たくさんの瓢箪(ひょうたん)が並ぶ、「ひしめき瓢箪」。
この手ぬぐいは岡山の実家にいる【母】へ贈った。
メールのやりとりは頻繁にあるけど、
手紙を添えて何かを贈るのは久しぶりだ。
母は手ぬぐい初心者で、昨年の夏に
私の勧めで初めての手ぬぐいを買ったばかり。
【手紙:私→母 @岡山】
母さんへ
突然ですが手ぬぐいを贈ります。去年、私が帰省したときに一緒に行った雑貨屋で
母さんが手ぬぐいを大量購入したの、覚えてる?
あれからちゃんと使ってる?私は母さんに買ってもらった「かき氷」柄の手ぬぐい、
お気に入りでガシガシ使っているよ。手ぬぐいって、私にとって大切な人を思い出す、
お守りのような存在だから、今度は私から
贈ってみたいと思って、この手紙を書いています。母さんに選んだのは、ちょっぴり渋めの「瓢箪」柄。
瓢箪って、6つ並んで「六瓢箪(むびょうたん)」になると、
「無病息災」の意味になるんだって。店員さんに教えてもらって、これにしようと決めました。
母さんのことなので、去年買った手ぬぐいたちも
袋に入れっぱなしで、使ってないんじゃないかなー?笑
汗もぐんぐん吸うから、毎日の畑作業におすすめです。これからも元気で、好きなことにどんどん挑戦して、
楽しんでほしい!という願いを込めて、瓢箪柄を贈ります。袋のまま放置せずにちゃんと使ってね!
PS.
母さんにとって手ぬぐいってどんな存在ですか?教えてください。
母は衝動買いをするくせに、買ったあとには熱が冷めて、
袋から出さずに放置することが頻繁にある。
きっと去年、一緒に買った手ぬぐいもそうだろうと
見込んだ私は、「使ってね」と念押しをしておいた。
すると、文字を綴るのが苦手な母からは
想像できない長めの返事が届いた。
【手紙:母→私】
結花へ
手ぬぐい届いたよ。ありがとう!
思いがけないプレゼントって、とっても嬉しいね。
手紙がついているのが何より嬉しかったよ。ご指摘の通り、去年買った手ぬぐいは袋に入っとるわ…。
ずっと大切にしたい思いで、ついそのままにして、
使わずってことがあるんだけど、今回もらった手ぬぐいは
今日早速ネットに入れて洗濯機で洗っているよ!というのも、私がまちこさん(ご近所さん)に
手ぬぐいを贈ったときにね、「早速使ってるよ!」って
見せてくれて、たまらなく嬉しかったんだよ。
自分がプレゼントしたものを、ちゃんと使ってくれるって。だから私も、結花が選んでくれた「瓢箪」の手ぬぐい、
大切に使うね。もうすぐ首にタオルが欠かせない季節に
なるから、その代わりに手ぬぐいデビュー!さて、「私にとって手ぬぐいとは」。
私は小さい頃から見ていた、お母ちゃんの姿が浮かぶかな。お母ちゃん、
白地に文字が入っただけの地味な手ぬぐいを
姉さん被り(あねさんかぶり)にして、
畑や田んぼ作業に行っていたよ。今みたいに、ツバに日避けのネットが付いた
涼しい帽子なんてない時代だから、
帽子代わりに手ぬぐいを使っていたんだね。だから、手ぬぐい=昔のもので、
自分で使うというイメージは正直なかったよ。お母ちゃん、明治生まれの厳しいおばあちゃんの下で、
辛いこともたくさんあっただろうに、いっつも
笑顔の人だったよ。べっぴんさんではないけれど、
いつも可愛く笑っていたお母ちゃんは、私のお手本なんよ。だから、私にとって手ぬぐいは「お手本」。
お母ちゃんを思い出す、大切な存在かな。
お母ちゃん(私にとって祖母)のエピソードは、
初めて聞くものだった。祖母は私が生まれる前、
母が27歳の時に交通事故で亡くなっている。
祖母はそのとき55歳。
今、私はちょうど27歳で、母が56歳だ。
この歳で母親を亡くすって、どんな感じなのだろう。
真剣に考えたこともなかったし、母から祖母の話を
聞いたことは、片手で数えるくらいしかなかった。
母がいつも財布に入れているという
祖母の可愛い笑顔の写真、
メールで送ってもらって初めて見た。
その写真には、思わず見間違えるくらい
母そっくりの優しい笑顔があった。
母は祖母のことを「お手本」と言うけど、その笑顔は、
私が幼い頃からずっと見てきた母の笑顔そのものだった。
辛いことがあっても、弱音を吐いたりしない、
いつも明るい母の笑顔だった。
私はどうだろう、こんな風に笑って過ごせているだろうか。

後日、母からのメールで送られてきた写真。
今度こそ、洗濯してちゃんと使ってくれそうだ。
手ぬぐいとは「お手本」
(つづきます)
