おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson944
読者の声 ― 101の決心

まわりから、「デキる」と思われている、
実力100の人が、

全力100を出しきって、さらに殻を破ってその先の、
101を目指す意味って何だろう?

85点も出せば、充分、安定的に勝てる世界にいるのだし、
100にくるまでに凄まじい努力を積んで来ていて、
伸びしろだって少ない。

先週、ジャズピアノ練習中の読者は、

「殻を破るとは、エゴを捨てていくこと。
エゴをどんどん捨てて行って100になったとき、
101になるためには、
簡単に捨てられるようなエゴはもう残っておらず、
だからこそ、そこに、見たことのない世界が広がる」
(akko)

と言った。
そこへ、さらに今週、
ピアノを愛する読者から、お便りが届いた。

今週も引き続き「101の決心」
への読者の声を紹介する。

<「できて当たり前」と言われる側にいて>

私は、100の側だったと思います。

100の側には、辛いことが2つありました。

1つ目は、
60の人からは、
100に至るまでの努力や、
100を保つことの大変さは理解されないこと。

2つ目は、
200や1000という、もっと、
圧倒的に出来る人がいることを知っていること。

100を出しても褒められるわけではなく、
かと言って200や1000の人に適うわけでもなく、

「私は何のために頑張っているのだろう?」

(S.N)

「100を出して、あたりまえ。
かといって、外の世界の200や1000の人に敵わない。
自分はなんのために頑張るのか?」

と、いい問いをくださったのは、

2014年「孤独のカタチ」で紹介した読者のS.Nさん
(以下Sさんと呼ぶ)だ。

Sさんは、
音楽を強い想いでやってきて、実力もあって、

でも、大学の進路選択のとき、音楽専攻を選ばなかった。

医療の道に進んだものの、
音楽への真剣な想いは消えず、
大学では、ピアノサークルに入った。

その当時、Sさんはこんなおたよりをくれていた。

<アマチュアにも、プロにも、なれず>

ピアノサークルに入った時、
ピアノを愛する人たちが大勢いることを知り、
初めて仲間が出来たような気がしました。

専攻こそ違えども、
音楽を真剣にやりたいという気持ちは変わらず
努力を続けた結果、
コンクール入賞や、リサイタル開催、
という幼い頃からの夢を叶えました。

そんな時ふと、
サークル仲間から自分に向かってくる言葉に
鋭さを感じるようになりました。

「弾けて当たり前」と言われるのは、慣れていましたが、

「指が動いているだけで表現がない」
「この作曲家はこんな音じゃない」
「どの曲を弾いても同じ色」

そこに、
同じ状況で頑張る「アマチュア」に対する敬意はなく、
「CDで聴く演奏」に批評しているのと
同じ感覚がありました。

次第にサークル仲間と音楽の話をすることが
嫌になりました。

私が全く結果が出ずに苦しんだ時期を知らない後輩には、
「なんでも上手くいく人」にしか、
見えなかったのかもしれません。

私はアマチュアというカテゴリーにも
プロというカテゴリーにも入れず、苦しんでいました。

唯一の救いは、指導してくれる先生方が
「舞台に上がればアマチュアもプロも関係ない」
と言って一切の妥協を許さなかったことでした。

(S.N)

自分の意志でプロには進まなかった。
かといって、アマチュアでいるには、
できすぎて浮いてしまう。

こういう状態の人、たくさんいるのではないか?

そこで、冒頭の問いだ。

「100を出して当たり前の環境にいて、
褒められることもない。
かといって、外には200の人も、1000の人もいて、
敵うわけがない。
自分はなんのために頑張っているのだろう?」

あれから5年、Sさんは、答えを見つけたのだろうか?

今回Sさんから届いたおたよりの、
後半を見てみよう。

<101の決心>

2014年「孤独のカタチ」で取り上げていただいた当時、
私は、大学の最終学年でした。

大学のサークルには、
実力100の経験者も、60の初心者もいる。

私は、サークルでは100でも、
外には、200や1000をいとも簡単に出せるプロが
いることも分かっていました。
そしてそれが、とてつもない努力を必要とすることも。

学生の頃は、
200や1000の世界に負けたくなくて、
コンクールに出ては打ちのめされ、を繰り返しました。

その後、就職して社会人になってもその生活は続き、

「100を出しても褒められるわけではなく、
かと言って200や1000の人に適うわけでもなく、
私は何のために頑張っているのだろう」
と悶々としていました。

抜け出すにはしばらく時間がかかりましたが、

あるアマチュアオーケストラと
共演するようになってから変わりました。

アマオケというのは、また特殊な世界で、
「プロオケではなくアマオケが好き」、
というファン層がいて、
どんな演奏にもファンが付くのです。
それまで置かれた場所に満足するのは
嫌だと思っていましたが、

置かれた場所で、
私の表現を受け取ってくれる人がいる
ということに気付いたのです。

そしてそれは200や1000の人にはできないことなのです。

そう思ったら、
100を101にすることが
とても尊いことのように感じられ、

頑張るという感覚はなくなり、
ただただ、表現を追求することに集中できる
ようになりました。

後から振り返ると、学生時代は表現というよりも、
もはやピアノを利用したスポーツでした。
いまようやく、表現するという幸せを噛みしめています。

表現する側が様々であるように、
受け手側の求めるものも多種多様です。

200や1000、つまりプロの表現に
うっとりする人がいれば、
60や100の人が一歩前進する瞬間に
感動する人もいます。

私が100だから届けられる人がいる。

だから私が100を101にすることはとても尊い。

努力とも思わず表現を追求しているいま、
ようやく表現者としてのスタートに立てたのだと思います。

(S.N)

かつては、「井の中の蛙、大海を知らず」
と言われてきた。
自分の狭い世界で良いと思うものが、
広い世界に出て通用しないと。

けど、Sさんが言うように、
「受け手側の求めるものも多種多様」。

YouTubeやInstagram、Twitterなどを通して、
だれもが自己発信できるようになったいま、

大海に出て成功するかしないか、の2択ではない。

自分ならではの表現を待っている人を
見つけることができる。
その人たちに支えられて、
一生、自分の表現をし続けて生きることも可能になった。

いまは、

「井の中の蛙、
大海へ向けて、自己表現してみたら、
案外、自分を待ってくれてる人がいた!」

そんな時代だと私は思う。

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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
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ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
 無料で聴けます

 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。



『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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