ロードショーもおわり、DVDも発売になって、
監督もスタッフも役者も
語り尽くしたかもしれないという、
いまの時期になって、思い立ちました。
『フラガール』、ほんとうにいい映画なんです。
終ったことに、しないでください。
いまさらですが、強く強くおすすめします!

このコンテンツは2本立て。
李相日監督と糸井重里の対談、
そして、企画・プロデュースの石原仁美さんへの
「ほぼ日」乗組員のインタビューです。
平日毎日更新。交互に、おたのしみください。


李監督×糸井重里対談
第1回 3時間近いものを、最初はつくってしまったんです。
糸井 時期はずれなときにすみません。
映画が終わって、しかもDVDももう
発売になっちゃって、
ひととおりのキャンペーンも
終った時期ですよね。
僕らも、できたら上映前だとか
上映中にやったほうが
いいに決まってるのわかってるんですけど、
DVDをあらためて見て、
『フラガール』の取材、
“いまさら”したほうが
いいんじゃないかなと思ったんです。
世の中ってほら、
終わると終わったことに
されてしまうでしょう。
だから、その意味では、今だったら、
いちばん損得抜きでの取材になるかなと
思ったんです。
この『フラガール』が当たって、
今はどんな気分ですか?
はい、当たりましたね。
‥‥当たりましたけど、
強烈に僕の生活が変わったわけでは
ないんで、実感が湧かないというのが
正直なところです。
知り合いとか親戚が初めて
僕の映画を見た、
ということはありましたけれど。
糸井 「あの子は何やってんだろう」って
思われていたのかな(笑)。
「なんか映画みたいなことやってるって
 言ってたなあ。生活どうしてんだろう」
みたいな程度が、
「ああ、なんか、ちゃんとしてたんだ」
っていう感じです(笑)。
糸井 それは大きく変わりましたね。
作ってるときには、
どうなるかななんてことは
あまり考えないでやるほうなんですか。
どんな人に見せたいか、っていうのは
作る前に大体は考えます。
例えば『フラガール』の前作の
『スクラップ・ヘブン』
自分と同世代か近しい世代の、
好きな人に見てほしいと
どこか決めていたところが
あったんですけど、
今回はなるべく幅広い層で性別問わず、
いろんな人が見られるように
ちゃんと作っておきたいっていう
感じだったんです。
けれども、そういう
ザックリとしたイメージは持っても、
どういう展開をして、
どれぐらいお客さんが入って、
ってとこまで計算しようがないんです。
糸井 手応えみたいなものってのは、
撮影現場と編集室と
最低でも2回はありますよね。
そうですね。
編集のときのほうが強いですね。
糸井 けっこうしつこく撮っといて、
あとの編集でやる自分に任せる、
っていうふうな?
やっぱり編集で「これが足りない、
あれが足りない、こうすればよかった」
って必ず出てくるんです。
いまの日本で追撮(追加撮影)を
やらせてくれることはありませんから、
全部が全部じゃないですけど、
ある部分に関しては
選択肢を増やしておきたいっていう感じで
撮影をしておきます。
糸井 そうすると、現場の緊張感を
何回か作らないとならないですよね。
はい、でもそれはスタッフとかキャストには
言えないんですよ、もちろん。
いかにもこれだけが
必要なんだっていうふうにして。
本当は今のでもいいけど、
もう1つこういうのがほしいってときは、
「今ので全然ありなんですけど、
 言い忘れました、
 すいません、ここをこうしてください」
って(笑)。
糸井 監督が若いからやりやすいってことも
あるかもしれないですね。
少なくとも生意気に聞こえないもの(笑)。
例えば富司純子さんのように
ものすごいキャリアがあって、
だれに何言われたって、
イヤなものはイヤだみたいなことが
言えるタイプの人でも、
監督の年齢だと、
「息子みたいな人が言ってんだし」(笑)。
娘の寺島しのぶさんと
確か同い年ですからね。
糸井 自分は若いなっていう意識はありましたか。
どうしたって若いですから、あります。
富司さんも大スターで
本当にたくさん経験してらっしゃるんで、
多分ご自分の中でこれが正しいっていうのは
あると思うんですけどね、
それが必ずしも僕と一致するわけじゃない。
歩き方一つとかでも、
意見が違ったりすることがあるんです。
意見が一致しないときは、
あまり正面からガツンとぶつかるよりは、
ミーティングタイムに入りますね。
現場を止めて、本当に時間をかけて、
僕と富司さんで話しました。
糸井 とても大人な動きですね(笑)。
ちゃんとできていたのかどうか
わからないですけど‥‥。
糸井 いや、さぞかしたくさん
撮影と編集に
時間をかけたんだと思って見ていましたよ。
予算も期間も条件があるわけだから、
その中であの『フラガール』を
作るというのを想像すると、
僕なんかゾッとしちゃうくらい
すごいことだと思うんです。
予習・復習を役者さんたちが
たくさんしたってことですか。
全部練習のいることですよね。
そうですね。方言とダンスですね。
糸井 方言もそう?
ええ、前もってやりましたね。
でも、その場でもセリフ変えたりするんで、
それも富司さんから
ちょっと怒られたんですけど(笑)。
方言の練習をきっちりやって来てるのに、
現場でセリフを変えられると、
また方言を直さなきゃいけないから
完璧度が落ちると。
糸井 うんうんうん(笑)。
まあ、そうですよね。
「でも、まあ‥‥うん、まあ、でも、
 ちょっとやってみてください」
って(笑)。
糸井 その「まあ、そうですよね」が
ものすごくうまいね(笑)。
でも本当に、おっしゃってることは
すごくよくわかるんです。
やっぱり練習なさって
現場に入られてるんで、
それは困るだろうと思うんですけど、
でも、思いついちゃったものは
しょうがないですからね。
糸井 そこは、言い方が乱暴になるけど、
監督の映画なんですよね。
人が言えないことをいろんな人に
言わなきゃいけないっていうのが
監督の仕事なんです。
あとで素材を見たときに、
「ああ、やっぱり違った」
って思うのはすごくいやなんです。
その場で思いついたこと、
その場で思ったことは、
やっぱりその場で解決していかないと
あとで解決できないので。
「ああ、こうやればよかった、
 ああやればよかった」っていうのだけは
持ち越したくないんです。
本当にもう少しずつ、少しずつ
明らかに取り返しのつかない時間が
どんどん過ぎていくのが撮影現場なので。
ぼくは、それをやってるだけなんです。
糸井 『フラガール』はロケの現場にいた時間が
ものすごい長い映画ですよね、きっと。
そうですね。丸々向こう(ロケ地)に
2ヶ月いましたんで。
糸井 2ヶ月あったら、そこの中でのちょっとした
空気の違いみたいなのは、
天気みたいにしょっちゅう
変わってますよね(笑)。
みんなプロなので、もちろん
映画を作るために集まっていますけど、
いろんな流れがありますよね、空気が。
撮影現場ってライブなんで、
人間関係も変化していくし、
人間同士が集まっている場所では、
なにかあるものじゃないですか。
糸井 うん、あると思う。
じゃ、「もう帰るとこないぞ」
っていうことで作っていくんですね。
そうですね。
じっさいに映画の製作中は
僕は家に帰らないんです。
都内で撮影してても。
糸井 そうですか!
あれは2ヶ月ですか。
よくできたなって感じはあるでしょう、
やっぱり。
でも、粗いところもけっこうあるんです。
実際には3時間近いものを
最初に作ってしまって‥‥(笑)。
いや、3時間になるとは
さすがに思ってなかったんですけど、
2時間半は超えるだろうっていうのは
脚本の時点でわかっていて。
脚本は、ページで何時間とか
計ったりするんですけど、
踊りのシーンとかは
1行にしちゃったりして、
2時間ということにして始めたんです。
でも、まあぼくは
2時間半以内と予想していて、
それをどう編集で2時間15分ぐらいに
縮めようかなと思ってたら、
2時間50何分まで行っちゃったんで‥‥
ちょっと甘いですね(笑)。
糸井 でも、何なんですかね、
その長さの関係って。お客さんが
「長くなかったよ」と言ってくれたら
長くたっていいですよね。
そうはいかないんですか。
僕は純粋にそう思うんですけど、
やっぱり映画会社としては
いろいろあるんですよ。
山崎 (シネカノン宣伝担当)
そうはいかないんですよ。
糸井 なんでいけないんですかね。
山崎 単純に映画館の入替えの時間とか営業時間。
今週いくら稼ぐには何回は回したいとか、
そういうことを考えて、
モーニングショーとレイトショーを入れると
やっぱり1本2時間以内で
回していかないとならないんです。
1日3回とか2回の上映しか
できない映画だと、結局お金が‥‥
そういう言い方をするとちょっと
身も蓋もないんですけど、
ビジネス的にいうとそういうことですし、
プリント代も高くかかっちゃいますし。
お年寄りとかでおトイレが近い人とかが
途中に出られちゃっても困りますし、
そういうことですね。
糸井 だいぶ違うんですか。
山崎 やっぱり違いますね。
それが1館だけでやってる映画だったら
いいですけど、全国200館もあると、
×200なので。
映画は、120(分)でキリよくみたいな。
実は120分50何秒あるんです(笑)。
糸井 (笑)そこまではセーフだったんだね。
山崎 まあ、2時間って書いちゃえば
わかんないかなあって。
糸井 2時間だと、回せるんですか。
山崎 回せますね。
糸井 2時間15分は?
山崎 そうすると予告編がつけられない。
それはシネコンなんかで
上映するときにはキビシイとか。
そういうこともあったりしますので。
メジャーな映画会社は
自分のところのチェーンの映画館を
持ってるんで、そこでできるから、
「2時間15分でも20分でも、
 ま、よきゃあいいでしょう」
みたいな大らかさはあるんですけど‥‥。
山崎 (うちは)大らかさはないですよ(笑)。
今回みたいにいろんな劇場と
ブッキングしなきゃいけないときは‥‥。
糸井 今みたいにはっきり言われたほうが
楽ですね。
要するに、「おまえの話もわかる」
っていうとこから始められますね。
「何とかしてくださいよ」って言われても、
何とかしたくはないよね。
そうですね、したくないですけど、まあ、
こっちも取引材料をいろいろ(笑)
ストックしておいて、
最終的に2時間におさめるようにと
言って来るだろうなっていうのは
読んでたんで、
その代わり絶対これは残すぞ、
とかいろいろ。
糸井 李監督は、案外そういうテクを
いっぱい持ってますね。
お若いわりに(笑)。
何で鍛えたんですか。
いや、あの(笑)‥‥
今まで3、4本撮ってる中で
少しずつわかってきたことです。
糸井 最初はもっと違った?(笑)
最初はもう全然、それこそ純粋に、
2時間でも3時間でもいいじゃないかと
思ってたんですけど、
ま、そういう事情もあるし(笑)。
糸井 バンドの連中がスタジオ代のこと
考えるみたいなことだよね。
山崎 そうですよね、まさに。
糸井 昔のバンドは考えなかったんですよ(笑)。
あるいはもっと言えば、発売日さえ
平気で延期してましたよね。
そのときのノスタルジーが
僕らの世代だとあるもんだから、
うん、よく頑張ったなって
思っちゃうんです(笑)。
でも今の子はみんな
そういうの上手になってますよね。
 
(つづきます!)
 

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2007-06-01-FRI