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ほぼ日手帳

糸井重里

・学校もやめちゃったし、仕事もなくて、
 コピーライターの専門学校というところに、
 これはいけそうだと思って入ったけど、
 なんのあてもありゃしないし、外は寒いよね、
 というような二十歳のぼくには、
 当時の12月あたりの浮かれたにぎわいが、
 ほんとに淋しかった。

 街には、どこにスピーカーがあったのか、
 ひっきりなしにクリスマスソングが流れてて、
 おしゃれな洋服の店や洋菓子の店なんかは、
 商いのテーブルを道路にまで出していて、
 赤い服着て、大きな声で通行人たちに呼びかけていた。
 といっても、これは、ぼくの個人的な記憶で、
 そんな絵に描いたようような師走のにぎわいが、
 ほんとにあちこちに溢れていたかとよく考えれば、
 そういうものでもなかったのかもしれない。
 記録映像でも、撮りたいところばかりを、
 集中的に強調して撮るからね
 (お寺とか和菓子屋とかはどうしてたのか)。
 そして、二十歳のぼく自身、体重53キロね。
 寒がってた、とにかく雑に世間を見ていた。
 街中の他人は幸せだと思ってたよ。
 特に、大切にする家族とか恋人のいる人ね。
 ケーキを切り分けたり、サンタさんを待ったり、
 マフラー巻いて手をつないで歩いたりね。
 俺は、そうじゃない、という感じがあって、
 怒ったりはしないけど僻んでた、淋しかったのね。
 あの時代に比べると、いつのまにかだけど、
 ずいぶん12月は静かになったものだ。
 鈴の音しゃんしゃんいってないし、
 山下達郎もそれほどは聞こえてこない。
 金紙銀紙のキラキラ星だって、あんまり目に入らない。
 景気が悪いからだよ、というものでもないな。
 あんなに盛り上げなくても、いいか‥と、
 みんなが思ってやってきたのかもしれないね。
 みんなが、それぞれにたのしく、さみしく、
 クリスマスイヴを過ごすんだよね。

今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
二十歳のぼくは、きっとまだ、師走の街を歩いているんだよ。

昨日のコラムを読み逃した方はこちら。

12月27日(土)より、
更新時間は毎日11時になります。

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