2019年3月。
「柴田真帆(しばたまほ)」
黒板に縦書きで名前を記し、
その前で先生が担任する
2年4組の29名のクラス全員に
向かって自己紹介をする。
あれは21年前。
2009年小学校5年生の夏休み明け、
仙台から神奈川県に引っ越してきた11歳の私は
同じように先生の横で
5年3組の面々に自己紹介をした。
ふっとそのときの記憶が蘇る。
2年4組のこどもたち。
教育実習でもなく、授業参観でもなく、
教室に現れた見知らぬ大人が
きっと新鮮なのだろう。
思い思いに口にする反応、前のめりな姿勢と、
一心にこちらへ向けられる視線から、
29名の2年生の純粋な好奇心と興奮が伝わってくる。
ひとつ、深呼吸して話始めた。
みんなと同じように先生が私の担任だったこと。
卒業してもう大分経って、自分は大人になったのに
先生は全然変わらずに思えること。
今日は取材のために授業をみんなと一緒に受けること。
先生が「質問がある人?」と問いかけると、
わっと弾けるように手が上がった。
「足は速かったですか? リレーの選手になりましたか?」
「小学生のときから、先生より背が高かったですか?」
「彼氏いますか? 結婚してますか?」
2年生らしい、清々しい程に遠慮ない質問に
思わず笑みがこぼれてしまう。
先生が「あとは休み時間に直接聞いてみてくださいね」と区切り、
生活科の授業が始まった。
先生だからこその、2年4組の教室を少しご紹介
「マッキーノ」は漢字や熟語を遊びながら覚える
ビンゴのようなゲーム。
そのための練習カードが教室の背面に。
2年生が得意げに覚えた諺を披露してくれた。
皿回しにジャグリングの練習アイテム。
20年前もあったなぁと懐かしむ。
クラスのお楽しみ会で披露する子もいる中、
私はずっと皿回しは出来じまいだった。
全て先生が持参の学級文庫。
2年生向けのため絵本が中心。
先生のおかげで、6年生のときは、
漫画は手塚治虫、楳図かずお、
小説はハリー・ポッターに傾倒した。
(つづきます)




