もくじ
第1回詐欺的商法って増えてるんですか?───国民生活センター取材編(1) 2013-11-27-Wed
第2回だまされた人がまた被害に‥‥───国民生活センター取材編(2) 2013-11-28-Thu
第3回いまどきの送りつけ商法───国民生活センター取材編(3) 2013-11-29-Fri
第4回その速さは高齢者に向けられます───小豆島の平林有里子さんと対談編(1) 2013-12-02-Mon
第5回「知らない」を「笑う」───小豆島の平林有里子さんと対談編(2) 2013-12-03-Tue
第6回消費生活センターとタッグを組む───小豆島の平林有里子さんと対談編(3) 2013-12-04-Wed
第7回小豆島の人たちは‥‥───小豆島の平林有里子さんと対談編(4) 2013-12-05-Thu
第8回私たちに頼ってください───小豆島の平林有里子さんと対談編(5) 2013-12-06-Fri

第5回 「知らない」を「笑う」───小豆島の平林有里子さんと対談編(2)

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糸井
どうしたって、高齢者が狙われる‥‥。容赦ないですね。
yuriさん
もう、ほんとうに容赦ない。
さらに容赦がないと思うのは、これまで振り込ませる商売だったものが、今は、取りに来ることもあるんです。
糸井
あぁ‥‥。
yuriさん
小豆島まで来たケースもあります。直接、家に取りに来る。振り込みだったら
金融機関に記録が残るので、たとえば弁護士さんが動くこともできます。
糸井
記録が証拠になりますよね。
yuriさん
でも、取りに来られてしまうと‥‥。実際、わたしのところにも「取りに来た」というご相談がありました。「渡してしまった」と。
それで、その人がおいていった名刺に電話をかけました。すると‥‥「それは、そいつが勝手にやったことでしょう」
糸井
あぁ‥‥なるほどね。なるほどなぁ。
yuriさん
「そいつ、いま会社にいないんですよ。連絡がつかなくてうちも困ってるんだ」って。
糸井
ものすごく原始的だけれども、そのやり方はたしかに効率がいいですよね。
yuriさん
はい。
糸井
そのテレビドラマみたいな組織を潰すことは、消費生活センターの相談員さんには
むずかしいことですよね。
yuriさん
それはできません。
糸井
うーーーん‥‥どうすればいいんだろう‥‥。

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yuriさん
あの‥‥わたし、ここに来る前に、何をお伝えしたらいいのかいろいろ考えたんです‥‥。
やっぱりみなさんは「どうしたら地方でだまされにくくなるか」とか、「自分の親が被害にあわない方法」を、たぶん求めていらっしゃると思うんです。
糸井
まさしくそうです。
どうすれば、だまされないんでしょう。
yuriさん
でも、あの‥‥人はだまされるものだと、そう思っているほうがいいのかもしれません。
糸井
‥‥‥‥なるほど。
それは、ものすごくよくわかる気がする。
yuriさん
高齢者にかぎらず、誰だってだまされる可能性はあります。
「ぜったいだまされない」と思ってる人って、だまされた人を、笑うんですよ。
糸井
うん。
yuriさん
ですから、なんというか‥‥だまされる人を笑う社会が、だまされる人を作っている。そんな気がするんです。
たとえば「サクラサイト商法」っていうのがあるんですね。
糸井
ありますね。
yuriさん
芸能人から「相談にのってください」というメールが届く。
「まぁ、まさかな」と思いながら、なんとなく返事を出してみる。
すると「実は悩んでいて‥‥」と返ってくる。え?まさかほんとに?と思ってると「できたらここでやりとりしてもらえませんか?」って案内されるサイトが、いわゆる出会い系サイトなんですね。
糸井
そこで課金される。
yuriさん
ええ。
悩みをいろいろ言われるから親身になって聞いていたら、何十万円という請求が届いた。‥‥これ、みなさん、笑うんです。
「芸能人からメールくるわけないだろ」って。ネタにされるんですよ。
糸井
笑われるでしょうね。
だけど、たとえば、ほんとうに心が弱ってるときに「うそかもしれないけど話を聞いてくれる」っていうところからはじまったなら、それ、入っていくと思いますよ。
「俺はそんなの入っていくわけない」と言う人も、実はギリギリだと思う。
yuriさん
わたしも正直「なんでだろう?」って思ってたんです。そんなメールがくるわけないのにと。
でも実際に、相談者さんから、やりとりのメール見せていただいて、ああ‥‥これは、と思いました。巧妙なんです。
糸井
人の弱いところっていうのを、ほんとによく理解してますよね。
yuriさん
ええ。
糸井
ネットでいうと、ぼくはあれですよ、すごいのがありました。なんか、クリックしてたどっていったら、アダルトサイトみたいなところから、「あなた、いっぱいお金を払わなきゃならないです。払わないとこの画面は消えません」みたいなのが、ばーんと出ちゃった。
yuriさん
アダルトサイト。
糸井
ヌードとかそういうんじゃなかったんです。知ってる有名人のスキャンダルがあった。
yuriさん
ああー、はい。
糸井
「えっ? そんなことがあったの?」ちょっとくわしく読みたいって、いくつか進んでいったら‥‥ばーん。
yuriさん
なるほど。
糸井
もう、ほんとに、嫌で嫌で。これ、払っちゃったらいいのかなぁって。
yuriさん
考えますよね。
糸井
考えました。
でも結局は払わずに放っておいたらなんでもなかったんですけど。ばーんと出たやつも会社の人に消してもらったし。
でもねぇ‥‥「もう払っちゃおうかな」っていうのは、ぼくの中にあったひとつのだまされるパターンなわけで‥‥。
いや、ありますよ、誰しも。

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yuriさん
よくお話しをさせていただくんですが、全国の消費生活センターに寄せられる相談で、たぶんいちばん多いのが‥‥
糸井
アダルトサイトですか?
yuriさん
はい。
老若男女から相談があります。小学生や中学生が、かわいそうなくらい悩んでしまうこともあります。やっぱり、そういうことへの興味っていうのは、インターネットが普及したひとつの大きな理由だったわけですから、たくさんの人に有効な手口になるんです。
糸井
‥‥「誰しもだまされる」ですよね。人の弱さっていうのは、自分を見てればよくわかります。
yuriさん
ええ。ですから、だまされた人を笑ってた人にこそ、気をつけてほしいです。
糸井
「わたしに限って」と言ってた人がその穴に落ちるっていうのは、古典のようにあるわけですから。
あと、「笑われたくないから泣き寝入りする」っていうのが怖いですよね。敵がどんどん、やりやすくなる。
yuriさん
‥‥なんで、なんで笑うんでしょう。
糸井
そのベースにあるのって、つまんない「知識偏重主義」みたいなものなのかも。
たとえば、たまたま自分は教育を重んじる家に生まれて、勉強をする機会があったから、ある種の知的なことに触れて育ってきた。「だからそういう人がいちばん偉い!」みたいな。
そうじゃない人は、山ほどいるわけですよ。親も勉強してないし、子どもも同じように勉強しないで育ったけど、「いい家族」をつくっている人は山ほどいます。
それを「無知だ」とか、「無教養だ」とか、「そんなことも知らないのか」
っていうような流れが、こう、ぼくは、なんというか‥‥今の世の中の大きなだめなところだと思ってるんです。
で、そのことと、さっきのyuriさんの話は、とても近いところにあるような気がして。
yuriさん
はい、はい。
糸井
やっぱり、「笑う」ですよね。「知らない」を「笑う」。
yuriさん
怖い。
糸井
怖いですね。

(つづきます)

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第6回 消費生活センターとタッグを組む───小豆島の平林有里子さんと対談編(3)