宮本茂と糸井重里「ピクミンをめぐる対談」

 

京都市、ホコタテ町、任天堂本社。
ピクミンの生みの親・宮本茂さんのもとを
darlingが訪れました。
宮本さんの新作「ピクミン」を軸にして、
さまざまな方向へとテーマは広ったこの対談、
じつはのべ4時間、オフレコを入れると7時間!
じっくりと話をしたなかから、
髄のような部分を抜粋して、
これから何回かにわけてお届けします。

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糸井 宮本さん、嬉しい? 今回の「ピクミン」。
宮本 そりゃあうれしいですよ!
いままで思惑はいっぱいあったけど
やっとカタチになったわけだから。
糸井さんに、
「マリオの代わりのキャラクター作りなよ」
って言われたこともありましたね。
キャラといえば、ピクミンも最初から
この姿だったわけじゃなくて、
企画スタートから
何案かの検討を経ています。
で、「よし、このキャラクターで行こう!」
となってから、仕様の決定に
けっこう時間がかかりましたよ。
糸井 ほんとの理想から言ったら
その絵が決まって「これでできるはずだ」って
なったら、あとはチームに任せて、宮本は去っていく。
……っていうことなんでしょうね。
宮本 そうですね……。
キャラが決まった時点でも
仕様が固まってたわけじゃないですしね。
でも、かなり現場のレベルは高くなりましたよ。
ちょっとつまづいているところを直すだけで
あとは動きますからね。
今回、僕が(制作に)入ったと言いますけれど、
たしかに“濃く”入ったんですが
期間的に“ものすごく長く”は入っていないんです。
ふつう「入る」っていったら、
初期三ヶ月入り、中盤二ヶ月入り、
終盤三ヶ月入り、とかなるんですけれど
ピクミンは、最初ちょこっと入って、中盤と終盤に
それぞれ一ヶ月ずつ入ったという感じです。
仕様は書いているんですけれど……
糸井 仕様というのは、ようするに、
宮本さんがやりたかったことで
「ディティールだけど、これだけは入れないと
 僕じゃないんだよな」
という部分ですか?

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宮本 そういうこともあるんですが、
今回はどちらかというと骨組みの部分です。
こういう骨組みが大事なので、という。
そのなかでこれとこれは外さないように、と。
糸井 あるディティールにシンボライズされる
骨組みにかかわる部分というのは
本人じゃなければわからないわけですよね。
宮本 そうですね。
糸井 ピクミンたちが敵のエサになっちゃうとか、
敵を倒すと死んでしまうとか、
主人公のオリマーが失敗したらどうなるのかとか、
そういう「生きる死ぬ」に関するルールというのは
宮本さんのなかにちゃんとあるわけですよね。
それは、宮本さんだけが指示できることなんですか?

宮本 それが、今回は僕ひとりではなかったんです。
ディレクターがいて、その彼と、
そこは、ずれてなかったんですよ。
糸井 それは、すごいな。
宮本 そういうところはずれていなかった。
だから僕の方が、たとえばモニターの意見を聞いて
弱気になると、ディレクターのほうが
「いえ、これで行きましょうよ!」
と強気に言ってくれるくらいだったので、
そこはラクでしたね。
糸井 ディレクターが、すごくいい「叔父さん」のような
役割をしてくれたんですね。
宮本さんが「お父さん」だとすると。

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宮本 どっちが「お父さん」かな?
ディレクターは制作の現場で
「産みの苦しみ」を味わってるし。
糸井 「不時着したロケット」というコンセプトは
最初から? あれは、あとからでしょう?
宮本 ああいうのは「手法」のひとつなんですよ。
それがいちばんシンプルでわかりやすいから
そうしたんです。
糸井 隔絶した社会をつくりたかったわけですよね。
あの世界がよその世界と交流したりすると
えらいことになるわけですよね。
宮本 そうですね。戦略的には
「重厚長大ではなく、シンプルに深いものを作る」
ていう作戦でもあるし
複数の世界が交錯すると、
その分、スタッフに余計な仕事を
いっぱいつくってしまうことになるし。
だからなるべくそういうことはやらないようにしました。
あとね、ゲームもいろいろあるけど
「はじめに世界観ありき」
という作り方もあるでしょう?
でもピクミンは、
「世界観がどーんとあって、
 それと格闘しながらゲームを作る」
というやり方ではない。
ピクミンという遊びの骨組みだけをつくって
それに最適な世界、最低限必要な世界は何か、
ということだけで、つくろうと思ったんです。
だから「素材そのもの」みたいなゲームなんですよ。

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糸井 うん。
宮本 ゼルダなんかをつくったとき、
ムービーとか演出にどんどんとらわれて、
つくる本質を見失うみたいなことになりがちだった
ということを反省点として、
ほんとうにピクミンで必要なことはなんなのかを
見失わないようにしよう、と進めたんです。
だから、人数も、すごく少なくてすんだんですよ。
糸井 えっ。これ、何人くらいでやっているんですか。
50人くらい?
宮本 いや、メインの人たちは……
いい加減に数えたら怒られちゃうかな。
6〜7人なんですよ。
それで、本格的に制作に入って
20名ちょっとくらいですよね。
ほんとうの追い込みになって30人弱。

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糸井 はあ……(感嘆)。
宮本 音楽に何人だとか
エフェクトをつくるのに何人応援しているだとか
そういうふうには増えていくんですけれど
ゲームをつくっているのは、
ほんとに20人くらいなんですよ。
糸井 すごい……。
宮本 だから、ゲームの大きさを、
買った値段の価値として求める人からは
「ゲームのボリュームがちょっと小さい」
とか言われるかもわかりません。
実際は遊べる時間が長いので
気にしていないですけどね。
同じフィールドで二回目・三回目と
違う遊び方をしていくゲームだから。

糸井 実際、遊んでみると、そんなことはないけどね(笑)。
けれども、小さい・大きいというのを
思わせない「なにか」というのをどうするか、
というところですよね。キャラクターの魅力だとか。
前から宮本さんから聞いていたんですけれど、
「違うタイプの、見たことないゲームを作りたい」
と言っていましたよね。
それでムジュラだとか、ああいうことを繰り返してきて、
いま、ここに来たんだ、と思ったんです。
一本のゲームを宮本さんが永遠に作るんだとしたら、
どんどん磨き込めるだろうし、
いろんなふうに広げられるだろうけれど、
広げることじゃなくて、
「私は何をやりたいんだ」というのを
いっぱい持っているというのが、
人間だと思うんです。
時代劇を読めば時代劇の人になるでしょう?
それが、何かのときに、いろんなニュアンスを
自分の中に入れて、新しい栄養をつけては
違う筋肉を鍛えている、みたいな……。
それで、いま、宮本さんは
「ピクミン」に来たんだなあ、という
感慨が、僕には、ありました。

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宮本 なるほど。
ゲームの話ばっかりしてぼくがしゃべっていると
いつも同じ話になるので、
今日はイトイさんに聞いて貰えるから
何が出てくるか楽しみだったんですけれど(笑)。
糸井 ありがとうございます(笑)。僕もぜひ話したいと思って
ここに、来たんです。
僕はピクミンをやってみて
「ゲームの外側がゲームになったんだ」
ということを、思いましたよ。
そしてそれって、じつは、
いま自分の考えていることと同じなんです。
宮本 おお?
糸井 つまり、宮本さんはゲームというものをつくっているけれど、
じつはゲームをやるひとと、つくるひとっていうのは、
それぞれに、じつは、別の世界を持っているわけですよね。
みんなが別の暮らしかたをしている。
それを「合同させる」ことが
いちばん面白いゲームだと思ったんです。
たとえば、さっき、広報のクラツネくんが
「僕のポケットからピクミンのストラップが出ていたら
 下から、コドモの、強い視線を感じたんですよ」
と言っていたけれど、それって、そのことじたいが、
すでに「ゲーム」じゃないですか。
そこのところに、商品にならないゲームというのが
無数に増えていくわけですよね。
そうかと思うと、このゲームの攻略本を
ほぼ日でも連載している
“テレコマン”の永田くんがつくっている。
それもまたゲームなわけです。
そして僕もまた「宮本さんに会いたい!」って
思って、こうして京都に来ている。
みんな自分が意志をもって動いているわけだけれど
「ピクミン」がなかったら動かなかったわけです。
軸になるものとしてね。
そういうふうに、人が心を動かされて
動いてしまう、その“道すじ”をつくってあげることって
僕も、おんなじように、やりたいことなんです。

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宮本 うん。
糸井 僕がいまそう思っているのと、
宮本さんがいま、ゲームを作りながら
考えていることが重なって、
ちょっと、ジーン、って。(笑)
宮本 (笑)。
もちろん、続きます!

*このページで使われている画像は、
すべてCanon EOS D30で
撮影されています。
2002-01-21