ミリオンセラーの、あとの景色は。

第6回 本を書くの、辛いです。
- 古賀
- さっきの話の延長で、
ヒットについて、お聞きしたいのですが。
- 糸井
- ええ、もちろん。
- 古賀
- 糸井さんの中には、
「ヒットというのは、こういうものだ」
という、決まりやルールがあるんですか?

- 糸井
- う〜ん…
「ほぼ日」を始めてからは、
「ヒット多様性主義」になりましたね。
- 古賀
- ヒット多様性主義…
- 糸井
- はい。ゲームボードのうえに、
たくさんのコンテンツが転がっていて、
それがヒットになったり、
ならなかったりしているというか。
- 古賀
- コンテンツごとに、
ヒットの基準があるということですか?
- 糸井
- そうとも言えますね。
このコンテンツは、
セールスとしては結構売れたけど、
ヒットとは呼びにくい、とか。
逆に、これは黒字ギリギリだけど、
意味合いとしてはヒットだな、とか。
そういうルールを、たくさん持つようになって。

- 古賀
- なるほど。
- 糸井
- たとえば、
最近のヒットのひとつに、
「オフィスの引っ越し」があるんです。
- 古賀
- 今年の1月ですよね、
この新オフィスに移られたのは。
- 糸井
- ええ。
もちろん、金銭的なところだけを考えれば、
引越しそれ自体は、マイナスですよ。
でもこれは、ヒット多様性で考えれば、
とても良いヒットで。
「何がヒットなんですか?」
と誰かに質問されたとしても、
きちっと説明できるような、そういうヒット。

- 古賀
- そうでしょうね。
- 糸井
- 「ほぼ日」を始めて以降は、
ヒットに対して、そういう考え方や動き方を、
とても多くするようになったんじゃないかな。
- 古賀
- それは世間一般で
ヒットとされる価値観とは、
またちょっと、異なるものですよね。
- 糸井
- そうだと思います。
すでに価値観として
確立されている以外の場所に、
自分の価値観を見つけていく作業ですから。

- 古賀
- なるほどなぁ… ヒット多様性か。
- 糸井
- そういうふうに、意識してますね。
- 古賀
- あの、もうひとつ、
失礼かもしれないのですが、
お聞きしても良いでしょうか。
- 糸井
- はい、もちろんです。
- 古賀
- 今も糸井さんの中に、
「よぉし!一山当てるぞ!」
みたいな気持ちは、あるんでしょうか。

- 糸井
- あります、あります。
今の「ヒット多様性論」が、
通用するのであれば、
いつでも一山当てたい。
だって、
ラクになりたくて仕事してるんだもん(笑)
- 古賀
- いやぁーー…
糸井さんそれ、
すごく仰いますよね(笑)
- 糸井
- ほんとうにそうだよ。
苦しくて、しょうがないもの。
古賀さんも正直、どうですか?

- 古賀
- そうですね。正直なところ…
- 糸井
- 正直に言うと…
- 古賀
- 本を書くの、辛いです(笑)
- 一同
- (笑)