もくじ
第0回冒険のはじまりのはなし 2017-03-28-Tue
第1回まったく無関係なことをたくさん書いた 2017-03-28-Tue
第2回発信ではなく受信してるんです 2017-03-28-Tue
第3回偉そうくならない 2017-03-28-Tue
第4回僕はお話しがしたいんです 2017-03-28-Tue
第5回アマチュアはいいとこ取り? 2017-03-28-Tue
第6回ご近所の人気者になりたい 2017-03-28-Tue

外にからだを開いた文章を書きたいです。ちょっと高い牛乳を買ってみる、終電で映画を観に行くなど、ささやかな挑戦の味が好き。

田中さんの「書く」をめぐる冒険</br>田中泰延×糸井重里

田中さんの「書く」をめぐる冒険
田中泰延×糸井重里

担当・曽根千智

第6回 ご近所の人気者になりたい

糸井
「グルッと回って結論は?」ってなると、
「ご近所の人気者」っていうところへ行くんだよ。
田中
「ご近所の人気者」。
糸井
「ご近所の人気者」っていうフレーズは、
『じみへん』で、中崎タツヤさんが書いた言葉なんですよね。
田中
なるほど。
糸井
凄味がありますね。
もう1つ、中崎さんので永遠に忘れまいとしたのがあって。
 
男が出てきて、お母さんがやってることが、
すごく馬鹿に見えるんですね。庶民の家ですから。
で、馬鹿さ、くだらなさ、弱さ、下品さみたいなものに
腹が立って、「母さんは、何かものを考えたことあるの?」と
もう怒りのようにぶつけるんですよ。
もう、つまり、自分の血筋に対する怒りですよね。
田中
はい、はい。

糸井
そうすると、お母さんが、
「あるよ。寝る前にちょっと」って言うんですよ。
田中
(笑)
糸井
これ、涙が出るほどうれしかったです。
田中
それは素晴らしい。
糸井
で、僕は「寝る前にちょっと」を探す人なんです。
「みんなこうしろ」とも言えない。
俺は探したんだもん、だって、それを。
で、今の泰延さんのこの、青年、青年‥‥、
なんだっけ、扶養者じゃなくて(笑)
田中
「青年失業家」。
糸井
失業家(笑)。
なんていうかな、自転車でランニングの人のね、
横にいる自転車の人みたいな。
田中
あぁ、伴走してる。
糸井
気持ちで見るわけです。
で、「どうなの?」みたいな(笑)。
田中
本当ですね。
でも、「青年」と勝手に名乗ってますけど、
糸井
27歳ですからね。

田中
27歳、心は。
ただ、会社を辞めた理由の1つには、とは言いつつ、
人生、すごい速く感じてきたなと思って。
20代の頃と40代を比べたら、もう倍以上。
日が暮れるのも早くなるし。
だから、祖母が死ぬ前に言った、忘れられない一言があって。
80いくつで死んだ、うちの祖母がね、こう言ったんですよ。
「あぁ、この間18やと思ったのに、もう80や」って(笑)。
一同
(笑)
田中
その一言でものすごい時間をね(笑)
糸井
素晴らしい。

田中
60何年のこの時間をピョーンって、
そりゃあ速いわなぁっていう。
糸井
それ、泰延さんが言うより、
俺、もうちょっと深くわかりますね。
田中
僕まだね、実感がない。
「この間18やったのに、もう80や」って、その1行でね(笑)。
糸井
あいたたたた(笑)。
田中
「はやっ!」って。そうなんです。
糸井
それですよ。
で、それは翻って、「ご近所の人気者」の話なんですよね。
田中
そうですね。
糸井
だから、一番近い所で僕のことを人体として
把握している人たちが、「ええな」って言う、
「今日も機嫌ようやっとるな」って言う、お互いにね。
田中
はいはい。
糸井
ここにやっぱり落ち着けたくなってしまう。
で、それをご近所のエリアが、本当の地理的なご近所と、
気持ちのご近所と、両方あるのが今なんでしょうね。
田中
あぁ。でも、その、やっぱりそのネットを介したり、
印刷物を介したりするけど、その「ご近所」っていうのは、
フィジカルなことが、すごい大事だと思ってて。
糸井
大事ですね。
田中
これも、1週間前に、糸井さんの楽屋に、
大阪のロフトにちょっと5分だけでも訪ねていく。
で、今日がある。
と、全然違うんですよね、やっぱり。
糸井
(笑)
田中
何かね、ちょっと顔見に行くとか、ちょっと会いに行く。
やっぱりその身体性が、すごい大事だなと思って。
糸井
うんうん。
 
と、1時間の予定のところを2時間。
収まらないよ、やっぱり(笑)
 
お疲れ様でした。
今日はどうもありがとうございます。
田中
ありがとうございました。