
昨年、一昨年とたいへん好評いただいたので、
ことしもやります、年末年始の恒例企画、
「私のほぼ日プレイリスト」。
ほぼ日刊イトイ新聞の膨大なアーカイブの中から、
「音楽のプレイリスト」をつくるみたいに、
おすすめコンテンツを選んでしまうこの企画、
今回の選者は、ほぼ日刊イトイ新聞の読みものを
編集している、10人の書き手の乗組員です。
ということで、3年目のテーマは「自薦」!!
24年のほぼ日ヒストリーの中から、自ら担当した、
とっておきのコンテンツをたっぷりご紹介します。
12/26(月)から1/5(木)まで11日間の毎日更新。
この年末年始に、どうぞおたのしみください。
最近あまり読みもの記事を
読んでない人に。
こんにちは。編集部の田中です。
最近、ネット上の読みもの記事って読んでますか?
ぼく自身は好きで相変わらず読んでいますが、
それでも最近は動画にも時間を使うようになって、
前とはちょっと読み方が変わってきた気がします
(わざわざ面白い記事を探して読むことが、
前より減ったような気がします)。
個人的な感覚ですが、多くの人にとって
「読みもの記事をじっくり読む」ハードルが、
前より上がっているように感じています。
なので今日はそんな
「最近あまりネットの読みものコンテンツに
触れてないなー」という方に、
「それでもこれはおすすめですよ!」
といったものを、自分の担当コンテンツのなかから
6つほど選んでみました。
ぼく自身が人文系や旅の話題が好きなほうなので、
そういったものが多いですが、
なにか「あ、これは読んでみよう!」と思える
記事との出合いになれば、嬉しいです。
1
『13歳からの地政学』
田中孝幸さん三部作
「最近テキストコンテンツを読んでない」
という人向けに、いきなり三部作かい‥‥
という感じですが、
選んだ理由はロシア・ウクライナの話だから。
新聞記者であり、ベストセラー
『13歳からの地政学』の著者でもある
田中孝幸さんが、国際情勢の見方のヒントを
語ってくださっています。
順番は、ほぼ日掲載順のこちらがおすすめ。
【1】打ち合わせの話を、先出しで。(糸井重里とのトーク)
【2】新聞記者たちの雑談。(経済記者の高井浩章さんと糸井との鼎談)
【3】未来のぼくらが戦争を起こさないための、地政学。
(「ほぼ日の學校」田中さんの授業のテキスト版)
田中孝幸さんは、若いときに
ボスニア戦争を現地で体験されていて、
戦争のむごさやつらさを
本気で感じていらっしゃる方。
不幸を防ぐためには、
「誰かひとりがものすごく詳しいことより、
普通の人みんなが正しい知識を
知っておくことが大事」と考えていて、
伝えるための努力を惜しまないんですね。
だから田中さんが語るニュースの話は、
話が抜群にわかりやすい。
ロシアやウクライナの話も、
中高生でもわかる言葉で、
「へぇー!」という話をいろいろ混ぜつつ
語ってくださいます。
また田中さんは過去に4年半モスクワに赴任し、
あちこちを取材されてきた方でもあるので、
話の臨場感や納得感がすばらしいのです。
「ロシアの人々が国をどう捉えているか」
「土地の特徴と人々のメンタリティの関わり」
「ウクライナで体験したクリミア併合のこと」など、
田中さんだからこそのエピソードが
たくさん登場します。
ロシア関連のニュースがずっと続いているので
「つらいし、もういいよ」という方も
きっといらっしゃると思います。
ですが、将来の戦争を減らすために、
多くの人が正しい知識を得ておくことは、
非常に重要なことであるように思います。
幸い田中さんの話は、すごく読みやすいです。
よければぜひ
「(1)打ち合わせの話(全5回)」だけでも、
目を通してみてもらえたら嬉しいです。
『銃・病原菌・鉄』などの著作で世界的に知られる
進化生物学者、ジャレド・ダイアモンドさんと
糸井重里の2012年の対談です。
10年前の記事ですが、その内容は
「対立が起きたときの対処方法」や
「人々にいちばん影響を与えるのは
いつ・どこで生まれたかである」など、
2023年のいま読んでも、全く古さを感じさせません。
むしろ「10年前にすでにこういう視点だったんだ」と
ジャレド・ダイアモンドさんの視点にハッとします。
あちこちにいろんな発見がありますが、
ぼくが特に好きなのは、第5回の
「対立が起きたときの対処方法が、
ニューギニアなどの伝統的社会と、
日本やアメリカではまったく異なる」
という話。
先進国だと「誰が正しいか」が重視されるけれど、
伝統的な社会では
「関係をどう修復するか」がなにより大事で、
人々がおこなうことも全く違う。
説明のために出されているエピソードも、
読みながらちょっとじーんとします。
全6回でさっと読めますし、この記事は掲載以来、
ふと「あのコンテンツはよかったね」と
言ってもらえるようなものなので、
きっと多くの人に面白がっていただけるのでは、
と思っています。
さて、うって変わって、のんびり見られる、
元気なコンテンツです。
しかも、動画コンテンツ。
「テキストを読む習慣がなくなった方なら、
いっそ動画をおすすめするほうがいいかも?」
そんな発想をしてみました。
ほぼ日には最近、毎週金曜更新の
「ほぼべりTUBE」という
ゆるーい動画コーナーがあるのですが、
そのなかでぼくが担当させてもらったものです。
肝心の中身は、ほぼ日でずっと
「台湾のまど」という連載をしてくださっている
青木由香さんに、いまの台湾の様子を
動画で撮ってもらったもの。
2022年10月から台湾旅行がしやすくなったので、
「みんな来てねー!」というのがテーマです。
で、送ってもらった映像を見たところ‥‥
やっぱりめちゃくちゃいいんですよ。
現地の風景って、感動があります。
コロナ禍以来すっかり忘れていた
「あぁー、台湾ってこういう空気だった!」が
映像のはしばしから感じられ、元気が出ます。
青木さんと現地のみなさんとのやりとりも素敵で、
見ていて旅行に行きたくなります。
実際そんなふうに感じた方は多かったみたいで、
視聴者数も多く、ちょうど
「いま見たい動画」になっているんじゃないかな
と思っています。
青木さんの新しいお店の様子も見られますし、
カフェの多い迪化街のお店をたくさん紹介していて、
ちょっと旅行している気分になれます。
旅行好き、台湾好きの方、
ぜひぜひ気軽に見てみていただけたらと思います。
(ちなみにこの動画は「後編」もありまして、
そちらも臨場感たっぷり、素敵なお店いろいろの
ナイス動画なので、合わせておたのしみください)
もうひとつ、気楽なコンテンツをどうぞ。
2017年に、全国4000人の方に参加いただいた
「おみやげおやつアンケート」の結果をまとめたものです。
47都道府県のおすすめおやつが
愛たっぷりのコメントともに並び、
「この土地に行ったら、何を買えばいいの?」を
さっと調べられるリストです。
なのでもう読み方としては、ザーッと眺めて、
気になったおやつのコメントを
参考にしてもらえばいいだけ。
「さいきん長文は苦手で‥‥」という方も、
これなら気軽に見ていただけるのではと思います。
そしてこのページがすごいのは、すべての情報が
まったく何の事情もなく、
全国のみなさんがただただ
「自分が本気ですすめたい!」と思うものだけで
構成されている、ということ。
「有名だから入れておいたほうがいいかな」
みたいなものは、入れないようにしてもらったんですね。
だから、完全に信用できる声しかなくて、
めちゃめちゃ精度が高いんです。
なので旅行や出張などで各地にお出かけの際には、
このリストを参考にすると、きっと役に立つと思います。
お取り寄せにもよいかなと。
(2017年のリストなので、そこはお許しを)
そしてこのコンテンツは、全国のみなさんの
力無しにはできあがらなかったものなので、
「みんなで作ったぞー!」という感じもあります。
そういう意味でもとても愛着のあるコンテンツです。
みなさん、ぜひお役立てください。
さて、ふたたび人文系コンテンツです。
こちらは2021年のベストセラー
『ブルシット・ジョブ』の内容を、
本の翻訳者の酒井隆史先生に解説いただいたものです。
「ブルシット・ジョブ」とは、かなりざっくり言うと
「実はやる必要がないとみんなわかっているのに
やっているようなバカバカしい仕事」のこと。
こういう仕事が近年どんどん増えている、というのが
なんとなくみんなの感覚としてあって、
2018年、人類学者のデヴィッド・グレーバーさんが
こういったバカバカしい仕事をテーマに、
『ブルシット・ジョブ』という本を書いたんです。
そうすると、世界中でたくさんの人が
「わかる!」と共感し、ベストセラーに。
日本でも2021年に、酒井先生のチームが
翻訳版を出されて、けっこう話題になりました。
ただ、ぼく(田中)も日本語版を書店で見かけて
「このテーマはすごい!」と感動したものの、
実際読むとなかなかハードルが高く、
きちんと理解できた気がまったくしなかったんですね。
ならばということで、翻訳者の酒井先生に
「大学1年生に話すくらいの感じで」
と解説をお願いして生まれたのが、本コンテンツです。
で、「ブルシット・ジョブっていったい何なのか」
「なぜいまそういう仕事が増えているのか」
あたりの話は、実際に記事を読んでみて
いただけたらと思うのですが(面白いです。難しいけど)、
このコンテンツをおすすめする理由を
短く説明すると、
「ぼく(田中)は酒井先生のお話で、
一気に理解がすすみ、仕事でついつい
ブルシット・ジョブが発生しそうなときに、
すごく防ぎやすくなった」んですね。
「あ、これはブルシット・ジョブかも‥‥!」
そんなアンテナがピーンと
はたらくようになって、
「これはやめておきましょうよ」みたいなことが
ずいぶん提案しやすくなりました。
なのでこのコンテンツは、
日々のブルシット・ジョブにうんざりしていて
「なんとかしたい!」と思っている人には
けっこう役立つかもしれない気がします。
一気に全部理解しようとすると混乱するかもですが、
ひとつひとつ読んでいくと、きっとわかるはず。
興味を持たれたら、ぜひ読んでみてください。
最後は、糸井重里が
東京藝術大学の文化祭(藝祭2022)のトークショーに
登場したときの様子をまとめたコンテンツです。
この記事はとにかく、第1回がすごいんですね。
控室での学生さんと糸井の会話からはじまるのですが、
学生さんからの質問が
「人間の『霊性』って
どう考えればいいと思いますか?」というもの。
そこに糸井さんが
「自分は『霊性』ってこういうものだと思う」
と語っているのですが、
そこで語られている内容がもう、本当に見事なんです。
具体的な中身は、この記事の第1回を
読んでいただけたらと思うのですが、
個人的に「わぁ」と思ったのが、
糸井さんがここで
「説明できないことにも価値がある」
という考え方を、
すごくきちっと説明してくれていることですね。
いまの世の中では
「うまく説明できないこと」って
わりと切り捨てられやすい気がするのですが、
実際には生きることのなかには、
「説明できないけれどある」みたいなことが
たっぷりあって、そこがないと息がつまる。
ただ「うまく説明できないこと」って、
説明が難しいので、その価値も説明しにくくて
歯がゆい感じもあるわけです。
そのときに、このコンテンツの第1回での
糸井さんのお話は
「ああ、やっぱりうまく説明できないことも
ちゃんと価値があるよね」と
確信をもたせてくれるようなもので、
すごくほっとするというか、
未来に向かって明るい気分を
もちやすくしてくれるものだったりするんです。
‥‥と、めちゃくちゃ抽象的な説明になりますが、
とりあえず、糸井さんのこの第1回の話は、
ピンときたらちょっと見てみてもらうと、
人によっては「おおー!」と思っていただけるかなと
思っています。
(ちなみに第2回め以降は一気に話が
具体的になって、わかりやすくなります)
そんな感じで、全部で6つ。
どうでしょう、たまには読みもの記事に
触れてみるのもいかがでしょうか。
案外ささっと読みきれて
「本を1冊読んだみたいで面白かったな」
とたのしんでもらえたらいいな‥‥と願っています。
今年もどうぞよろしくお願いいたします。
(つづきます)
2023-01-03-TUE
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イラスト&タイトル:あーちん
あーちん
2002年生まれ。9歳のとき、お母さんのすすめで
「ほぼ日マンガ大賞2012」にエントリーし、
約1000通の応募のなかから見事入選。
小学生漫画家として、『くまお』の連載をスタート。
初の単行本『くまお はじまりの本』を出版。
2年半の連載の後、小学校卒業をきっかけに、
『くまお』は246回で終了。
続く、中学時代は、好きなたべものを描く
『たべびと』を連載。
終了までに144品のたべものを描きあげた。
現在、日本の北のほうで、大学生活エンジョイ中の20歳。