──NHKの方にうかがいました #1 災害への備えは、怖がりすぎずにできる範囲で
糸井 きょうはありがとうございます。
こちらが、NHK生活情報部の‥‥。
山下さん 山下と申します、よろしくお願いします。
糸井 よろしくお願いします。
いつもツイッターを拝見しています。
山下さん ありがとうございます。
糸井 それと、もうひとかたは広報局の‥‥
お名前は非公開なんですよね。
「PRさん」という呼び方でよろしいでしょうか。
PRさん はい、それでかまいません。
糸井 PRさんは、
男性か女性かも非公開で、
お写真も、NGなんですね。
PRさん すみません、こちらの都合で。
糸井 いや、たいせつなことです。
だって「おなじみの時計のアイコン」ですから、
そりゃあ、男とか女じゃないですよ(笑)。
PRさん はい(笑)。
糸井 こんなにすてきなルックスなのに
お写真を載せられないのは非常に残念です。
PRさん そんな(笑)。
糸井 じゃあせめて、
PRさんがお話しされるときには、
「時計のアイコン」を
ときどき載せるようにしましょう。
PRさん ありがとうございます(笑)。
糸井 時計がしゃべっている感じで。
PRさん はい。
でも、どうかあまりお気遣いなく。
私はきょう、付き添いのようなものですので。
糸井 付き添いですか。
PRさん メインは生活情報部さんなので。
(山下さんに)ですよね?
山下さん うーん‥‥お役に立てるかどうか。
糸井 それはもう、かならず勉強になります。
ぼくは、なんにもしらない人間の代表ですので。
そういう人でも理解できる、
簡単に役立てるページを目指したいんです。
誰でもできることを
1個ずつ確認していくようなイメージで。
山下さん なるほど、はい。
糸井 まず先にうかがっておくべきこととして、
「東京で大きな地震が起きる可能性がある」
と言われていますよね。
山下さん はい。
糸井 それは、かなり高い確率で
「起きる」と語られているようで。
山下さん そうですね。
糸井 具体的にどういう数字でしょう?
山下さん 中央防災会議」という
国の機関の発表によりますと、
マグニチュード7クラスの首都直下型地震が
今後30年以内に70%起こる、と。
糸井 30年のあいだに70%。
山下さん はい。
東京湾北部が震源ですと、
1万人以上が亡くなるという想定の、
かなりの大規模災害です。
糸井 地震に対する意識が高まっているはずの今でも、
それだけの人が亡くなってしまう想定なんですか。
山下さん 「夕方6時くらいの時間で冬場」という設定で
シミュレーションしているので
このきびしい数字が出たのだと思います。

あとは、関東で650万人、
東京都だけでも390万人の
帰宅困難者が出ることも想定されています。
糸井 なるほど。
スキャンダラスに言うつもりはなくても、
いまうかがった数字にはすでに
「準備しておきなさいよ」
ということばが含まれてますよね。
山下さん そうですね。
PRさん そういう数字だと思います。
山下さん こうした状況のなかで、
個人として、企業として、
どういう備えをしておくべきなのか。
きょうのお話はやはり、
そのあたりになるのでしょうか。
糸井 そうですね。
なんていうんでしょう‥‥
最悪の事態をぜんぶ重ねて
怖がったり脅かしたりするんじゃなくて、
落ち着いて情報を理解する。
そういう人として
周囲に多少の影響を与えられるようになりたい
というのが、いまの気持ちなんです。
山下さん はい。
糸井 地震があった日の翌々日くらいにぼくは、
「余震はメインの地震よりも
 小さいという法則があるそうです」
っていうことを書いたんですよ。
たまたまそういう情報を耳にしたので。
そしてらみんながすごく安心してくれた。
まあ、
「もっと大きな地震がきたら責任取れるのか」
という反発もありましたけどね。

でもあのとき、
余震で揺れながらみんなが生きているときに、
「不安」がつくり出すものって
ちょっとデカすぎるだろうと思ったんです。
それで「余震は小さくなっていくそうです」
と書いたら、読者たちがスッと吸収してくれた。
あの落ち着き方はよかったな、と思って。
山下さん わかります、なるほど。
糸井 NHKさんレベルでの「怖がり方」を
ぼくは目指しているんです。
「安心しなさい」と言うわけではなくて、
もちろん不安をあおるわけでもない。
「こっちも落ち着いて報道をするから、
 落ち着いて受けとめてください」というような。
そういうのを目指しているんですよ。
山下さん ありがとうございます。
糸井 で、どうでしょう。
話をすこし戻して、
30年以内に70%というなかで、
どういう姿勢でいるべきなのでしょうか。
山下さん 糸井さんがおっしゃるように、
ずっと怖がり続けているというのは、
人間には無理ですよね。
糸井 無理ですね。
山下さん ある程度の備えは必要だと思います。
「災害に備えて準備をしておきましょう」
というメッセージは当然、必要です。

ただ、実際問題、
ずーっと臨戦態勢で生活していくのは
現実的に無理だな、と私は思っています。
ある程度、適度に怖がりながら、
日常を徐々に取り戻していくのが、
震災後の日本なのではないかと、
そういうふうに感じています。
糸井 それは、NHKの人として、
そこまでしゃべれることなのでしょうか。
山下さん ‥‥どうなんでしょう。
PRさん いいんじゃないでしょうか、べつに。
糸井 やっぱり、個の判断がありますよね。
ツイッターでも、
結局は個人で決めていくしかないですもんね。
山下さん ええ、震災のときにはとくに。
NHK_PRも、
NHK生活情報部も、
独自の判断で災害情報を扱ってましたから。
糸井 それぞれが、自分の頭を使わざるをえない。
山下さん ツイッターでは、そういう状況でした。
PRさん そのつど上司の判断をあおぐわけには
いかなかったので。
糸井 ですよね。
個人の判断でやっている感じは
読んでいてよくわかりました。
で、震災直後ではない現在も
そのムードは続いてますでしょ。
あきらかに、個人が入ってますよね。
PRさん 入ってますね。
糸井 ナマな人間がそこにいるって思えるんです。
ですから今回も、
「NHKさんをお呼びしよう」
ってなったときに
「人が来る」って思えたんですよ。
山下さん ああー。
糸井 昔だったらきっと、
「パンフレットみたいな人がくるのかな」
って思ったはずなんです。
PRさん (笑)
糸井 「こちらを読んでおいてください」みたいな。
山下さん 昔なら、そうだったかもしれないですね(笑)。
糸井 それがいまや、NHKさんと、
人と人とで情報を共有できる。
いや、これはすごいことだなあと思って。
山下さん たしかに震災のことがあって、
個人の判断で動きはじめた人間は
けっこういると思います。
糸井 では、その個人の判断で動いたことで
得られた情報といいますか、
「震災への備え」について
具体的なお話をうかがえますでしょうか。
山下さん わかりました。

(株)東京糸井重里事務所の災害対策【ポイント1】

□マグニチュード7クラスの首都直下型地震が
 今後30年以内に70%の確率で起きることを
 落ち着いて知っておく。

□その大きな地震への備えは、必要。
 ただし、怖がりすぎず、できる範囲で。

(つづきます)

2011-06-10-FRI
これまでの更新
NHKの方にうかがいました #1
災害への備えは、怖がりすぎずにできる範囲で
2011-06-10-FRI
NHKの方にうかがいました #2
火災へのこころがまえと、お風呂の水を溜めておくこと
2011-06-13-MON
NHKの方にうかがいました #3
飲み水と食べものは、どのくらい備えておくべきか
2011-06-14-TUE
NHKの方にうかがいました #4
たとえば「帰宅」についてどうするか、会社でシミュレートしておく
2011-06-15-WED
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安否確認のルールについては、会社でも家庭でも
2011-06-16-THU
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災害に備えて、備えておきたいアイテムについて
2011-06-17-FRI
NHKの方にうかがいました #7
災害に備えて「なんとなくポーチ」と「なんとなくボックス」を
2011-06-20-MON
NHKの方にうかがいました #8
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2011-06-21-TUE
(株)東京糸井重里事務所の実践編 ♯1
まずはポイントを振り返り、その話し合いを重ねました。
2011-07-13-WED
(株)東京糸井重里事務所の実践編 ♯2
安否確認の方法について、話し合いました。
2011-07-14-THU
(株)東京糸井重里事務所の実践編 ♯3
備えておきたいアイテムを、できる範囲で準備しました。
2011-07-15-FRI