おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson920
読者の声2―
「生きがいの組み換え」について

人生の上り坂で、
仕事や、家族や、新たな生きがいを引き受けていく
しんどさもあれば、

人生最後の旅立ちに向け、
生きがいを手放す苦しみもある。

「父は、元の体に戻れないことを悟ったときから、
生きがいを変える作業を一人黙々としていた。
その切なさ悲しみをだれにも見せないことが、
父の最後の生きがい」

という先週のY.Y.さんのおたよりに、
深い反響が寄せられた。

今週も引き続き「読者の声」を紹介する。

<私も進んでいる途上>

長年お付き合いしていた人とお別れし、
喪失感に苛まれていました。

前に進むしかないと、頭ではわかっているのです。
戻ることなどないのだから。

しかし、数ヶ月経った今でも、
ふとした時に彼を思い出してしまい、
失ったことを完全に理解できていない自分が
姿をのぞかせます。
その度に自己嫌悪に陥ります。

Y.Y.さんのお便り、胸に刺さるものがありました。

いま私は進んでいる途上なのだと、
自分を少し認めてあげたくなりました。
(K)

<どんな思いで>

私の父は定年退職後、すぐに、突然死で亡くなりました。
未だに原因不明です。

定年退職時には、住宅ローンも払い終え、
その他のローンも完済していました。
自分がいつ居なくなってもいいようにと、
家族に内緒でいくつかの保険にも入っていたことを、
亡くなった後に知りました。

父は自分の人生をかけて、家族を守り抜いてくれました。

私欲がまるでないかのように、この世を去りました。

人は、自分の存在意義が感じられなくなった時、
命まで失うことがあるのではないかと、思えてなりません。

「お父さん、お父さんが必要だよ。
どんな思いで、一人で死んでしまったの。」
(福岡 R 27歳)

<定年と聞くと>

「定年」と聞くと暗い気持ちがします。
漫画で何トンかのおもりが頭に落ちてくる感じです。

私以外の家族の未来は明るく感じます。
娘二人にはこれから羽ばたく未来があります。
夫は自営業なので、出来る限り働いていけばいい?
‥‥じゃあ、雇われている私は?

定年までの折り返し地点は過ぎています。
絶対にひとりぼっちの日が来てしまいます。

何か見つけないと。

職場で自分の本領を発揮しても
それは職場の功績にしかならない。

焦る。

ただ、今の時点で自分の前を歩いている
素敵な大人がいます。
今気づけたことは苦しいけど、
長い目で見たらラッキーだったかもしれない。
(T.T..)

<父はやっと自分らしく>

父は定年まで三交代のある仕事をずっとやってきた。
工場で夜勤もあり肉体的にもきつかったと思うけど、
最後まで勤めて家族を養ってくれて感謝している。

今は好きな畑や果樹園やミツバチのお世話を一日中したり、
たまに釣りに行ったりして楽しそうなので
よかったなぁと思う。

父の場合は、仕事はしなければならないことで、

やっとそれから解放されて今好きなことができている。

箱の中に居場所があった人は、
箱から出されると、喪失感も大きく、
自分で居場所を見つけなくてはいけないから大変だけど、

箱に頼らず自分で見つけたり、
誰かとつながることができたら、
自分にしっくりなじむ居場所になると思う。
(M)

<難題>

私の母は今月の2日に亡くなりました。

7ヶ月の入院、転院の末です。
母は自宅に戻りたがっていたのですが、
父しかいない、介護サービスを利用しても難しいと考え、
入院生活を続けることを選びました。

私は、気持ちの切り替えは上手い方だと思っていました。
出産後は、スムーズに母になることができましたし、
子どもが巣立っても1日2日は泣いても
元の生活に戻れました。

しかし、今回の母の死は
なかなか受け入れることができません。

入院中は、毎日欠かさず病院へ通いました。
私自身も後悔したくなかった、
母は私が病院へ通うことを楽しみにしていた。

そうすることが、
私の生きがいだったのだろうと今は思います。

今は毎日実家に通い、父の様子を見に行っています。

私は今までの習慣を手放し、
新しい生きがいを組み換えることができるのだろうか。

今までいた人、
大切に思っていた人がいなくなったからといって、
簡単に生きがいを組み換えることは私には難しいです。
非常に後ろ向きな発言だと思いますが、
それが事実としてここに存在します。

早くこの状態から抜け出したいと思いますが、
どうしていいのか分からないことが現状です。

50年近く生きてきて、
大変な難題を突きつけられたような気がします。
(Y)

「自分に何が起こっているのかわからない。」

私の場合はその期間がずいぶん長かった。

アイデンティティの危機という言葉は知っていたけど、
まさか自分がそうだとは思いもしなかったし、
企業を辞めても社会とはつながってるものと
思い込んでいた。

「なのになんでこんな朝からつらいのか?」

その気持ちに「喪失感」という名前がつき、
「社会的居場所を一時的に失った」と解明ができ、

さらに自分は、会社員からフリーランスへ、
編集者から書き手へ、
「アイデンティティを組み換えているんだ」と
名づけできたとき、それだけでも随分落ち着いた。

人は「名のない苦痛」に名を得るだけでひと息つける。

書くことは、自分の名もなき状況に名を与えるのに、
つくづく役立ったと思う。

このおたよりを紹介してきょうは終わろう。

<おたがい何を大事に?>

妻は二年前に仕事を辞めました。

数日の徹夜を強いられたり、暴言を受けたり、
しかし、私や周りがやめるように言っても、
なかなか辞める踏ん切りがつきませんでした。

ようやく辞めた時には疲弊しきっていて、
しばらくはただただ冬眠中の熊のように寝る日々。

そんな日々が、大阪北部地震を境に何か動き出したようで、

片付けなどを始め、
忙しさにかまけて会えなかった人と会ったり、
ハローワークに行ったりするうち、

一年後には全く無関係な業種で再び働き始めました。

その時に、
「前職の書籍や資料は、もういらない」
と言い出して驚きました。

私としては、前職で、資格取得に頑張っていた姿や、
仲間にも恵まれ生き生きと働いていたのも見ていたので、
「そのキャリアを捨てるのはもったいなくないか?」とも
正直思いました。

ですが、捨てることで一番傷つくのは本人です。

それも含めて次の人生を選ぶと決めた判断は
軽いものではありません。
また、捨てなければ
未練を残さず次に行くことも出来ないでしょう。

「急にアイデンティティを失い、もう一度組みなおすのは、
一度死んでよみがえるのと同じです。」

しかも次のアイデンティティが見つかる保証もありません。
そこで問われているのは、

「今まで自分は何を大事にして生きてきたのか、
何をどうこれから大事にするのか。」

先が見えないのは本人も周りも同じです。
だからいつまでだらだらしているのかと、
周りも苛立つのでしょう。

ただ私の場合、妻に、
今までいろんなことがありながらも、何とかしてきたし、
たぶん何とかなるだろうという信頼があった。

行くところを失った人にどう向き合うのか。

そこであらわになるのは、
「お互いが何を大事にして関係を作ってきたのか」
だと思います。
(たまふろ)

 

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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。

 


表現して人とつながる勇気のレッスン!



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河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
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にたくさんのお申込みをありがとうございました。

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2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
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毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=491

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


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山田ズーニーワークショップ型実践講座、
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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
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 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
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職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
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人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
 無料で聴けます

 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。



『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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