salary
真実の「だんご虫株式会社」

外資系のバーリバリのビジネスページがあるのに、
国産べーろべろの会社話がないのは、
ばらんすがとれない。
だから、探しましたよ、いいネタたっぷりの
すんごい会社を。
その名も、「だんご虫株式会社」。
情報ソースの身の安全を守るために、業種については
あからさまにしておりません。

日陰の土地のなんの変哲もない石を
よいしょと持ち上げる。
すると、ほら、そこにはだんご虫がいるじゃないか。

僕は、変化のある仕事がしたいと思って
現在の会社の採用試験を受けた。
はずだった。
そして配属された部署が、
早すぎる老後を迎えた人達のたまり場というか、
いろんな意味で光が当たらない墓場だった。
フロアの隅っこの方に申し訳なさそうに机が並んでいて、
フジテレビのドラマ「ショムニ」のような感じ。
そんな部署での苦悩の日々が続いた。

第7回   自衛消防隊

一旗上げようと、だんご虫達が立ち上がり
凄まじい熱意と団結力で会社を動かした。
しかも、社員の誰もが考えつかない、
というよりは考えようとしないことを彼等は
半年間練りに練っていたのだ。
その企画とは「自衛消防隊」。
要は、避難訓練がやりたかったのだ。

社内で火災があった時のために
特殊部隊を作っておこうという主旨だが、
いちばん逃げ遅れそうな彼等が中心となって
会社を守ろうとしていることが、ちょっと心配だ。
違う意味で特殊部隊!
そして、この自衛消防隊の名簿に僕の名前も入っている。

この「自衛消防隊」の結団式があった。
これがすごい!
社内でいちばん大きな会議室に入ると、BGMが流れ、
正面には彼等お手製の横断幕があり、
相田みつをの書のような
上手いんだか下手なんだか分かんない文字で
「自衛消防隊」と書かれている。

大きなホワイトボードには、各担当が発表されていて
隊長、副隊長はもちろんだんご虫コンビ。
以下、初期消火担当、避難誘導担当、応急救護担当、
通報連絡担当、安全防護とある。
僕は、避難誘導担当になっていた。

結団式の冒頭は隊長、副隊長の挨拶で、
火災になりやすい原因や火災のおそろしさ、
普段の心構えや実際に火災が起きた時の役割や判断など、
気前よく喋りまくっていた。
ふだんは見られないオヤジ達の威厳を感じた。
会社を火災から守ろうという正義感に満ちあふれている。
僕はこの結団式の1時間を骨休みのつもりでいたのに、
彼等は骨を埋めようとしている。

そして挨拶の後には、実際に起きた火災での
消火活動のビデオ鑑賞の時間。
炎の勢いと体を張った消防士の姿が
本当にリアルに映っているのだ。
きっと、彼等は自分たちの挨拶で想像力を高め、
ビデオでリアリティーを与えて
僕らを教育しようと計算していたに違いない。
意気込みが違う!

最後は、ホテルニュージャパンの
火災の消火に当たったという
一流消防士を交えての豪華パネル
ディスカッション。
質疑応答の時間では、誰も質問をしない中、
だんご虫たちが率先して
「出火時に冷静に行動するためには
どうすればいいのですか?」
「逃げ遅れた人がいた場合、
どう対処すべきですか?」
と質問をぶつけまくっていた。それはいい。
しかーし、途中で息切れしたのか
「今までおもしろい火事でどんなものがありましたか?」
おもしろい火事・・・?

ニコニコ顔だった一流消防士も
「火事に面白いも面白くないもありませんが...」
とムッツリ顔になってしまった。
トドメの質問はコレ。
「会社として
社用の消防車を用意したほうがいいですよね?」
「・・・??」
きっと彼は、西部警察で大門刑事が乗っていた
放水車を買おうとしているにちがいない。
せっかく来てくれた消防士さんの立場は?
一流消防士は生気のない表情で
「そうですね・・・」とポツリ。
日頃はどんな火災も消火しているのに、
だんご虫たちの質問を消化することはできなかった。

翌日、各担当に緊急飲食糧、医薬品、ラジオ、
といった防災備品が支給され、常備することになった。
僕には、ヘルメットと誘導用のボードが用意されていた。
ヘルメットと看板・・・。
これじゃ、どっきりカメラだ!
僕は野呂圭介か? トホホ。


だんご虫株式会社への激励や感想などは、
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postman@1101.comに送ってください。

1998-11-12-THU

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