- 古賀
- 遠くの５０万、いえ億の人達のことを考えるなら、
ミリオンセラーになったら１億円って
お金のことは想像しますか。 - 糸井
- あのね、人はすぐそこを想像するので、
そこに無防備でいると、
その人の小ささってのが見えちゃうんです。
僕は、お金には警戒心を持っているので、
あえて、「お金好きですよ」
という発言を時々するようにしています。
そうでないと、
「興味ないフリをしてたくせに、結局好きなんじゃん」
って言われそうで。 - 古賀
- むっつりスケベみたいな(笑)
- 糸井
- （笑）結局そこがリスクなんです。
邪魔をするのに非常に都合がいいんですよ。
- 古賀
- 都合がいいとは。
- 糸井
- 例えば、古賀さんが面白いことを考えていると、
誰かが「参加させてください」って言ってきますね。
すると「それはやればやるほど古賀さんが儲かる仕組みなんですよ」
と言う人が現れたら、とたんに動きにくくなる。 - 古賀
- なるほど、そうですね。
- 糸井
- だから、やりたいようにやるためには、
お金のことを
「僕はこう思っています」
「具体的にこうしています」
と、管理していく必要があります。 - 古賀
- なるほど。じゃあ喜びの源泉としても、
「おっ１億円」と思うことはないんですか。 - 糸井
- それは全くないですね。
- 古賀
- 全くですか。
- 糸井
- なんでかというと、
僕が求めて得られる数字って、
お金にしたら、ちっちゃいからですよ。 - 古賀
- (笑)
- 糸井
- もう、ちっちゃいんですよ。
街を歩いていると、
チンケなビルがいっぱい建ってるでしょ。
これはあなたのお金で建ちますかって話ですよ（笑） - 古賀
- ははぁ（笑）
- 糸井
- つまり「古賀さん、その本売れて儲かったでしょ」
っていうのは、チンケなビル以下なんですよ。 - 古賀
- はいはい。そうです。うん。
- 糸井
- チンケなビルだって、
お金を借りて建てています。
僕が儲かったお金なんて、
勝負をかけるための、タネ銭程度なんですよ。
そのくらいのお金で、
儲かりましたね、なんて言われても
モテちゃって大変ですね、というのと同じですよ。 - 古賀
- そうですね。それに気づいたのはいつぐらいですか。
- 糸井
- とっくです（笑）
２０代では、全く見えていませんでした。
自分じゃずいぶん儲かったな、
と思ったこともあったんです。
でも、３０代の初めに、
半分は税金なんだし、意味ねえなって。
- 古賀
- 全くそうですね。
- 糸井
-
毎年プロ野球選手の年棒がいくらって話題になりますね。
だけど、怪我でもしたらこんなもんになるんだって
使い道まで想像できるようになると、
うらやましがったり、ひがんだりってのが、
もうお門違いすぎて。
政府の補助金みたいなのを使う人のほうが
僕らよりよっぽど、お金のリアリティがわかってますよ。これはだから、会社員の発想でお金のことを考えると、
前に進めなくなるということですね。たとえば、自分の知ってる人が
会社を辞めて企業したときに、
大きくてこのぐらい用意しなきゃならなかったろうな、
小さければこうだろうなみたいな、
ってだいたい想像つくじゃないですか。しかも、お金を出してくれる人達が、
「俺達が出したお金をどう使うんだ」
なんて言いだすのを想像すると、
会社をスタートするとき、
とにかくお金を借りないという発想になるのは、
わらしべ長者の方が、最初から羊羹をもらうより
やりやすいからなんです。 - 古賀
- はいはいはい。
- 糸井
- その辺は先輩っぽく教えられるかもしれませんね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- なかなか、整理して考えるのが難しいのです。
- 古賀
- はい。
でも、じゃあお金なしでやるよっていうのとも、
また違いますよね。 - 糸井
-
全然違います。
お金ってなんだろうな。
エンジンが回るみたいなところがあってね。
お金をエンジンだと考えると、
ちっちゃいお金でうだうだしてると、
消し炭の奪い合いみたいになっちゃう。だから、僕なんかそこらへんで
自分がやれることをよく知ってるんで、
そのお金では、ここまでしかできないとか、
じゃあ、その場合はこうしようと。
ずるいことをせずに
その辺の舵取りができるならば、
人間としての徳が身に付くと思います。 - 古賀
- そうですね。はい。
- 糸井
- それは、話の通じない人まで相手にしなければ、
やれないからですよ。
通じる人だけを相手に仕事をしていくと、
趣味の世界に入っちゃって、
分からない人はもういいよって言いたくなるだろうし。 - 古賀
- 今回、僕はミリオンセラーというものを初めて経験して、
気づいたことがあるんですよ。
