ミリオンセラーの、あとの景色は。

第5回 それは、綺麗事じゃなくて。
- 糸井
- そういえばこの前、
ありましたよね。
古賀さんといっしょに、
大きいものを眺めた仲間が、
ヒットするってことが。
- 古賀
- ありました、ありました。
うちの社員が担当した書籍が、
10万部までいって。
- 糸井
- 嬉しかったでしょう。

- 古賀
- いやぁ、嬉しかったです。
すごく気持ち良かった。
- 糸井
- そういう嬉しさは今、
増えていますか。
- 古賀
- 増えましたね。
自分で小さな組織を作ってから、
より一層、増えました。
- 糸井
- 1人のときに感じる、
喜びや嬉しさとは、
違ってきますよね。
- 古賀
- 全然違いますね。
前はもっと、
露骨な出世欲があったというか。

- 糸井
- ライターとしてね。
- 古賀
- そうです。
1人のライターとして、
あいつには負けたくないとか、
あそこには勝ちたいとか、
そういう想いが、すごくあったんです。
でも今、それがあるかというと…
- 糸井
- うん。
- 古賀
- そこでずっと競争して、
消耗していくのは、
勿体ないなという気持ちで。
ライターという仕事の中ばかり見つめるよりも、
もっと外に目を向けたときの面白さを、
今ようやく、知ることができて。
- 糸井
- …やっぱり思うんだけど、
人に喜んでもらえることが、
自分にとっても、いちばん嬉しいよね。
これ、綺麗事として捉えられると、
すごく通じにくいんだけど。

- 古賀
- いや、ほんと、
そのとおりだなと思います。
- 糸井
- たとえば、
お母さんと子どもの前にイチゴがあって、
お母さんはそれを食べないで、
子どもだけに食べさせる描写があったりしますよね。
あれも全く、同じだと思うんです。
- 古賀
- お母さんは、子どものために、
我慢しているわけじゃなく。
- 糸井
- そうそう。
お母さんは我慢しているんじゃなくて、
自分が食べるよりも、
イチゴを食べて喜ぶ子どもを見ているほうが、
ずっと嬉しいんですよ。
- 古賀
- 子どもに喜んでもらうことが、
お母さんの喜びでもある。

- 糸井
- うん。
そういう経験って、
すればするほど、
もっと想像できるようになるし、
もっとしてあげたいな、
と思えるようになりますよね。
- 古賀
- そうですね、うん。
僕も最近、そう思える機会が、
増えた気がします。
- 糸井
- そういう意味でもさ、
古賀さんが組織を作られたのは、
すごく良かったよね。
- 古賀
- ほんとうに、はい。