古賀史健×糸井重里 売れること、目立つこと、お金のこと。
第3回 お金は好きですか?
- 古賀
- 遠くにいる何万人ものファンやお客さん
のことを考えるとき、
糸井さんはお金のことは想像しますか?
本を何万人が買ってくれたら1億円になる、とか。
- 糸井
- あのね、お金のことに無防備でいると、
結構リスクが大きいんです。
お金のことって、
邪魔するのに都合がいいんですよ。
- 古賀
- 邪魔するのに都合がいい?
- 糸井
- 例えば、古賀さんが何かおもしろいことを考えて、
周りを巻き込んでいこうとなったとします。
そこに、「あれはやればはるほど古賀さんが
儲かる仕組みなんだよ」、
「あいつは自分の欲望のためにやっている」と
誰かが横やりを入れてくるかもしれない。
そう言われたら、動きにくいんですよ。
- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- だから、ぼくはときどき、
「お金好きです」という発言を
わざとするようにしています。
そうしておかないと、
お金好きじゃなさそうなフリしているくせに、
結局お金が好きなんじゃないか、
と思われる場面が出てくる。
- 古賀
- むっつりスケベみたいな(笑)。
- 糸井
- ふふ。
- 古賀
- 糸井さんは「お金が好き」とおっしゃいましたが、
何かがヒットして、
大金を得ることが
シンプルに喜びにつながりますか?
- 糸井
- それは、まったくないですね。
- 古賀
- ないですか。
- 糸井
- なぜかというと、
ぼくが得られるような数字って、
ちっちゃいからですよ。
どうしたって、ちっちゃい。
街にたくさん建っているチンケなビル、
これ、稼いだお金で建ちますか?
って言われたら、建たないですもん(笑)。
- 古賀
- それは、うん、そうですよね(笑)。
- 糸井
- だから、あなた売れてますね、儲かってるでしょう、
とかいうのは、今、敢えて“チンケなビル”
と言いましたが、それ以下の話なんですよ。
- 古賀
- はいはいはい。
それ、気づいたのいつごろですか?
- 糸井
- とっくです。とっくの昔に。
30代のとき、最初はずいぶん儲かったな、
と思ったんですよね。
でも、1000万単位のお金を儲けるって、
こういうことか、と。
ほとんど税金だから、手元に残るのは、
実はみんなの想像している半分なんですよね。
- 古賀
- うんうん、そうですね。
- 糸井
- だから、プロ野球選手の年俸なんかも、
それがとんでもない額だったとしても、
来年ケガしちゃうかもしれないですしね、
本当に自由に使えるお金はどれくらいなのかを
想像してみると、ああ、こんなもんか、
と思うわけです。