- 飯田さん
- 高齢者トラブルのもうひとつのトレンドに、
「送りつけ商法」というものがあります。

▲右から、国民生活センターの飯田さんと生方さん。 - ほぼ日
- 「送りつけ商法」。
- 飯田さん
- 3、4年前にピークだったのが、カニの送りつけです。
- ほぼ日
- あ、「カニカニ詐欺」!
3、4年前のことなんですね。
それはほんとにカニを送ってきて、その代金を払えと、そういうものだったんですか。 - 飯田さん
- そうです。ただ基本的に、受け取る必要も払う必要もないんです。
- ほぼ日
- いくら払えと言われても、放っておけばいい。
- 飯田さん
- 申し込んでいないので。
ただ、食べちゃった場合は、ちょっと消費してしまったことになるので、業者から「買ったと見なす」と主張される可能性が出てきます。
ですから、食べないのがいちばんですね。 - ほぼ日
- でも、お年寄りは食べちゃいませんか。
- 飯田さん
- そうかもしれませんが‥‥ただですね、私は実物を見たことがないんですけど、そうとうボロボロの商品価値のないカニが送りつけられてくるようです。
- ほぼ日
- はあーーー。
いろんな意味で、ざんねんな話ですね‥‥。 - 飯田さん
- もう、カニのトラブルはすくなくて、いま、送りつけ詐欺で被害が大きいのは健康食品です。
- 生方さん
- たとえば、こういうものですね(箱を出す)。
- ほぼ日
- これは‥‥?
- 生方さん
- お見せできない部分にテープを貼っていますが、「グルコサミンと高麗人蔘」が入っているという健康食品です。
- ほぼ日
- これが送りつけられてくる。
- 飯田さん
- ええ。高齢者に。これがだいたい3万円とか4万円くらいです。
- ほぼ日
- やはりお年寄りにですか‥‥。
- 飯田さん
- 代引き配達で送られてくるのが特徴なんです。民間の配送会社には「代金引換配達」というものがあります。配達の際、代金と引換に荷物を渡す、そのシステムを利用するんです。
たとえば、この健康食品を代引き配達で送りつける。代金は3万円とか4万円。手元になくはないお金なので、支払ってしまう。
- ほぼ日
- はい‥‥。
- 飯田さん
- あるいは、事前に電話がかかってきて、「あなた以前に注文したでしょう」とか、「定期購入してるでしょう」などと言われる。
高齢者の方は覚えがないんだけれども、「じゃ、送りますから」と言われて「ああ、買わなきゃいけないのかな」となってしまう。
脅されて、恫喝されて、「買います」と言わされることもあります。一方的に送りつけて、3万円なり4万円を払わせる。しかも、1度払った人に対しては、いろんな業者がまた‥‥。 - ほぼ日
- そこでも2次被害が。
- 飯田さん
- はい。
- ほぼ日
- うーーーん‥‥。
あの‥‥いままでうかがった詐欺的商法の発生率は、都内と地方では、どうなんでしょうか。 - 飯田さん
- 都内と地方ですか‥‥。
手元に資料がないので正確ではないのですが‥‥そうですね、基本的には人口比に対応していると思います。 - ほぼ日
- 人が多いところに被害が多い。
- 飯田さん
- 関東、中部圏、それから近畿圏ですね。やはり都市は絶対数が多いので相談件数も多いように思います。‥‥ただ、人があまり住んでいないところの高齢者も、確実に狙われています。
「まわりになにもない、交通の便も悪い、悪徳業者はこんなところまでわざわざお金を回収しに行くのか‥‥」と思うケースがあります。
- ほぼ日
- だます側の立場ならば、さみしい場所のほうがヒット率が高いのでは?と思ってしまいます。タンス貯金もありそうだし。
- 飯田さん
- そうですね。
「こんな田舎に都会で流行りの詐欺がくるわけない」という油断はできませんね。 - ほぼ日
- ‥‥どうすればいいんでしょう?
「注意してください」というアナウンスって、若い人には届きやすいと思うんです。ぼくらもインターネットで伝えられますから。
でも、自分の親や、おじいちゃんおばあちゃんは、今日うかがったお話をどうやって知ればいいんでしょう‥‥。 - 飯田さん
- それについては、まさに、われわれがいま、いちばん悩ましいところです。
- ほぼ日
- まめに実家に電話をするとか、そういうことなんでしょうか。
- 飯田さん
- そうですね。ご自分でできることとしてはそれはあると思います。
「最近へんな電話ない?」と聞くようにする。
- ほぼ日
- はい。
- 飯田さん
- あと、5年ぐらい前からいろいろな地域で取り組みが進んでいるのは、見守り活動ですね。ひとり暮らしの高齢者の方が、やっぱり狙われるんです。
ですから地域の介護の方であるとか、地域包括支援センターの方などが連携して、そのひとり暮らしの方に不審な点がないか、妙な契約書や、高価そうな健康食品がないかを‥‥ - ほぼ日
- 見守る。
- 飯田さん
- この取り組みが進めば、被害を早くキャッチできるようになります。早く気づけば、それを消費生活センターにつなげるようになる。
- ほぼ日
- やはり早さが大事。
- 飯田さん
- そうです。
- ほぼ日
- 早く気づいたときに、みんながすぐに「消費生活センター」を思いつく必要がありますよね。それがもっと一般的に広がればいいと思うんです。
たとえば、山形に両親がいる東京の人だったら、山形の実家の近くにある「消費生活センター」の電話番号をお母さんに渡して、「何かあったらここに電話して相談して」と言っておくようにするとか。 - 飯田さん
- いま、全国統一のナビダイヤルがあるんです。
「消費者ホットライン」という、誰もがアクセスしやすい相談窓口として設けたものです。その番号をご紹介いただけると。 - ほぼ日
- もちろんです、紹介させてください。

※消費者ホットライン(全国共通)をご利用の際は、
こちらをよく読んでからダイヤルを。
- ほぼ日
- この番号を、実家に教えればいいわけですね。ちなみに、当事者じゃない人が相談することもできるんですか。
- 飯田さん
- できます。
- ほぼ日
- 「うちの母親がどうも‥‥」という相談でも大丈夫ですか。
- 飯田さん
- 大丈夫です。
- ほぼ日
- 母親が嫌がっていても、大丈夫ですか。
「詐欺じゃない、あの人はいい人なんだ」って。 - 飯田さん
- ああ、そのケースはけっこう多いですね。ご高齢の方には被害者意識がないというのもありまして、業者さんと仲良くなってしまっている。
‥‥ちょっと微妙ですが、ご相談を受けることはできます。 - ほぼ日
- アラートは出せるということですね。
- 飯田さん
- まずは事実を伝えていただくことからです。いずれにしても、早くから知っていることが大事ですので。
- ほぼ日
- ‥‥わかりました。
きっとまだまだ知るべきことはあるのでしょうが、
お話をうかがって、だいぶ不安が減った気がします。 - 飯田さん
- そうだといいのですが。
- 生方さん
- お役に立てましたでしょうか。
- ほぼ日
- もちろんです、ありがとうございました。
飯田さん、生方さん、
お忙しいなかありがとうございました。
最後に「相談の現場」を見学させていただいてから、
われわれは「国民生活センター」をあとにしました。
この現場には、年間で1万件くらいの相談が寄せられるそうです。
おふたりが繰り返しおっしゃっていたことばを最後にもう一度。
「すこしでもおかしいと思ったら、すぐに相談の電話をしてください」
以上で、国民生活センター取材編を終わります。
(平林有里子さんと対談編へつづきます)
「相談したいことがあるときは」
ひとりで悩まず、相談しましょう。相談は基本的に「電話」で行います。消費者からの相談を受け付ける国の機関、
「国民生活センター」のサイトはこちら。一方、「消費生活センター」とは、
消費者保護を目的とした都道府県・市町村の行政機関で、
日本全国にたくさん設けられています。
「国民生活センター」と「消費生活センター」は
互いに協力し合い、消費者対応を行っています。
相談をしたい場合はどちらでも大丈夫。お住まいに近い機関へ連絡をしてみましょう。「消費生活センター」への相談方法は、
こちらのページでくわしく説明されています。
「国民生活センター」の相談窓口は、
こちらからどうぞ。








