ダ・ヴィンチ×ほぼ日刊イトイ新聞共同企画 中島みゆきさん、おひさしぶり。 ややこしくておもしろい、歌をつくるということ。
糸井重里が、ほんとうにひさしぶりに、 中島みゆきさんに会いました。 知らない仲ではないのですが、 わりとちゃんとした話をするのは、 「思えば初めてのことだった」そうです。  ニューアルバム『I Love You, 答えてくれ』が完成し、 コンサートツアーの準備をはじめたみゆきさんと、 歌うこと、見ること、聞くこと、 歌をつくるということ、などについて、 ふたりでたくさん話しました。 なんどもなんども大きな声で笑いながらの、 90分の記録、どうぞたっぷりおたのしみください。
 
  アスリートとして自分を鍛えながら。
  どうしてそんなに子だくさんなの?
  ヴィーナスは地上にいる。
  試行錯誤ばっかりです。
  同じタイプの飛ぶ力。
  俺の何でもなさも捨てたもんじゃないぜ。
  先端を走っていくよりも。
  聞くことを大事にした人生。
  もう壊れようのないものを。
  そのときは迷わずひらがなを。
  言葉に内包されたメロディ。
  人のあいだに、つなぎ目がある。
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第1回 おひさしぶりです、みゆきさん。
糸井 (部屋に入りながら)
こんにちは〜。
今日はよろしくおねがいします。
中島 糸井さん!
お暑いなかありがとうございます。
どうぞ、どうぞ。
糸井 こんな立派なところで。
(対談場所はYAMAHAさんの重厚な会議室。
 立派なソファがローテーブルを囲んでいます)
中島 どういうふうに座ったら話しやすいですかね?
糸井 並んで座りますか。ペアシートとか。
中島 けんか腰になるといけないですね。
糸井 近すぎると、つい、けんかしちゃう?
中島 なるべく遠くして、
なんか、彼方で怒鳴りあい?
糸井 いやいや(笑)! じゃあぼくがここに。
(長いソファの端に座る中島さんのすぐ近く、
 L字になるように、ひとりがけソファに座ります)
これ、おみやげです。わが社の出版物なんです。
(『谷川俊太郎質問箱』をお渡ししました)
中島 あら、谷川先生の!
ありがとうございます。
うれしいな、本をいただくのって。
糸井 ちょっと自信のある本ができました。
かわいい本ですよ。
中島 (本をめくりながら)絵がいろいろ入ってる。
紙質、いいですね。
いきなりそういうことを誉めるか(笑)。
糸井 意外と元手、かけちゃうんですよ(笑)。
中島 ねえ。これじゃざっくり
儲かんない会社ですよね(笑)。
糸井 ええ、まあ、そうかもしんない。
中島 (大きなかばんから本を出して)
糸井さんのこの『小さいことばを歌う場所』、
読ませていただきました。
本の判型は小さいけど、中身はでっかい。
糸井 ありがとうございます!
中島 もうちょっと内容を小出しにすれば、
何冊にもなったのに(笑)。
こんなにてんこ盛りぎっしり入れちゃって、
もったいない。
詩だったら、上中下巻になりますよ、これ。
糸井 そうかあ。
でも、ぼくは詩人じゃないんだ、肩書きが。
中島 いや、つけりゃつくもんですよ、
肩書きなんつぅもんは。
糸井 その肩書き、欲しかったぁ(笑)。
この流れだと、ぼくもみゆきさんの
ニューアルバムを褒めなくちゃいけないですね。
中島 うふふ。お気づかいなく。
糸井 それにしても(と見回して)、今日はみな
(「ダ・ヴィンチ」と「ほぼ日」の面々のことです)
緊張しまくってて。
中島 あら、まあ?
糸井 どうしてそういうファンが多いんですか?
あなたには。
中島 ん? そうなんですか。
糸井 なんというか、恐れ入る人たちが。
中島 どうしてでしょうかねぇ。
糸井 ほんとにすごいね。
“出なさ”ですかね。
出過ぎないのがいいんですかね。
中島 最近は結構出てますけどね。
糸井 うーん、出てないかっていうと、
出てるよっていうふうにも言えるしね。
でもみんなと同じように
ぼくもちょっとそういう気持ちがありますよ。
尊敬申し上げてるって意味では。
カチカチにはなりませんけど(笑)。
中島 先生! 何をおっしゃるんですか。
そんなあ(笑)。
糸井 いや、やっぱり、あのときに聞いた、
みゆきさんのあの一言は
ずっと残ってる、みたいなのは、
ぼくの中にもありますもん。
例えば、
「旅っていうのは
 帰ってくるから旅なんだ」とかさ。
中島 そんなこと言いました?
わたし、言った端から、
忘れるたちなんです(笑)。
糸井 ぼくもそうなんですけど。
中島 ははは。
糸井 歌詞はどうですか?
ぼくらは、歌詞の中の言葉を
断片的に覚えているけど、
書いた張本人のみゆきさんは、
全歌詞を全編覚えているものですか。
中島 とんでもない。忘れます。
だから、コンサートのリハーサルは、
まず歌詞を覚えるところから
始めなきゃなんない。
糸井 素敵ですよ、それは。
だって、フォルムとしてではなく、
その都度、新たに歌い直すってことだから。
中島 10年前に書いた歌詞でも、
今その言葉を歌うとしたら、
どういう気持ちかな、
ってところから取り組まないと、
歌えませんものね。
糸井 そうか、“歌手・中島みゆき”はもう一人いて、
その人は曲を作る人の助けになる場合もあるし、
邪魔する場合もあるとさえ言えるんですね。
中島 そうですね。
糸井 作り手からすると、
「お前ちゃんと歌えてないじゃないか!」とか?
中島 あ、それはあります!
糸井 あるんですか。
中島 はい。
糸井 どっちの自分が勝つんでしょう?
 

(つづきます!)

文/藤井徹貫+ダ・ヴィンチ編集部+ほぼ日刊イトイ新聞
アーティスト写真/田村仁
協力/株式会社ヤマハミュージックアーティスト
2007-09-06-THU
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