
昨年、一昨年とたいへん好評いただいたので、
ことしもやります、年末年始の恒例企画、
「私のほぼ日プレイリスト」。
ほぼ日刊イトイ新聞の膨大なアーカイブの中から、
「音楽のプレイリスト」をつくるみたいに、
おすすめコンテンツを選んでしまうこの企画、
今回の選者は、ほぼ日刊イトイ新聞の読みものを
編集している、10人の書き手の乗組員です。
ということで、3年目のテーマは「自薦」!!
24年のほぼ日ヒストリーの中から、自ら担当した、
とっておきのコンテンツをたっぷりご紹介します。
12/26(月)から1/5(木)まで11日間の毎日更新。
この年末年始に、どうぞおたのしみください。
何かを好きという気持ち。
あけましておめでとうございます。
ほぼ日編集部の藤田です。
今年のプレイリストは「自薦」ということで、
過去に原稿を担当したものの中から、
思い入れのある記事をいくつか選びました。
並べてみると何となく、
「好きなものについて語る」というのが
共通のキーワードかなと思います。
ほぼ日での仕事を通して、
「好き」を極めた人達との出会いが、
いつも新しい扉を開いてくれました。
好きなものがあるって、いいことです。
好きなもののことを考えると、
それだけで心が自由になれる気がします。
みなさまにとって、たくさんの
「好き」が見つかる年になりますように!
作家・林真理子さんと糸井重里の対談です。
私は学生時代から林真理子さんが好きで、
エッセイの中に糸井さんの名前が出てくるので、
かつて林さんが糸井事務所で働かれていたということも、
二人がずっと会っていないということも、
本から得た情報として知っていました。
ほぼ日には糸井さんと著名人の対談コンテンツが多く、
私も何度も原稿を担当させていただいたのですが、
これは入社9年目に、初めて自分から糸井さんに、
林真理子さんと対談してもらえませんか、
と企画を出して実現したコンテンツです。
ちょうど、林さんがご自身の半生を詰め込んだ
展覧会を催されていて、
今しかない、という感じがありました。
対談当日、二人のやりとりが目の前で
見られるなんて、と終始冷静ではいられず、
「私は、この時間、二人の表情を、語られる言葉を、
とにかく焼き付けておかなければ‥‥!」
と、なんだか生き証人になったような思いで
聞き入ってしまいました。
この仕事に関われて、私は幸せだなと思えた
お気に入りのコンテンツです。
入社して4年間ほど、ほぼ日手帳チームに所属していて、
手帳関連アイテム「ほぼ日の路線図」の
コンテンツも担当していました。
そのころ取材で知り合った東京都交通局の方々の
お話がおもしろかったので、東京特集をする際に
「東京の地下鉄」について
改めてインタビューした記事です。
担当の井上さんが、
「さっ、何でも聞いてください!」と、
にこにこしながら取材に応じてくださったんですが、
「地下鉄を作る」というお仕事が好きで
誇りを持って取り組まれている姿に、
私はすっかりファンになってしまいました。
なぜ東京の地下鉄には
都営とメトロがあるのかという話や、
大江戸線はジェットコースターだという話や、
東京メトロさんとラインカラーやアルファベットを
取り合ったり(譲り合ったり)する話が出てきます。
読むと、地下鉄に乗るのがちょっと楽しくなりますよ。
吉本ばななさんが好きで何度か訪れたという
「ミコノス島」についてお話を伺った記事です。
2014年、ほぼ日手帳にギリシャの
ミコノス島をモチーフにしたカバーが登場し、
その関連コンテンツとして作りました。
もともとばななさんの小説が好きで、
ギリシャも好きな私にとって、
どきどきする取材でした。
白壁の迷路のような街、働き者のギリシャ人、
ペリカン、朝まで開いているレストランやバー、
真っ青な空と、強すぎる光、透き通って冷たい海‥‥
ひとつひとつのディテールが、
ばななさんの口から出てくるたびに、
自分が見てきたもの以上に素敵なものが
存在していたように思えました。
このインタビューからずいぶん経ち、
今は、ギリシャの中でもより素朴な島々に
滞在することが多いのですが、
ときどきミコノスに行くと、やっぱり
そこにしかない独特の光と空気があるなと感じて、
ばななさんと同じ過ごし方をしたくなります。
ある日、ほぼ日の社員が見つけたブログが
社内で話題になりました。
それは、一人の女性が自身の
お母さんについて綴ったもので
「うちの母は、たった一人で四国を海外にPRする
活動をはじめた」ということが書かれていました。
その内容がおもしろかったので、誰か取材を‥‥
ということになり、私が伺うことになりました。
それが「すごいお母さん」こと
尾崎美恵さんとの出会いです。
コンテンツの冒頭にある長女えり子さんのブログが
本当に素晴らしいので、ぜひ読んでみてください。
尾崎さんとは、この取材を通して意気投合し、
2016年には第2弾コンテンツ
「瀬戸内海を元気にしたい」を作りました。
ある年の夏休みには一緒に
ギリシャのナクソス島を旅行したのですが、
ものすごい行動力を発揮して、
何度も訪れている私でもまだ行ったことのない場所を
一人でどんどんどんどん開拓していました。
尾崎さんは今日も四国で元気に活動しておられます。
家族や周りの人を人一倍大切にしながらも、
一人でパワフルに行動し、何があっても
人のせいにしないという生き方をしているためか、
尾崎さんからはいつも「自由」の匂いがします。
「手で書くことのおもしろさ」について、
当時『暮しの手帖』編集長だった松浦弥太郎さんと、
『BRUTUS』編集長だった西田善太さんと、
糸井重里が話したトークショーの内容をまとめました。
このとき私は入社一年目で、読みものチームと
手帳チームと商品チームの原稿を担当していて、
忙しさに根を上げそうな日々を過ごしていました。
でも、この鼎談を編集するために
パソコンに向かっていたら、
不思議なことにだんだん元気になっていったんです。
言葉は生きものなので、
三人のプロが語る嘘のないほんものの言葉が、
それを編集しながら組み立てている私にも
エネルギーを分けてくれたのだと思います。
さて、松浦さんと西田さんには、
確認のための原稿を事前にお送りしたのですが、
その日のうちに、お二人とも的確な修正と
コメントをつけて返信をくださったんです。
締切は数日先であったにも関わらず、です。
そうか、すごい人ほど、何事も後回しにしないんだ、
こんなすごい人たちに少しでも近づきたい、
と強く思ったのを覚えています。
「ほぼ日のにほん茶」で
お世話になっているお茶屋さんが、
片桐はいりさんをご紹介してくださって
実現したインタビューです。
幼いころから家族にお茶をいれてあげるのが
好きだったというはいりさんが、
お茶にまつわる家族との思い出を語ってくださいました。
後半に、「気のせいはない」という言葉が出てきます。
はいりさんが旅先で出会ったお茶屋さんから
聞いた言葉ですが、
改めて考えてみると物事の真髄を捉えていて、
良いことも悪いことも、まず自分の感覚を
肯定することが大事だということです。
おいしいものはおいしい。理屈はいらない。
お茶を飲みながらそんな話を
さらっとしてくださるはいりさんが
とってもかっこいいです。
「平成レトロ」提唱者の山下メロさんに、
各家庭に眠っているファンシーなグッズを
鑑定してもらうという投稿企画です。
そもそも山下メロさんってどういう人?
と思われた方は、メロさんについてたっぷり
ご紹介している第1弾コンテンツをご覧ください。
メロさんは、バブル時代に生まれた
ファンシーなグッズを「保護」するため、
全国津々浦々をまわっておられ、そのため、
地元の人以外誰も知らないようなエリアや
その歴史に大変詳しく、お持ちの情報量が
半端ありません。そのためお話がとってもおもしろい。
メロさん、底知れない可能性を秘めていて、
これからどんな活動をされるんだろうと
わくわくしてしまいます。
ぜひ、メロさんの今後にも注目してください。
毎年恒例「猫の日(2月22日)」の企画で、
この年は、香川県にある
丸亀市立猪熊弦一郎現代美術館に行って、
画家・猪熊弦一郎さんについてお話を伺ってきました。
猫の日の取材なので、猪熊さんがいかに猫好きだったか、
というのがメインテーマなわけですが、
実は本当に読んでいただきたいのは、
第3回「芸術は大衆のもの」以後の、
猪熊さんのアートへの考え方が語られている部分です。
なぜ、駅前に美術館を建てたか。
なぜ、「現代」美術館である必要があったのか。
なぜ、建物の外壁に馬の絵が描かれているのか。
学芸員の古野さんは、まるで今も
隣に猪熊さんがいるかのように、猪熊さんの
生活スタイルやものの見方を伝えてくださいました。
ご本人はいなくなっても、その思想が
「受け継がれていく」ということの凄さ。
言葉の意味は知っていたけれど、
本当はこういうことなんだ、と実感し、
芸術家の理想形を見たように思いました。
自薦ということで、
私の「好き」を押し売りするようなコンテンツを、
そっと混ぜてしまいました。
私はギリシャという国が好きで、このコンテンツを
作った時点で10年以上現地に通っていました。
ギリシャには猫がたくさんいて、
かわいいのでつい写真を撮ってしまう、
携帯やデジカメにたくさん溜まっている、
という雑談をしていたら、
それ「猫の日」のコンテンツにしたら?
と同僚や先輩に言われて、作ったページです。
ちょうどこの年は、編集部の全員が一人ひとつ、
猫にまつわるコンテンツを作ることになっていました。
猫の日のお祭り企画とはいえ、自分が好きなものを
こんなふうに載せていいなんて、
ほぼ日の自由度がいかに高いか、ということですね。
これ、順番にスライドショーを見ていくと、
ちゃんと100匹いるんですよ。
しかも調子に乗って第2弾「ギリシャの猫2」も
作ってしまったんです。
同僚たちとボードゲームを楽しんでいたら、
どんどん夢中になり、
最終的に世界大会で2位になってしまったという、
また自分の趣味で恐縮です、というコンテンツです。
日本大会、世界大会を通して、
ボードゲームが好きで好きで仕方ない、という
おもしろい人たちにたくさん出会いました。
ラトビア、ポーランド、ベルギーにも行けました。
ここに出てくる同僚たちのことを、
私は仕事仲間というより、
最高のゲーム友達だと思っていますし(いいのか)、
業務後に友達と練習しなきゃと思うと、
仕事もはかどるし、素晴らしい日々でした。
トップページのメインビジュアルには、
自分の写真は恥ずかしいので、大勢で
ゲームをしている写真などを使ってくださいね、
と言っていたのに、デザイナーのみちこさんが、
「ふふふ、まかせて」という感じで、
私とゲーム作者の写真を、どどん!
とでっかく使ってデザインしてくれたのも、
なんだかんだで、うれしい思い出です。
さて、最後に私事ですがご報告です。
1月末をもって、私はほぼ日を
退社することになりました。
もともとほぼ日のコンテンツが好きだった私は、
2011年8月に読みものチームの
中途採用コンテンツを見て、
何が何でもこのメンバーの一員になりたいと願い、
応募して、幸運にも入社できました。
毎日が刺激に満ちていて、
ときにつらくて、でもうれしい瞬間もたくさんあって、
すべてが貴重な経験だったと思っています。
これまで記事に感想をくださったみなさま、
イベントなどで声をかけてくださったみなさま、
いつも励みになっておりました。
もう私はだめだーっと思ってしまったとき、
過去にいただいたメールを読み返して、
いつも元気をもらっていました。
この場を借りてお礼申し上げます。
11年間、本当にありがとうございました。
みなさまにとって、あかるく楽しい一年になりますように!
今後とも、ほぼ日刊イトイ新聞を
どうぞよろしくお願いいたします。
(つづきます)
2023-01-04-WED
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イラスト&タイトル:あーちん
あーちん
2002年生まれ。9歳のとき、お母さんのすすめで
「ほぼ日マンガ大賞2012」にエントリーし、
約1000通の応募のなかから見事入選。
小学生漫画家として、『くまお』の連載をスタート。
初の単行本『くまお はじまりの本』を出版。
2年半の連載の後、小学校卒業をきっかけに、
『くまお』は246回で終了。
続く、中学時代は、好きなたべものを描く
『たべびと』を連載。
終了までに144品のたべものを描きあげた。
現在、日本の北のほうで、大学生活エンジョイ中の20歳。