- 古賀
- ちょっと、話が戻るんですけど。
糸井さんの中に、
吉本さんとか矢沢（永吉）さんみたいなヒーローがいて、
その方たちの出版のお手伝いをされてきましたね。 - 糸井
- はい、そうですね。
- 古賀
- その時糸井さんは、
自分が前にでるっていうよりも、
「この人の話を聞いてくれ」みたいな感じだったのですか。 - 糸井
- そうですね。
「僕はとっても驚いたよ」とか
「僕はとってもいいなと思ったよ」というのが、
吉本さんや矢沢さんの話に入り込んで
僕の本になっています。
だから、自分を前に出す必要は全くないのです。 - 古賀
- ああ、そうなんですか。
- 糸井
- うちで売ってる海苔とかもそうですよ。
海に出ているおじいさんが、
「もうそろそろ、
めんどくさいことやめようと思うんだ。
漁協に普通に出そうと思うのだよ」
って言えば、
「ええっ、待て待て。俺が売るから」
って言う（笑）
- 糸井
- 商売の仕組みって、
建造物としてのアートに似ていると思いませんか。 - 古賀
- はい。思います。
- 糸井
- 古賀さん、そういえばそんな仕事してますよね。
- 古賀
-
うん、はい。そうです。
今はやりたい企画が
できるような状態ではありますが、
10年前とかは、
いただいたお仕事しかできない時期も長くて。糸井さんが 『成りあがり』なんかでやってたことが、
今は『ほぼ日』で毎日のようにできていますよね。
こんな面白い人がいるから、
ちょっと対談してその人を紹介ようとか、
TOBICHIでその人の展覧会を開こうとか･･･ - 糸井
- 場所づくりだね。
- 古賀
- はい。場所づくりです。
それって、僕が今やりたいことと、
すごく重なる部分があります。
糸井さんのその姿勢は、
『成りあがり』の頃から一貫しているのですか。
- 糸井
- うーん。「目だちたいと思ったことはないんですか」
と聞かれたら、
「ものすごくありますよ」と答えるんじゃないかな。
でも、ちょっと深堀りすると、
「やっぱりいいかな。要らないかも」（笑）って、
急にどうでもよくなりますね。 - 古賀
- それは、どういうわけで。
- 糸井
- たかがっていうのが、
すごく見えるようになったんです。
一番目立ちたがりだったのは
高校生の時でしたし。 - 古賀
- ですよね（笑）
- 糸井
- 性欲が表現力として表れていた年頃です。
- 古賀
- はいはい。
- 糸井
- 高校生の時って、もっと俺を見てくれってのを
みてくれで表現したり（笑）
突き詰めれば、モテちゃいたいだけですけど（笑）
高校時代は、
彼女がいれば何もいらないという恋愛至上主義ですよ。
女とネタなら、圧倒的に女です。 - 古賀
- はいはいはい。
- 糸井
-
だから、僕みたいなさじ加減で
目立ちたかったり、目立ちたがらなかったりってのが、
古賀さん達世代にどう映るのかが
想像できます。
そんなにガツガツ目立とうとしなくても、
面白い世界を作れるし、
表に出ないから消えてるわけじゃない。
そのくらいの方がむしろ楽しいんだよって、
思ってくれてるんじゃないかな。アイドルグループの子達だって、
全盛期にモテてたわけじゃないでしょ。 - 古賀
- 遠くでモテてた。
- 糸井
- そう、距離なんですよ。
遠くで50万人にモテるより、
たまたま行った誰かの送別会で
隣に座った女の子に
「送って欲しいんだけど」って言われる方が、
バリバリに鼻の下が伸びますから（笑）
- 古賀
- そりゃそうですね（笑）、うんうん。
- 糸井
- 遠くの50万人の意味なんて、
いずれみんなにもわかっちゃうでしょ。
僕は、まだ足らないってあんまり思わないなぁ。
大体足りたって思うんです。 - 古賀
- はいはい。でも、
遠くの50万人にモテてる俺ってのが好きな人も
確実にいますよね。 - 糸井
-
それは、ゲームとしては面白いし、
僕なんかの中にもないことはないんだけどね。
「何人読んでくれてるの」
「１００万人だよ」
「へええー」っていう嬉しさはね。古賀さん、日本のアルプスとか、
ヒマラヤなんかが見える場所に
立ったことがありますか。 - 古賀
- いや、ないです。
- 糸井
- ないですか。たまたま立ったら、
「大きいなあ」と思いませんかねえ(笑) - 古賀
- （笑）ナイアガラの滝なら、行ったことがあります。
- 糸井
- いいですねー。
- 古賀
- とってもいいです。
- 糸井
- 来てよかったと、他の人に勧めたくなりますよね。
- 古賀
- なります。はい。
- 糸井
-
だから、僕は人にピラミッドを勧めますもん。
だけど、自分は仕事で、そんなものを見てはいないんです。
書籍で１００万部とか絶対いかないし。じゃあ、何がヒマラヤか、
相手にすべき大きな数字は何か。
例えば、僕が今手がけている仕事は、
１００万の先の、
億という単位で数えなきゃならないところまで
行ってるんじゃないかな。
だったら、億の人を感じながら
生きてみたいと思うじゃないですか。
それがまさにヒマラヤ。
「どうだ、俺はすごいだろう」
ではなくて、仲間もヒマラヤとして見られるのが嬉しい。古賀さんが、
「お金なんて全然ないんです」って子に
「ちょっと儲かったから、連れて行ってあげるよ」って
ヒマラヤが見える所に二人して立つわけ。
「なあ」って言うと、
「ほんとだー」って。
そのセリフは自分以上に嬉しいですよね。
この間あったじゃない。それ。 - 古賀
- はいはい（笑）はい。うちの社員が、はい。
- 糸井
- ヒットしましたね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- あれですよ。
- 古賀
- あれですね。あれは気持いいです。
社員の仕事で１０万部って、
自分のこと以上に嬉しかったです。 - 糸井
-
それは嬉しいと思いますよ。
「人が喜んでくれることが自分の喜びです」って
綺麗ごとにして表現してしまうと
通じないんだけど。お母さんはね、
自分はイチゴを食べなくても
子供が食べているのを見るのが嬉しい。
そういう経験をすればするほど、
人が喜ぶことを考え付きやすくなりますよね。 - 古賀
- そういうとき、お金についてはどう考えられますか。