むかしの暦で、いまを楽しむ。 旧暦と暮らす「ほぼ日」の12か月。
2007-01-19-FRI
旧暦:十二月一日
併用するっていいことですよね 併用するっていいことですよね


近松 日本に関して言えば、
旧暦を新暦に変えたことよりも大きな変化が
ここ10年、20年ぐらいであると思います。
本当に大きいと思いますよ。
どんな点かといえば、
「外から入ってくるものの受け入れ方」です。
明治時代のころでも、それでも
過去のものを生かしながら
新しいものを入れるということをしてましたが、
ここ最近20年くらいは、
もう、外のものを「そのままストレートに」です。
文化をいれかえちゃう、というくらいの勢いです。
糸井 博物館の方が言うと、重みがありますね。
その言葉は。
近松 いやいや。(笑)
博物館にいたからではなくて、
江戸〜明治〜現在の流れに
普通の人よりちょっと詳しいからかもしれません。
糸井 なるほどなるほど。
近松 さきほどの、大工さんの話に関連させましょう。
明治時代にヨーロッパから、
新しい建築が入って来ました。
ところが実際に新しい建築方法で建物を
建てなければならなかったのは、
ずっと日本式の工法で建物をつくってきた、
日本の大工さんです。
そこで、その新しい建築方法を学び取って、
自分の持ってる智慧をそそいで、
そうして作った建物には、
両方のいいところが出るんです。
さらにいえば、和洋折衷にして
それでも足りないところは、
独自の付け足しまでするんですね。
それは、おそらく、日本の歴史的に見ますと、
明治時代だけではなくて、
もっと昔から、大和朝廷、それ以前から、
それまでの文化を捨てて、
新しいものを入れるということは
してこなかったと思うんですよ。
在来の文化を生かしながら、
新しいものを入れて、
それからまた新しいものを作っていく、
という文化を形成していってるんですよ。
われわれの祖先は。
明治まではたぶん普通に続いたと思うんですけど、
現在は
「いままである文化を生かしながら」という
プロセスがなくなって、
ストレートに入れてくるというふうに見えるんです。
糸井 壊して、建てる、みたいになってますよね。
近松 今までの全部否定して、新しいものを
ストレートに入れてきてしまったので、
今になって、その居心地の悪さに気がついて、
最近は揺り戻しがきてるのかな?
とおもうことが多くあります。
「古いものは」なんてこと、
言い出したような気がするんですよ。
糸井 その、なんて言うんだろう、
今の時代だと、たとえば人が、
たとえば歯ブラシなら歯ブラシの工場ができて、
毛を植えるのにどう苦労したかとか経験を積むでしょ。
でも、全然違うところから、
その歯ブラシ工場を買うぞ、という人があらわれて、
工場はぽーんと売られてしまう。
そうすると、その歯ブラシ工場に勤めてた人が
持っている経験というのが、
根絶やしになっちゃう可能性がありますよね。
「経験」も「時間」も白紙にもどる。
でも、先生がおっしゃったような意味で、
この「経験」と「時間」が
引き継げたらって思いますよね。
志の輔 だから、太陰太陽暦から太陽暦に変えずに
併用すればよかったんじゃないですかね。
ほんとうに。
旧暦のいい部分も「引き継ぐ」ってことが
できたんだと思う。
アメリカなんかですよ、悪いのは。(笑)
冗談ですけど。
糸井 でも、本当にそうなんですよね、
きっとね。
だって、バベルの塔は壊れたんですもの。
全部一緒にしようっていうのは、
無理だっていうことは、
もう大昔の人からわかってるんですよね。
志の輔 いい。いいよ、この師匠。
近松 まだ若いんですよ、アメリカは。
糸井 そうだ。
国としての若さってありますよね、
当然ね。
近松 それで焦ってるように思えるんですね。
糸井 その真似をしてる日本というのは、
どうも、いいものを捨てちゃってますね、
やっぱりね。
これから、だからアメリカは中国とつきあって、
さんざん懲りるんじゃないですかね。
わかんねえよ、みたいな。
日本みたいに融通きかないから。
近松 したたかですからね、あそこは。
糸井 で、さんざん懲りて、「日本は良かった」。(笑)
だからアメリカの人たちは、
ほら、ぶつかるの前提で
いろんな人が混じってる国だから、
一番調整しやすい共通認識というのを、
人工的に作りますよね。
あれを世界に当てはめようとするんですよね。
近松 契約書なんかを。
糸井 契約書。
近松 日本の契約書は、不都合が生じた時は、
双方誠意を持ってやりますよ。
これは、アメリカには絶対ないことです。
細かいところまで詰めていかないと、
調整つかないです。
糸井 そうですね。
イギリスは、
やっぱりそのへんわかってるんですかね。
アメリカとは違いますよね。
近松 やっぱり伝統がありますからね。
伝統というのはすごいことですよ。
糸井 大丈夫ですよね。(笑)
志の輔 今度逆に、中国は伝統を背負いすぎて
またどうにもなんないつらさが有るようにみえますね。
近松 中国、そうですね。
志の輔 うん。歴史なんだかを
こう背負っちゃって。
近松 そうとも言えるんですが、
その逆ともいますよ。
中国っていうのは、破壊の歴史なんですね。
新しい王朝が来ると、
前の王朝の文化なんかは徹底的に破壊します。
糸井 焚書坑儒の歴史ですから。
志の輔 そうか、そうか。
近松 でも、日本って不思議で、
いままであるものを
決して破壊したりはしない文化なんですよ。
一番象徴的なのは、
皇室のことかもしれません。
古くからある血筋をずーーーーっと残すんです。
ふつうは無いことでしょう?
志の輔 そうか。
糸井 それを意識的にやってきたんですもんね。
志の輔 本当だ、本当だ。
糸井 徳川から今までもね。
近松 中国だったら、鎌倉幕府、江戸幕府、
そして、明治維新の段階で全部それ以前のものは
破壊してますでしょ?
でも、日本は違いますよ。
一番古い皇室まで残ってるわけですから。
明治維新のときだって、
江戸を破壊し尽くしたわけではないでしょう?
不思議な国なんですよ。そう見れば。
糸井 そうですね。
近松 たとえば、戦国武将たちの子孫だって
残ってますよね。
スケート選手は、織田家ですよね。
糸井 ほう、そうだ。
南朝天皇の末裔だとか、
全部いるんですもんね。
近松 安徳天皇の子孫も出てきてますし。
糸井 そうかと思うと、将門の墓とか、大事にしちゃうしね。
あ、そうか。あんまりひどいことすると、
逆恨みするっていうこともあるんですね。
近松 「たたり」ですね。
糸井 たたりですね。たたり信仰が当然あるから。
だから、追いつめないよね。
おもしろいなあ。
志の輔 だいたいの話って、残すほうが高くつくんだよ、
という一言なんですよね。
何が高くつくって。
いや、その負の歴史まで含めて資産なはずなのに。
いやあ、ありがとうございました。
こんな話、若い時にできたらまた違ったろうなあ。
糸井 年寄りのいる会社はね、幸せよ。

(おわり)

イラストレーター:玉井升一
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