- 座長
-
もう劇団を解散してからずいぶん経つけど、
私は完全に演劇そのものから離れてるじゃない?
劇団員たちの何人かは、
なんらかの形でそこそこ続けてたりするけど、
私は完全に手放しちゃってるから。
- 宝来
-
それも不思議だったんですよ。
劇団だけじゃなくて、演劇もまったくやらないとは
思いませんでした。
- 座長
-
私はその、原点が演劇なのかって言ったら、
もっと根本的な衝動みたいなものは違って‥‥。
劇団やってても、裏で小道具つくってるのが
けっこう面白かったりとか。
公演までの過程がね。
‥‥あの、演劇の練習はそんなに好きじゃなかった(笑)。
- 宝来
- そうなんですか!(笑)
- 座長
-
なんか裏方で物つくってたりとか、
舞台の演出をすることだったりとか、
とにかく総合的にお祭りっていう感じが好きだったのね。
- 宝来
- それはわかります。私も好きでした。
- 座長
-
だから、一緒にやってたプロの舞台女優さんからも
「もっとお芝居に絞って頑張ったらいいのに」とか
言ってもらっても、有難いけど全然そんな気なくて。
その頃はそれがなんでかわからなかったけど、
今、引いた時に演劇が恋しいと思わないってことは、
やっぱり、ね?
- 宝来
-
あー、そうか。原点は演劇じゃなかったからですね。
じゃあ、座長の原点はなんだと思いますか?
- 座長
-
思い起こすと、小さい頃、
いらない紙にずっと絵を描いてたっていうそういうのが、
一番のなにか原点で‥‥。
- 宝来
- あぁ~。
- 座長
-
当時めずらしかった36色の色鉛筆とかを買ってもらって、
パッと開けた時、その色彩に「うぉ~!」って感動して、
その鉛筆を削ったり、色を塗る作業が加わって、
それがどんどん発展していって
なにか物をつくったりするようになって。
演劇も、子ども劇場とかって色彩が溢れてるじゃない。
それが「おもしろーい!」って思って。
- 宝来
- あぁ、それが劇団に繋がってるんですね。
- 座長
-
うん。べつに演劇がどうのとか、
表現することがどうのとかじゃなくて、
やっぱりなにかこう色彩とか、造形していくこと?
色彩あふれるものに携わっていくのが面白くって。
今もコサージュとかランプとかつくって
販売したりしてるけど、
それって演劇とまったく違うことをやってるわけじゃなくて、
全部が原点から演劇を通った延長上なのよね。
- 宝来
- 演劇も物づくりも原点は一緒なんですね。

- 座長
-
そう。例えば、宝来ちゃんが演劇をやる前から
ずっと物を書いてたっていうのと一緒で。
学生時代に文芸部で物語を書いたり、
趣味でブログを書いたりしていた延長で、
ちょっとそこに自分の実像を投じてみたくなって、
それが流れとして演劇になったりとかして。
それって書くことと演劇が繋がってなくはないよね。
- 宝来
-
そうですね。
私の中では書くことと演じることはかなり近いです。
自分でも気づいたのは最近ですけど。
「書くこと」が原点だと思いこんでたんですが、
もっと原点に近いものが他にあるんじゃないかと思ってます。
- 座長
-
勝手な私の解釈だけど、
宝来ちゃんにあるスキルとか持ってるものって
全部手段でしかなくて、最初の衝動っていう原点が
今に繋がってるんじゃないかと思うのね。
あくまでもスキルとかって、自分の衝動を、
見える形とか、聞こえる形とか、
五感で感じる形にするための手段じゃない?
- 宝来
-
たしかに。書くことをやめても、
なにかで「伝える」っていうことは
やめられない気がしますね。
- 座長
-
2人とも最初の衝動というか、原点が、
言葉でまとめてしまえば「想像すること」だから、
手を動かしたら物がつくれていくし、
言葉にすれば台詞になったり、物語になったり、
そういうことかもしれないね。
- 宝来
- あぁ、そうかもしれないです。
(つづきます)