- 糸井
- 「知らない」を「笑う」ことがだまされる人を増やすという図式。
これひとつ、忘れずにいたいですね。 - yuriさん
- はい。
- 糸井
- 一方で‥‥高齢者の話に戻りますけれど、お年寄りの場合はだまされても笑われないかもしれませんよね。「かわいそうに」と思われるから。
でも、この、「かわいそうに」っていうのも、なんていうんだろうな‥‥へんな選民意識から出てくる感情に思えるんです。 - yuriさん
- ああ‥‥
選ばれた自分から見ると、「かわいそう」という。 - 糸井
- そう。もっと、こう、「同じだよ!」って言いたい。
それでぼくは、ちょっと最近1個、キーになるかもしれない考え方を見つけたんです。 - yuriさん
- どういう‥‥?
- 糸井
- 「ばかだなぁ」とか「かわいそうに」とか、そういうのを乗り越える方法は、「チーム」なんじゃないかと。
- yuriさん
- チーム。
- 糸井
- だまされた人を笑うほかにも、いろいろな言い方があるじゃないですか。
「欲が深くてだまされた」とか。「見栄を張ってだまされた」とか。 - yuriさん
- 「知らないからだまされるんだ」とか。
- 糸井
- そう。
「チーム」だったら、仲間に対してそういうことはあんまり思わないでしょう。
だから、「ばかだ」「気の毒だ」じゃなくて、だまされた人が、自分と同じ「チーム」にいると思うことなんですよ。
そう思えたら、「お前と俺とで、どうやって、何しようか」って、自然に考えて行動できるんです。 - yuriさん
- なるほど‥‥。
「チーム」という考え方をうかがって、いまひとつ思い出した事例があります。 - 糸井
- なんでしょう。
- yuriさん
- すこし前に小豆島で、いわゆるマルチ商法が流行りまして。ご相談をたくさん受けた時期があったんですね。
- 糸井
- 人口3万のその島でも、そんなふうに流行っちゃうんですか。
- yuriさん
- もちろん、流行ります。その人口だからあっという間に。
- 糸井
- そうか。
- yuriさん
- マルチ商法がなぜ非常に厳しく規制されているかというと、人間関係を利用するなどして組織を拡大し、被害を拡大させたりする、非常に問題が起こりやすい取引だからなんですね。
友だちや親戚からすすめられたら、消費生活センターにも、言えない。
勧誘してくる友だちや親戚が、違法行為をしているかもしれないわけですから。 - 糸井
- 言えないでしょうね。
- yuriさん
- 言えない。
仕方ないから「買います」となって、黙っている人がたくさんいます。 - 糸井
- うーーん‥‥。
- yuriさん
- で、思い出した事例というのは、ここが大きくちがったんです。
知り合いの中にマルチ商法が入ってきたとき、「友人がこんなことをしているのは大変なことになる」
そう思った人が、動いてくれました。 - 糸井
- 黙ってないで相談してくれた。
- yuriさん
- そうです。
何人かのお友だちが声を上げて、センターに相談してくれたんです。
話をうかがったら、やはり問題のある勧誘方法でした。
周囲のみなさんは、「マルチ商法を信じ込んでいるこの友だちを、どうしたら助けられるだろう」と思いながら勧誘を受けていたのだそうです。 - 糸井
- ‥‥すばらしいですね。
- yuriさん
- そうなんです。
「あ、この子のやってるのはマルチだ」と気がついてから、「もうこの子と関わるのをやめよう」ではなく、「助けなきゃ」と思ってくれた。
それによって、おおきく状況が変わりました。 - 糸井
- ぼくはむかし、マルチ商法に誘ってきた人と絶縁しました。
- yuriさん
- そうなりますよね。
- 糸井
- ‥‥その、絶縁してしまうことと、助けてあげようと思う、境い目ってなんでしょう?
- yuriさん
- それはやっぱり‥‥すごく友だちだったから?
- 糸井
- そうか、そうですよね。
当然そうだ。ものすごく助けたかったんでしょうね。
ほんとうに友だちだったんだろうなぁ。あぁ、そうか‥‥。 - yuriさん
- はい。
- 糸井
- そのお話は、すごくいい「モデル」ですね。
いい「モデル」を出すと、その実例に準じる人たちが増えるんです。
「問題あるマルチ商法から友だちを助けられたのは、友だちや消費生活センターとタッグを組んだからです」
これを「ほぼ日」に載せられるのは、とてもいいことですね。 - yuriさん
- そうですね、うれしいです(笑)。
- 糸井
- やっぱり、「一緒に戦う」なんだよなぁ‥‥。
- yuriさん
- 結局、私たちは、相談の声が上がらないと動けないんです。
- 糸井
- 「ヘルプ」が出ないと動けない。
- yuriさん
- はい。
ですから老人会さんとか、10人くらい集まる場所には、積極的にお話をしに行ってるんですが、そこで何度も申し上げているのは‥‥ - 糸井
- 相談してください。
- yuriさん
- そうです。
「なにかあったら、とにかく来てくださいね。気軽に電話してくださいね。
みなさんが相談してくださることで、わたしたちは情報を得ることができるんです。
自分のことじゃなくても相談してくださいね。周りの人を助けたいときも、どうか情報を教えてください」 - 糸井
- なるほど。
ということは、yuriさんがいちばんやっていることは、「知識を増やしましょう」という活動ではないですね。 - yuriさん
- そうですね。
「こういう手口が流行ってますよ」という情報ももちろんお話しますが、それよりなにより「なにかあったら相談してください」
これを、いつも何度も言っています。 - 糸井
- それはつまり、さっきの「タッグを組みましょう」ですね。
- yuriさん
- ええ、そういうことになります。
「チーム」で動きましょう。
私たちができることは、みんなで動くことなんだと思います。 - 糸井
- 「わたしたちの役割は、みんなで動くことです」
なるほど。消費生活センターは、そういう機関。それはわかりやすいですね。
(つづきます)
「相談したいことがあるときは」
ひとりで悩まず、相談しましょう。相談は基本的に「電話」で行います。消費者からの相談を受け付ける国の機関、
「国民生活センター」のサイトはこちら。一方、「消費生活センター」とは、
消費者保護を目的とした都道府県・市町村の行政機関で、
日本全国にたくさん設けられています。
「国民生活センター」と「消費生活センター」は
互いに協力し合い、消費者対応を行っています。
相談をしたい場合はどちらでも大丈夫。お住まいに近い機関へ連絡をしてみましょう。「消費生活センター」への相談方法は、
こちらのページでくわしく説明されています。
「国民生活センター」の相談窓口は、
こちらからどうぞ。

