんじゃないかなと思うんですよ(笑)
今、ネットの方が華やかに見えるって言うけど、
あれやってる人は、痙攣的に楽しいんじゃないですかね。
ピリピリするような。 - 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- やっぱり追い抜く方法を自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。 - 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- 僕がコピーライターやってる時にも、
それの浅いやつはありました。
あいつがこのぐらいのところで出してくるんだったら、
俺はそれよりずっと飛んじゃいたいなとか。
でも今って、僕の時代が月単位で動いてたとしたら、
月刊誌の尺度で動いてたとしたら、
週刊さえ超えて、時間単位ですよね。
あそこで、俺は裏の裏まで読んでるんだごっこを
ピリピリしながらやってるというのは、
何にも育たない気がする(笑)