むかしの暦で、いまを楽しむ。 旧暦と暮らす「ほぼ日」の12か月。
2006-12-29-FRI
旧暦:十一月十日
月の満ち欠けと陰陽思想


糸井 メールで
「新月の日に何かことを始めると、
 うまくいくと言われて、
 私は何かやるときには、
 新月から始めるようにしてます」
という人がいたんですけど、
そんなふうなことを、
昔はみんな考えてたんでしょうね。
近松 そうかもしれませんね。
糸井 そのメールの意味はつまり、
新月は真っ黒のところから、
徐々に明るくなってくるから、
末広がりだ、ということですかね。
近松 そうだと思いますよ。
糸井 増えていくということに対して、
増殖していくということに対して、
すごい信仰があった、ということですね。
増殖信仰ですね。
志の輔 そういうことでしょうね。
糸井 いや、それは農業だってさ、
増えていくということを
アテにしてやっているわけだし、
芸人さんとかは、
お客さんが増えていくみたいなことを考えて、
きっとゲン担いでたんでしょうね。
志の輔 かもしんないですね。
だから、お祭りなんて
みんなそうだったんじゃないですかね。
月夜の晩にやるでしょう、絶対。
満月の晩の明るい夜に。
近松 絶対そうですね。
月明かりがなくて暗かったら、
踊れないというのもあるんですが。(笑)
志の輔 タヌキだってね。(笑)
近松 タヌキだって踊れないです。
月のない夜に。
志の輔 新月タヌキ城とかないもんね。
近松 真っ暗ですよ。
本当に暗かったはずですから。
糸井 でも、盆踊りって15日だとしたら、
末広がりじゃないとも言えるね。
そのあとは、新月に向かう。
近松 あ、そういう意味では違いますね。
ピークになったところが満月ですね。
糸井 あ、宴の後ですね。徐々にしぼんでる。
近松 またひと月、半月待とう、と。
糸井 祭りの切なさは、そんなところからも
来ているのかもしれませんね。
近松 祭りは、一番いいときにやるんです。
二十四節気の「立春」や「立夏」も
ピークになったところ、という考え方ですよ。
例えば、立春の場合は、
「もうこれ以上寒くなりませんよ」
という日のことを指します。
寒さのピークが次の始まりだ、ということです。
今日まで寒いのでガマンしていきましょう。
このあとは、もう暖かくなっていく一方です。
という。
糸井 それも「満月、新月」っぽい考えですね。
近松 そうですね。「満ちる」というポイントが
重要なんですね。
そこからさまざまな分岐が始まる。
糸井 ここからこっち行ったらもう。
明日から春だから、と。
志の輔 陰と陽の考え方ですかね?
糸井 昔の人のその陰陽な考え方というのは、
おもしろいですね。
みんなそうなってますね。
志の輔 いま、月の満ち欠けが入っている
カレンダーって売れてるらしいですね。
バイオリズムみたいなこと、
気になるんでしょうかね?
丸の黒い部分と白い部分の割合で、
何かがわかっていくっていうのを
うすうすわかってるんでしょうか?
糸井 その意味では、諸行無常だの、
栄枯盛衰だのっていう、
この黒と白が順番に同じ分量来てるよ、
という思想が非常に生まれやすいですね。
近松 そうですね。

(続きます。)

イラストレーター:玉井升一
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