- 糸井
- yuriさん、いまのお仕事はおもしろいですか。
- yuriさん
- わたしは‥‥語弊があるかもしれませんが、趣味でこの仕事をしているんだと思います。
- 糸井
- 趣味で。
- yuriさん
- すみません、不謹慎ですよね。
- 糸井
- いや、そんなことはないです。
人間の在り様に、真剣に触れるお仕事ですから。たくさんの物語を次々と読んでいくようなおもしろさがあるんだと思います。 - yuriさん
- なによりもその、被害者にお金が返ってくることが‥‥
- 糸井
- あっ、それはうれしい。
- yuriさん
- そう! うれしいんですよ。うれしいからおもしろい。
- 糸井
- なるほどねぇ、問題がひとつ解決するっていうのは、相談員さんにとって大きなうれしさなんでしょうね。
- yuriさん
- はい。
- 糸井
- 逆にいえば、瀬戸内の小豆島のような場所にさえ、解決しなければならない被害がいくつもあると。
- yuriさん
- ええ。
最初にも申し上げましたが、香川県は貯蓄率が高い。小豆島もそうだと思います。 - 糸井
- そうか、そうでした。
だから狙われる。 - yuriさん
- お金をしっかり貯蓄されていて、つつましく暮らしている方が多いと感じます。
冠婚葬祭のときにばーんと派手につかうとか、立派な家や車につかうとか、あんまりそういう傾向もないのではないかと。
じゃあ、どこにお金をつかうんだろうと考えたら、たぶん子どものため‥‥「教育」に、なんです。 - 糸井
- ほぉ、教育。
- yuriさん
- 小豆島は『二十四の瞳』の舞台なのですが、とても教育熱心な場所のように思います。習い事をしている子どもが多い。たくさんの子が塾に通っていてびっくりしました。
そうやってみなさん、子どもにお金をつかう。そして、子どもにお金を残そうとする。
ある日‥‥相談の電話をいただいたときのことなんですが、いろいろうかがっているうちに、なぜそんなにお金を増やそうとなさったんですか?ということをたずねましたら、「子どもに残すお金を増やしたかった」とおっしゃるんです。 - 糸井
- ‥‥痛々しいですね。
- yuriさん
- 「わたしが欲ばりだからこんな目にあってしまった」
そうおっしゃる。 - 糸井
- それはその人の欲じゃない。
- yuriさん
- でも、報じられるのは「お金を増やそうとした年寄りがだまされた」というニュースです。
- 糸井
- それはだから、さっき話した「知らない」を「笑う」とおんなじ構造ですよね。
- yuriさん
- おなじですね。
- 糸井
- うーーーん‥‥。
- yuriさん
- ‥‥小豆島は、たぶんそういう方が多い場所なんだと思います。
- 糸井
- 子どものために‥‥。もう、松本清張の小説を読んでるみたいだ。
- yuriさん
- ほんとうに。
- 糸井
- ‥‥切ないなぁ。
- yuriさん
- でも、教育熱心だからこそのいいこともあります。
- 糸井
- そうですか。
ぜひ聞かせてください、いい話を(笑)。 - yuriさん
- はい(笑)。
小豆島の人たちは、よく文字を書かれるように思います。 - 糸井
- そうか、教育熱心だから。『二十四の瞳』だから。
- yuriさん
- ええ。
書くことが推奨されていて、小学校では硬筆検定なども盛んです。
字がきれいな人が多くて、とくに、ご高齢の方は達筆で。 - 糸井
- なるほどねぇ。
- yuriさん
- 「クーリングオフの書類の書き方がわからない」というご高齢の方に「じゃあ、わたしが鉛筆でうすく書くので、それを上からなぞってくれれば大丈夫ですよ」と言ってハガキ書類を渡したら、ダーーって書き直されたことがあります(笑)。
- 糸井
- 清書されちゃった(笑)。
- yuriさん
- すごい達筆で(笑)。
- 糸井
- いい話だなぁ。
- yuriさん
- あと、几帳面にメモをする人も多いです。
- 糸井
- メモの習慣がある。
- yuriさん
- はい。
たとえば、かかってきた電話の内容なんかもしっかりとメモする人が多い。 - 糸井
- ‥‥つまり、そのメモは証拠になりますね。
- yuriさん
- そうなんです。
メモをちゃんと残してくださったことで、それが糸口になってトラブルが解決したこともありました。
記録があったおかげで、だました相手との交渉がやりやすくなったんです。
「こういうメモが残っているのですが」と。 - 糸井
- だます側はコストをかけたくないから。裁判とか、避けたいんですよね。
- yuriさん
- そうだと思います。
証拠を残している相手は面倒なんでしょうね。 - 糸井
- さっさと返金して、次のだれかを狙ったほうがいい。
- yuriさん
- そういうことかと。
- 糸井
- すると、その返ってくるお金っていうのは、他のだれかをだましたお金なのか‥‥。
それはそれで皮肉なものですねぇ。 - yuriさん
- でも、みんなが証拠を残すようになれば、相手はどんどん困っていきますから。
なにしろ、メモが残っているのは助かります。 - 糸井
- なるほど‥‥。
あれですね、yuriさん、きょうyuriさんとしたような話を親子とか家族とかで、ときどきでいいから交わしていれば、たぶん被害は減っていきますよね。 - yuriさん
- そうですね。
ご親戚の高齢者を気をつけて見てるとか、声をかけてあげるとか、そういうことは有効だと思います。
でも‥‥むずかしくもあります。 - 糸井
- むずかしい?
- yuriさん
- ええ。
- 糸井
- それは、どういうことでしょう。
(最終回に、つづきます)
「相談したいことがあるときは」
ひとりで悩まず、相談しましょう。相談は基本的に「電話」で行います。消費者からの相談を受け付ける国の機関、
「国民生活センター」のサイトはこちら。一方、「消費生活センター」とは、
消費者保護を目的とした都道府県・市町村の行政機関で、
日本全国にたくさん設けられています。
「国民生活センター」と「消費生活センター」は
互いに協力し合い、消費者対応を行っています。
相談をしたい場合はどちらでも大丈夫。お住まいに近い機関へ連絡をしてみましょう。「消費生活センター」への相談方法は、
こちらのページでくわしく説明されています。
「国民生活センター」の相談窓口は、
こちらからどうぞ。


