- 糸井
- この前の民主党のメール問題をみても、
「偏差値」基準でやってきた、勉強できる子たちの
コミュニケーション能力の低さ、というか‥‥。 - 養老
- 修羅場を踏んできた感じがしないよね。
- 糸井
- そういう意味で言うと、
小泉首相って、よくも悪くも
才能があるんじゃないか、と。
「人生色々」とか、
もうかなわないじゃないですか。 - 養老
- ああ。
- 糸井
- 昔、萬流コピー塾で、
自民党のコピーを募集したことがあって。
で、今でも覚えてるのが、
「そのうち、メシでも」ってのが来て。 - 養老
- 「そのうち、メシでも」!(笑)
- 糸井
- 自民党のポスターにさ、
「そのうち、メシでも」って書いてあったら、
最高だと思わない(笑)? - 養老
- わははは!。
- 糸井
- 逆に言うと、
民主党で「そのうち、メシでも」は
あり得ないですよね。
メール問題を起こした人たちって、
一緒にご飯を食べたいと
思えるような感じじゃないからね。 - 養老
- そうですね。
- 糸井
- 養老さんは、子供のころに
「いい子」っていうのはこうなんだ、
という教育を受けた覚えはありますか? - 養老
- 僕らのときは、
むっちゃくちゃでしたからね。
小学校2年生で終戦だから。
教育なし、価値観もなしですよ。 - 糸井
- ああ‥‥。
- 養老
- だから、根本的な部分では
当時の「世間の常識」が
直接、影響しているんじゃないですかね。
まずは、今日の飯どうする? だったし。 - 糸井
- ああ、そうか。
それは、肉体的たらざるを得ないですね。 - 養老
- ほんとうに、そうですよ。
大学へ行くと馬鹿になるよ、
っていう時代だったから。 - 糸井
- そうか、大学に行くって選択肢が
こんなに無条件になったのって、
そんなに昔じゃないですからね。 - 養老
- 僕らの時代だって、
恥ずかしながら行くって感じだったから。
ようするに、
田んぼ耕すにしたって、
大学を出たところで
なんの役にも立たたないんですよ。
実学じゃないから、余分なものとされてた。 - 糸井
- 女性は学問をするもんじゃないとか、
それは、どう言ったらいいんでしょうね、
その方がうまくいくんだからっていう
ある種の「教え」として語られてたよね。 - 養老
- そう、そう。
- 糸井
- いま、
「ものつくり大学」ってあるじゃないですか。
あれ、理念としては、
とても良かったと思うんです。 - 養老
- うん、あれはハードではなく、
ほんとうはソフトで作るべきだったね。 - 糸井
- あ、そうか。
- 養老
- ようするに、
「器」の問題じゃない。
ソフトとしての学校なんて
いくらあってもいいわけでしょ?
たとえば、古い民家かなんかで、
わらじの作り方なんかを教わる、とかさ。 - 糸井
- 学ぶ「場所」ではなく、何を学ぶかだ、と。
その意味では、「永田野菜」のDVDも
そういう考え方に通ずるのかなぁ。
50種類の野菜の生育のDVD作ったんですよ。
これがあれば農業はできる、という。 - 養老
- まともに育ってるのかどうか、
実際に目で確かめられる。
そういう、身体で直接おぼえる知恵。 - 糸井
- そうそう。
- 養老
- このままいくと、そういった
フィジカルな知恵を持った人たちが
滅んでしまう可能性もある。
だから、身体を使った知恵だとか、
人とコミュニケートする能力だとか、
そういう部分を鍛えておかないと。
米がどうやってできるのか、くらい
ふつうに知ってないと、だめだよね。 - 糸井
- そう。だから、
少なくとも、子供の時代、
つまり人生の1/4くらいの期間は、
人間が生きていくうえで
知っておかなければならないことについて、
学んでおくべきなんですよね。