(2軒目は高嶋さんが常連の「くいもんや一歩」に移動する)
- 高嶋
-
ここは、
僕が提唱している「蒸シ燗酒」を、
ずっと応援してくれている店なんだ。
- 伴野
-
おお。蒸シ燗。
飲もう飲もう。
気になっていたんだけれど、
なんで「シ」なの?
- 高嶋
-
深い意味はなくて、
ただ古臭くいやらしい感じに
したかっただけ(笑)
- 伴野
- すきだよねいやらしい感じ(笑)
(待つこと数分)
- 高嶋
-
お、ついたって。
ささ、飲んでよ。
- 伴野
-
うん! うまい!
きれいな味だね。
これアルコール何度?
- 高嶋
-
いいでしょ。
純米酒で14度の2回火入れ。
(火入れとは酒質を安定させるためにする
加熱殺菌のこと。最大2回まで行う)
- 伴野
-
え〜〜〜!
これ、2回火入れなの。
なんでこんなにフレッシュできれいな味が
するんだろ。
- 高嶋
-
いろいろね、やり方があるのよ。
うちは昔ながらの酒蔵の雰囲気だし、
古風な機械しかないけれど、
なんでもかんでも設備投資するのにも、
疑問を持っていて。
新しければいいってもんじゃないと思う。

(高嶋酒造の蔵内)
- 伴野
- うん。
- 高嶋
-
だってね。
いまのままだって、
こんなにきれいな酒がつくれるんだよ。
もちろん設備を新しくしたら、
もっときれいになるんだと思うけれど、
造り手のノイズみたいなものが
なくなっちゃう気がして。
僕にとってはつまんないなと。
いま、みんなそれを消したがるじゃない。
- 伴野
- なるほど。
- 高嶋
-
いまの設備をとことん使い込んで、
ダメになったらキャッシュで蔵を建てかえるくらいの
気持ちでいるよ。
- 伴野
-
やっぱ、すげえな、
お兄ちゃんは。
憧れるよ。
思い切りもいいし、
楽しそうだもん、人生。
僕はまだまだダメだよ。
- 高嶋
-
また、及び腰キャラがでたよ(笑)
伴野くんは酒のためにちゃんと考えて、
設備投資しているんだから、
いいと思う。
つくりたい酒質は違うかもしれないけれど、
やっていることはほとんど一緒だよ。
マインドの問題だって。
- 伴野
-
確かに、大きくは違わないよね。
でもねー、なんか僕ってつまんなくない?
- 高嶋
- どんだけネガティブなのよ(笑)
- 伴野
-
近くにね、
こんなに楽しそうに酒をつくって飲んでいる、
お兄ちゃんみたいな人がいるから
余計にそう思うのかも。
お兄ちゃんはいまもDJやってて、
そういうのもカッコいいじゃない。

(DJをする高嶋さん)
- 高嶋
-
音楽は酒づくりと同じくらい好きだからね。
伴野くんは、
真面目にいい酒つくっているけれど、
ただ及び腰なだけだから(笑)
みんなからの評価も高いし、
酒だってちゃんと売れてるじゃん。
だから、もう周りの顔をうかがったりするの、
しなくていいレベルにきていると思うんだよね。
もっと、振り切れって。
- 伴野
- そうかな。
- 高嶋
-
僕は何をいわれたって、
違うなと思えばスルーするけど、
伴野くんは何事も、
まっすぐに受け止めちゃうところがあるよね。
- 伴野
- つねにいっぱいいっぱいで。
- 高嶋
-
性格だよね。
もしかして、酒が売れなかった時代の
トラウマもあるかな。
- 伴野
- それは大きいかも(笑)
- 高嶋
-
僕たちが大学を卒業した16年くらい前って、
悲しいくらい日本酒が売れてなかったじゃない。
何をやってもダメで、
手探り感が半端なかった。
いまみたいに、
がんばって結果が出るような状態じゃなかったし、
おいしければ売れる土壌って
まったくなかったし。
- 伴野
- うん、辛かった。
- 高嶋
-
僕と伴野くんが、
業界の酒の会に朝イチで行って
セッティングの手伝いをしても、
自分の蔵のブースがもらえなかったり。
手が足りないからって、
売れている先輩の蔵の酒を注いだりしてさ。
ほんと悔しい思いばっかりだったよね。
変な上下関係をつけられて、
僕ら若手が出にくくなる状況がいっぱいあった。
- 伴野
-
もーひどかったよ、あの時代は。
思い出したくもない(笑)
- 高嶋
- で、ぜんぜん酒は売れないし。
- 伴野
- 地獄だったね。
- 高嶋
-
でもさ、
イヤな思いもしたけれど、
いろいろな縁をもらうこともあったし、
若手だけで酒の会ができるようになったしさ。
そこはありがたかったよね。
- 伴野
-
うんうん。
僕もそう思う。
- 高嶋
-
だんだん世の中も
日本酒に注目してくれるようになって、
もちろん僕らの酒づくりのスキルも上がったし、
それなりにみんなが売れるようになった。
うれしいしかないよ。
- 伴野
-
どん底から這い上がってきた
気持ちはあるよね。
- 高嶋
-
だから、
そのころに比べれば、
いまは天国みたいなもんじゃん。
自分のつくりたい酒を
どんどんアピールしていい、
いや、むしろ、
しなきゃならない時代になったんだから。
僕はいま、
楽しくてしかたがないよ。
酒つくっているのも、売るのも。
伴野くんだってそうでしょ?
- 伴野
-
そうだね、前に比べれば、
ちょっとは楽しくなったかもしんない。
でもさ、
僕の世代ってキャラ立っている人が多くて、
存在感が薄い自分は大丈夫なのか、
いつも不安で。
キラキラしてないし。
- 高嶋
-
またいってるよ!
伴野くんは、
立派な及び腰キャラだから大丈夫だって。
もうそれでいったほうがいいと思うよ。
僕はもっと前のめりにガブガブ酒を飲んで、
伝説になるかもしれない(笑)
- 伴野
-
まだ伝説になっちゃダメだって!(笑)
これだけはいいたいんだけど、
頼むから飲みすぎには気をつけてよね。
そんなの無理かもしれないけれど、
ほんとに。
僕はもう今日はギブアップだわ。
いや〜久々にハシゴして飲んだ。
- 高嶋
-
こんなの
ハシゴしたうちに入らないから(笑)
でも、今日はありがとう。
また近々。
- 伴野
-
こちらこそ、ありがとう。
またよろしくね。

(おわります)
最後まで読んでいただき
ありがとうございました。
