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真実の「だんご虫株式会社」

第3回  ヒゲ男

ヒゲ。なぜ生えてくるのだろうか?なぜ生やすのだろうか?
ヒゲ評論家の僕にとって、最も気になることだ。
カツラ、あそこの毛は話題になっても、
同じ毛であるヒゲが話題になることは少ない。

ヒゲ男。大きく分けると3タイプある。
1つめは、口ヒゲのみで、
細く薄く常に手入れされている山本晋也型。
田代まさし、月亭可朝などがこのタイプに属する。
このタイプは、常に女の裸を追い求め 、死ぬまで発情期。
スッポン、バイアグラより、彼らの生血のほうが絶倫になる 。
我々の間では、このタイプを「赤ヒゲ」と呼んでいる。
2つめは、口ヒゲのみだが、
密林のように異常なほど生やされている剛毛で、
元西武ライオンズの松沼兄やんタイプ。
このタイプに桑野信義などが属する。ファッションの域を越え、
口ヒゲを武器に何か問題を起こすので、
我々の間では無精ヒゲならぬ「武装ヒゲ」と呼んでいる。
3つめは、口ヒゲとアゴヒゲを生やし、
唇が見えないほどヒゲが顔の半分を覆っている
森繁久弥タイプ。このタイプに勝新太郎などが属する。
口を隠すような生やし方をするのは自殺行為。
「死人に口なし」とはこのことで、勝新はやっぱり 死んだ。
森繁も準備は整っている。
死が迫るとこのような生やし方をすることから
我々の間では「かんお毛」と呼んでいる。

この3タイプで、
1番やっかいなのが松沼兄やんタイプ。
その不気味なヒゲから形成される
屈折した性格は驚異だ。
彼らにとってヒゲは触角で、そよ風でなびいたり、
何かの振動で揺れたり、酒を飲んでアルコールが
ヒゲについたりすると平衡感覚を失い、
何をするか分からない。とにかく豹変するのだ。

このタイプのヒゲ男がウチの会社にもいる。
松沼兄やんの2倍の密度、大きさで
武装ヒゲどころではない。
なんでそこまで生やさなければいけないのか?
あの本数といい膨らみ方といい、
地肌を見せられない何かがあるはずだが、
謎を解明で きていない。
実はヒゲではなく、長年放置された鼻毛ではないか?
実は悪臭で集まってくるハエの大群なのではないか?
実は自然界に存在しない物質でできているのではないか?
実は麻薬中毒で、ヒゲの間にクスリを忍ばせ、
タバコを吸うフリをして
クスリを吸引しているのではないか?

彼のヒゲは、常にどうでもいいことに敏感で、
「小言」という攻撃を仕掛けてくる。
彼自身ではなく、彼のヒゲが攻撃してくるのだ。
これが本当にむかつく!
このヒゲの小言攻撃は相手をイライラさせ、
精神的苦痛を与える。
何度か攻撃されると、ボディーブローのように効いてきて、
安定していた心を荒らされるのだ 。
社内では「黒船」ならぬ「黒ヒゲ」として恐れられている。

僕は、書類関係を全て
黒ヒゲの彼に提出しなければならない。
「ちょっと見て下さい」と書類を手渡すと
「お前、ツメが伸びてるじゃねーか!
いいか、社会人なんだからツメを切れ!
コンビニでツメ切りを売ってるから、すぐ買ってこい!」
おいおい、たいして伸びてないよ。
ツメより書類を見てくれよ。

社内を歩いていると、いきなり後ろから
「お前、歩き方に無駄があるぞ!
いいか、社会人なんだから最短距離で歩け!
今日は1日歩く練習をしろ!」
急いでないんだから、どう歩こうと勝手だろ。
俺の歩き方よりお前の人生の歩き方を心配しろよ。

食事の時は
「お前、サラダを食べるペースが遅いじゃねーか!
いいか、社会人なんだから
円を描くようにバランスよく食べろよ!
野菜、肉、ご飯、みそ汁の順で食べろ!」
どう食べようと、最後に全部食べてりゃいいじゃねーか。
彼と食事をするほど食い合わせが悪いものはない。

黒ヒゲが攻撃した後、
彼は満足気にタバコをくわえてほくそ笑む。
ヒゲを触ってはほくそ笑む。鏡を見てはほくそ笑む。
誰かあの黒ヒゲを何とかしてくれ!
黒ヒゲを剃ってくれ!そして、
彼を普通の人間に戻してやってくれ!

追伸
橋本首相が辞任を表明した。サッカー日本代表と同じように
外国から総理を連れてきてはどうか?
「レゲエ政治」なんて楽しそうじゃないか!

1998-07-21-TUE

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