- 糸井
- どうしたって、高齢者が狙われる‥‥。容赦ないですね。
- yuriさん
- もう、ほんとうに容赦ない。
さらに容赦がないと思うのは、これまで振り込ませる商売だったものが、今は、取りに来ることもあるんです。 - 糸井
- あぁ‥‥。
- yuriさん
- 小豆島まで来たケースもあります。直接、家に取りに来る。振り込みだったら
金融機関に記録が残るので、たとえば弁護士さんが動くこともできます。 - 糸井
- 記録が証拠になりますよね。
- yuriさん
- でも、取りに来られてしまうと‥‥。実際、わたしのところにも「取りに来た」というご相談がありました。「渡してしまった」と。
それで、その人がおいていった名刺に電話をかけました。すると‥‥「それは、そいつが勝手にやったことでしょう」 - 糸井
- あぁ‥‥なるほどね。なるほどなぁ。
- yuriさん
- 「そいつ、いま会社にいないんですよ。連絡がつかなくてうちも困ってるんだ」って。
- 糸井
- ものすごく原始的だけれども、そのやり方はたしかに効率がいいですよね。
- yuriさん
- はい。
- 糸井
- そのテレビドラマみたいな組織を潰すことは、消費生活センターの相談員さんには
むずかしいことですよね。 - yuriさん
- それはできません。
- 糸井
- うーーーん‥‥どうすればいいんだろう‥‥。
- yuriさん
- あの‥‥わたし、ここに来る前に、何をお伝えしたらいいのかいろいろ考えたんです‥‥。
やっぱりみなさんは「どうしたら地方でだまされにくくなるか」とか、「自分の親が被害にあわない方法」を、たぶん求めていらっしゃると思うんです。 - 糸井
- まさしくそうです。
どうすれば、だまされないんでしょう。 - yuriさん
- でも、あの‥‥人はだまされるものだと、そう思っているほうがいいのかもしれません。
- 糸井
- ‥‥‥‥なるほど。
それは、ものすごくよくわかる気がする。 - yuriさん
- 高齢者にかぎらず、誰だってだまされる可能性はあります。
「ぜったいだまされない」と思ってる人って、だまされた人を、笑うんですよ。 - 糸井
- うん。
- yuriさん
- ですから、なんというか‥‥だまされる人を笑う社会が、だまされる人を作っている。そんな気がするんです。
たとえば「サクラサイト商法」っていうのがあるんですね。 - 糸井
- ありますね。
- yuriさん
- 芸能人から「相談にのってください」というメールが届く。
「まぁ、まさかな」と思いながら、なんとなく返事を出してみる。
すると「実は悩んでいて‥‥」と返ってくる。え?まさかほんとに?と思ってると「できたらここでやりとりしてもらえませんか?」って案内されるサイトが、いわゆる出会い系サイトなんですね。 - 糸井
- そこで課金される。
- yuriさん
- ええ。
悩みをいろいろ言われるから親身になって聞いていたら、何十万円という請求が届いた。‥‥これ、みなさん、笑うんです。
「芸能人からメールくるわけないだろ」って。ネタにされるんですよ。 - 糸井
- 笑われるでしょうね。
だけど、たとえば、ほんとうに心が弱ってるときに「うそかもしれないけど話を聞いてくれる」っていうところからはじまったなら、それ、入っていくと思いますよ。
「俺はそんなの入っていくわけない」と言う人も、実はギリギリだと思う。 - yuriさん
- わたしも正直「なんでだろう?」って思ってたんです。そんなメールがくるわけないのにと。
でも実際に、相談者さんから、やりとりのメール見せていただいて、ああ‥‥これは、と思いました。巧妙なんです。 - 糸井
- 人の弱いところっていうのを、ほんとによく理解してますよね。
- yuriさん
- ええ。
- 糸井
- ネットでいうと、ぼくはあれですよ、すごいのがありました。なんか、クリックしてたどっていったら、アダルトサイトみたいなところから、「あなた、いっぱいお金を払わなきゃならないです。払わないとこの画面は消えません」みたいなのが、ばーんと出ちゃった。
- yuriさん
- アダルトサイト。
- 糸井
- ヌードとかそういうんじゃなかったんです。知ってる有名人のスキャンダルがあった。
- yuriさん
- ああー、はい。
- 糸井
- 「えっ? そんなことがあったの?」ちょっとくわしく読みたいって、いくつか進んでいったら‥‥ばーん。
- yuriさん
- なるほど。
- 糸井
- もう、ほんとに、嫌で嫌で。これ、払っちゃったらいいのかなぁって。
- yuriさん
- 考えますよね。
- 糸井
- 考えました。
でも結局は払わずに放っておいたらなんでもなかったんですけど。ばーんと出たやつも会社の人に消してもらったし。
でもねぇ‥‥「もう払っちゃおうかな」っていうのは、ぼくの中にあったひとつのだまされるパターンなわけで‥‥。
いや、ありますよ、誰しも。
- yuriさん
- よくお話しをさせていただくんですが、全国の消費生活センターに寄せられる相談で、たぶんいちばん多いのが‥‥
- 糸井
- アダルトサイトですか?
- yuriさん
- はい。
老若男女から相談があります。小学生や中学生が、かわいそうなくらい悩んでしまうこともあります。やっぱり、そういうことへの興味っていうのは、インターネットが普及したひとつの大きな理由だったわけですから、たくさんの人に有効な手口になるんです。 - 糸井
- ‥‥「誰しもだまされる」ですよね。人の弱さっていうのは、自分を見てればよくわかります。
- yuriさん
- ええ。ですから、だまされた人を笑ってた人にこそ、気をつけてほしいです。
- 糸井
- 「わたしに限って」と言ってた人がその穴に落ちるっていうのは、古典のようにあるわけですから。
あと、「笑われたくないから泣き寝入りする」っていうのが怖いですよね。敵がどんどん、やりやすくなる。 - yuriさん
- ‥‥なんで、なんで笑うんでしょう。
- 糸井
- そのベースにあるのって、つまんない「知識偏重主義」みたいなものなのかも。
たとえば、たまたま自分は教育を重んじる家に生まれて、勉強をする機会があったから、ある種の知的なことに触れて育ってきた。「だからそういう人がいちばん偉い!」みたいな。
そうじゃない人は、山ほどいるわけですよ。親も勉強してないし、子どもも同じように勉強しないで育ったけど、「いい家族」をつくっている人は山ほどいます。
それを「無知だ」とか、「無教養だ」とか、「そんなことも知らないのか」
っていうような流れが、こう、ぼくは、なんというか‥‥今の世の中の大きなだめなところだと思ってるんです。
で、そのことと、さっきのyuriさんの話は、とても近いところにあるような気がして。 - yuriさん
- はい、はい。
- 糸井
- やっぱり、「笑う」ですよね。「知らない」を「笑う」。
- yuriさん
- 怖い。
- 糸井
- 怖いですね。
(つづきます)
「相談したいことがあるときは」
ひとりで悩まず、相談しましょう。相談は基本的に「電話」で行います。消費者からの相談を受け付ける国の機関、
「国民生活センター」のサイトはこちら。一方、「消費生活センター」とは、
消費者保護を目的とした都道府県・市町村の行政機関で、
日本全国にたくさん設けられています。
「国民生活センター」と「消費生活センター」は
互いに協力し合い、消費者対応を行っています。
相談をしたい場合はどちらでも大丈夫。お住まいに近い機関へ連絡をしてみましょう。「消費生活センター」への相談方法は、
こちらのページでくわしく説明されています。
「国民生活センター」の相談窓口は、
こちらからどうぞ。


