ミリオンセラーの、あとの景色は。

第3回 三日三晩、1人で自問自答してみると。
- 古賀
- 業界のために…
- 糸井
- そうそう。
「業界のために」って言い方、
みんなものすごく、しますよね。
若いときも、歳をとっても、
大企業にいても、中小企業にいても、
「業界のために」は、どこにでも出てくる。

- 古賀
- 出てきますね。
- 糸井
- それって厳密に言えば、
「うそかもしれないな」と思うんです。
- 古賀
- その…
どういうふうに、
うそかもしれないのでしょうか。
- 糸井
- その言葉の裏側には、
そう言ったほうが、
「自分もラクだ」という気持ちが、
混ざってるんじゃないかと。

- 古賀
- ああーー…
- 糸井
- だって「業界」がうまくいっていたほうが、
自分もうまくいきますからね。
つまり、自分が居やすい状況をつくることを、
「業界のために」って言葉に、
言い換えちゃってる気がするんです。
- 古賀
- それすごく、分かる気がします。
…うん、すごく分かるな。

- 糸井
- たとえば、お笑い芸人の方が、
「いい若手は潰します」とか、
冗談っぽく、言うじゃない(笑)
- 古賀
- 言いますね(笑)
- 糸井
- あれってある意味、
本気な気がするんです。
だって、自分がその業界のプレイヤーなのに、
お笑い業界をもっと面白くするために、
若い才能にどんどん育ってきてほしいって、
心の底から言えるかというと…

- 古賀
- …厳しいでしょうね。
- 糸井
- 厳しいですよね。
その「業界のために」は、
本当にほんとうなのか。
三日三晩、1人で自問自答してみたら、
ちょっと危ういんじゃないかっていう。
- 古賀
- いやー…
- 糸井
- 出版の世界は、特に多いでしょう。
- 古賀
- …あの、
僕もつい「業界のために」って言っちゃうし、
自分なりに考えてはいるつもりなんです。
だけど、今の糸井さんの話を聞いて、
もし三日三晩自分に、
それが本当なのか問いかけてみたら…

- 糸井
- ね(笑)?
- 古賀
- はい(笑)
きっと色々、混ざっていると思います。
- 糸井
- 僕が「コピーライター」という職業について、
誰かと一緒に少し声を大きくしていた時期も、
うそを言っていたつもりはないけれど、
たぶん、そういうことだったんだと思います。
- 古賀
- なるほどなぁ…
- 糸井
- それにさ、業界がいちばん嬉しくて助かるのは、
「業界のために」をみんなに考えてもらうより、
ぼくやあなたが、売れることだからね(笑)
- 古賀
- いやぁ、まったく。そのとおりです(笑)