私は好きなものを好きになりすぎて
仕事にまでしてしまいましたが、
なんだかんだ言っても、
日本酒を飲むことがいちばん好きです。
それはいつも顔に出ていて知人やお店の人から見ると
ニヤけっぷりが相当なものみたいです。
飲めば飲むほどゴキゲンになって
ずーっとニコニコ笑っている。
ある編集者は「呼吸をするようによどみなく飲むね」と
言っています。
私にとって日本酒を飲むことは、
空気を吸うのと同じくらい当たり前で
なくてはならない存在になのです。

いまは私が最初に飲みはじめた15年前に比べて
おいしい日本酒がとても増えました。
造っている人たちの頑張りや努力は
すごいものがあります。
味わいも個性がある日本酒がいっぱい出てきて
甘いの苦いの酸っぱいの、燗酒や冷酒でおいしいの
なんでもあります。
だから、いつも飲むのが楽しくて仕方がありません。
このおいしさを、楽しさをもっと広めていきたい
という思いは以前よりも強くなっています。
同時に蔵元や杜氏の酒造りに対する姿勢や
背景にある物語を書き残していきたいと思う気持ちも
大きくふくらむばかりです。

そんなことをいつも熱っぽく話していると
「好きなものを仕事にできてうらやましい」
とよく言われます。確かにその通りです。
好きな日本酒を飲んで仕事につながるなんて
ほんとにありがたいなあと。
だって、飲んでばっかりです、私の仕事。
職業は飲酒、好きなものも飲酒って
ことになるのですが。
「いいでしょ〜うらやましいでしょ〜」って
先ほど書いた質問と同じくらい言っています。
でも、本音を言うと、
同じくらいシンドイことも多いです。
きっと恋愛と似ているのではないでしょうか。
どうでもいい人のことは何でも気にならないけれど
好きな人に少しでも指摘されたり言われたりすると
本気で落ち込むように。
信じられないくらいズドーンと落ち込むと思うんです。
もう、自分が嫌になるくらいに。
けれど、そのぶん、強いですよ、好きなものがいつもそばにあると。
なにがあったってがんばれる、踏んばれる。
たとえ崖から突き落とされても絶対に這い上がれます。
（恋愛とは少し違いますが）
となると、うまくいったときの喜びも
どうでもいいことに比べてとてつもなく大きいんです。
きっと好きなものは
バランスのいい万能な装置じゃないし
ときに振り回されたりするかもしれないけれど
私はよかったです、それが日本酒で。

（おわります）

最後までお読みいただき
ありがとうございました。