もくじ
第1回「決断」するということ 2006-05-01-Mon
第2回当たり前のことが、言えない 2006-05-02-Tue
第3回よそいきの人間関係 2006-05-03-Wed
第4回人に「呼ばれる」ちから 2006-05-04-Thu
第5回身体でおぼえる知恵 2006-05-05-Fri
第6回身体感覚を取り戻す 2006-05-08-Mon

13歳で大人になろう。

第5回 身体でおぼえる知恵

糸井
この前の民主党のメール問題をみても、
「偏差値」基準でやってきた、勉強できる子たちの
コミュニケーション能力の低さ、というか‥‥。
養老
修羅場を踏んできた感じがしないよね。
糸井
そういう意味で言うと、
小泉首相って、よくも悪くも
才能があるんじゃないか、と。
「人生色々」とか、
もうかなわないじゃないですか。
養老
ああ。
糸井
昔、萬流コピー塾で、
自民党のコピーを募集したことがあって。
で、今でも覚えてるのが、
「そのうち、メシでも」ってのが来て。
養老
「そのうち、メシでも」!(笑)
糸井
自民党のポスターにさ、
「そのうち、メシでも」って書いてあったら、
最高だと思わない(笑)?
養老
わははは!。
糸井
逆に言うと、
民主党で「そのうち、メシでも」は
あり得ないですよね。
メール問題を起こした人たちって、
一緒にご飯を食べたいと
思えるような感じじゃないからね。
養老
そうですね。
糸井
養老さんは、子供のころに
「いい子」っていうのはこうなんだ、
という教育を受けた覚えはありますか?
養老
僕らのときは、
むっちゃくちゃでしたからね。
小学校2年生で終戦だから。
教育なし、価値観もなしですよ。
糸井
ああ‥‥。
養老
だから、根本的な部分では
当時の「世間の常識」が
直接、影響しているんじゃないですかね。
まずは、今日の飯どうする? だったし。
糸井
ああ、そうか。
それは、肉体的たらざるを得ないですね。
養老
ほんとうに、そうですよ。
大学へ行くと馬鹿になるよ、
っていう時代だったから。
糸井
そうか、大学に行くって選択肢が
こんなに無条件になったのって、
そんなに昔じゃないですからね。
養老
僕らの時代だって、
恥ずかしながら行くって感じだったから。
ようするに、
田んぼ耕すにしたって、
大学を出たところで
なんの役にも立たたないんですよ。
実学じゃないから、余分なものとされてた。
糸井
女性は学問をするもんじゃないとか、
それは、どう言ったらいいんでしょうね、
その方がうまくいくんだからっていう
ある種の「教え」として語られてたよね。
養老
そう、そう。
糸井
いま、
「ものつくり大学」ってあるじゃないですか。
あれ、理念としては、
とても良かったと思うんです。
養老
うん、あれはハードではなく、
ほんとうはソフトで作るべきだったね。
糸井
あ、そうか。
養老
ようするに、
「器」の問題じゃない。
ソフトとしての学校なんて
いくらあってもいいわけでしょ?
たとえば、古い民家かなんかで、
わらじの作り方なんかを教わる、とかさ。
糸井
学ぶ「場所」ではなく、何を学ぶかだ、と。
その意味では、「永田野菜」のDVDも
そういう考え方に通ずるのかなぁ。
50種類の野菜の生育のDVD作ったんですよ。
これがあれば農業はできる、という。
養老
まともに育ってるのかどうか、
実際に目で確かめられる。
そういう、身体で直接おぼえる知恵。
糸井
そうそう。
養老
このままいくと、そういった
フィジカルな知恵を持った人たちが
滅んでしまう可能性もある。
だから、身体を使った知恵だとか、
人とコミュニケートする能力だとか、
そういう部分を鍛えておかないと。
米がどうやってできるのか、くらい
ふつうに知ってないと、だめだよね。
糸井
そう。だから、
少なくとも、子供の時代、
つまり人生の1/4くらいの期間は、
人間が生きていくうえで
知っておかなければならないことについて、
学んでおくべきなんですよね。
第6回 身体感覚を取り戻す