主に週刊誌や月刊誌、書籍などで執筆するフリーランスのライターです。
あらゆる酒、酒場や料理などについて書いていますが、
一番の専門分野は日本酒で、仕事をして10年以上。全国の酒蔵を訪ねています。
連載をいくつか、『蔵を継ぐ』(双葉社)という著書もあります。
そして、「夜ごはんは米の酒」をモットーに、
ほぼ毎日、飲みつづけるくらい日本酒が大好きです。

日本酒を好きになりすぎた私。

日本酒を好きになりすぎた私。

担当・山内聖子(きよこ)

好きなものを語るということは
ほぼ、私をさらけ出すことです。
自分の生活のなかで好きなものを取ってしまったら
たぶんほとんど何も残らない。
出汁をとった後のパサパサなカツオ節みたいなものです。
なので、もし足を止めてもらえるならば
しばし、おつきあいいただけるとありがたいです。
私の好きなものとの出会いは、とつぜんの出来事でした。
思考をさえぎる概念やイメージがまったくない状態で、
15年前にバッタリ遭遇します。
今年で37歳なのですが当時は22歳でした。
そのときの気持ちは、こんな体験に近い気がしています。
先日、よく晴れた風が強い日に
自宅のマンションで窓を新しくする工事に立ち会いました。
現場の人たちが古くなった窓ガラスを取り外していくのですが、
外と境目がないワクだけのそこからまっすぐに入ってきた
光と風を浴びたときの気持ちよさ
のびのびしたうれしさがぐーっと胸にこみ上げてきました。
私が好きなもの、つまり日本酒と出会ったときも、きっと同じような感覚です。
それから、しばらく。
好きなものは好きだけにとどまらず、
いまの職業にも深く関わっています。
唐突に出会ったのに
気がつけば生活に深くしみている日本酒。
奇妙な人生だなと、まるで他人ごとみたいに考えてしまうことがあります。
ですから、今回は改めて
自分の好きなものとしっかり向き合ってみたいと思います。

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