HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
台湾のまど 青木由香の台湾一人観光局 ほぼ日支所
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台湾のおばちゃんたち。

台湾も少し肌寒くなり、クリスマスです。
先日、子供の幼稚園で準備するように言われた
クリスマスに必要なものを買いに出かけました。

プレゼントを入れる大きな靴下は「太原路」。
台北駅裏のなんでも売ってるストリート、
浅草橋と合羽橋を合わせたような下町です。
街全体がホームセンターです。

クリスマスカードは、
市政府駅近くのおしゃれなデパート型書店。
「誠品書店」といい、代官山蔦屋みたいです。

「太原路」には、パーティー&イベントグッズ屋があって、
普段は中華系飾りを売っていますが
この時期はクリスマスグッズだらけ。
中華モノのドラゴンやぼんぼりが
申し訳なさそうにぶら下がっていました。

レジでお金を払おうとすると、
おばちゃんに「あんた、日本人?」
と話しかけられました。
「そうだよ。」と言うと、
「台湾に住んでるのか?」
「出身は日本のどこだ?」
「なんで台湾にいるんだ?」
「結婚しているのか?」
「旦那は台湾人か?」
「仕事は何してんだ?」

一気に質問が飛んできました。
台湾人がプライベートに食い込むのはいつものこと。
適当に答えると
「日本が安いって言うからさ、
マンションでも買おうと思うんだけど
どこか紹介してくれない?」と。

ふむ。

一言「知らない」と言っても
おばちゃんは簡単に放してはくれない。
台湾でおばちゃんに話しかけられたら
どうやっても3分〜5分の会話はしないと終わらない。
この手のふれあいを楽しむのも台湾生活の醍醐味。
そこでフレンドリーな返事を用意する。

「うちの親戚がさ、
ちょっと前に上野あたりの一戸建てを
売りたがってたんだよね。
惜しいなぁ。もう売れちゃったよ。」

「幾らで売ったんだ?」
と漏れなく聞かれましたが、
「台湾の大手不動産が今は日本にも進出しているよ」
と不動産の名前を教えるえたところで5分経過。
気が済んだのか放してもらえました。


おばちゃんは派手です。そして、知人の考察によると
台湾のおばちゃんはピンクの物を必ず身につけています。

通りすがりの人を捕まえて質問をする。
台湾のおばちゃんのあるべき姿です。
バスの中で
「そのバッグはどこで買った?」
と聞かれたこともあります。
市場では、野菜選びに口を出されます。
うちのお店の場合、
日本人経営と知ると家賃まで聞かれます。
というか、店に入ってきて
わざわざ家賃だけ聞きに来る人もいます。
台湾じゃなかったらびっくりするけど、
台湾では、これが普通。


おばちゃんはなりふり構いません。ピンクではないですが赤を身につけています。

そんなことを考えながら都会の方へ。
おしゃれな「誠品書店」に着いて、レジで並んでいると
完全にその空間に似つかわしくない
ショッキングピンクのベストに
チリチリパーマのプードルみたいなおばちゃんが、
割り込んで来てレジの人に話しかけました。

「商品券ある?」

二階で売っていると答えられると
「そうですか。」とは言わず、
「なんだ、ここのレジでも売ればいいじゃない。」
と、今すぐにはどうにもならない提案を始めました。
全身が無印良品みたいな今時の店員も
困った顔もせず普通に対応。
レジに並んでいる客達を待たせ、
しばらく言いたいことを言っていたおばちゃんは、
仲間(おばちゃん数人)のところに戻って
おっきい声で
「売ってないんだってよ、二階に行けってさ。」
とやっていたけど、
それを見ていた間入りされたレジ待ちの人たちも
何とも思っていない様でした。


虐待中ではなく、道端で刮莎(グアサー)中のおばちゃん。
民間療法で引っ掻いて血流をよくする健康法で、
それを道端でやる強者もピンクづかい。

台湾は、間違い電話が多いいんですが
これも90パーセントおばちゃんの仕業で
「違いますよ。」と言っても
「ええ?あんた○さんじゃないの?」
「09××-××××-×××でしょ?」
「なんでよ?」
「なんでだ?」
「ええ?違うの」
と何度も繰り返し、すぐには切ってくれません。
見ず知らずの人と
なかなかの長電話をすることになるんです。


桐島かれんさんのハウスオブロータスのお仕事をお手伝いしたとき、
バイヤーの大森さんとかれんさんがショッキングピンクで信号待ち。
すると台湾のおばちゃんもピンクであった。

そして、買い物の帰り。
ホームで電車を待っていると、
そこにおばちゃんがやって来て、
遠くを見ながらシラっと2人目の後に割り込みました。
全員が見ていたけど、誰も何も言う気もありません。
おばちゃんには特権があって、野放で容認されている。
私にみたいにおばちゃん事件を後で語ることもない。
なぜ社会が容認しているのか、謎です。
逆らったら、おばちゃんにやられちゃうのもありますが
台湾のおばちゃんがすることは、どれだけ強烈であっても
空気のような、木が風に揺れるような台湾の景色なのです。


「写真撮らせて〜」と撮ったのですが、ナチュラルな感じのままでした。
こちらは薄ピンクです。

たまにイラっともしますが、
台湾ライフが飽きないのは、
おばちゃんのおかげと思い
台湾人と同じように
景色扱いできるように修行を積んでいます。

ただ今の若い人が将来こうなるとも思えません。
おばちゃん達がいなくなったら、
台湾の景色は変わってしまいますね。
そう思うと愛しい景色です。


南部ではおじさんもよく寝てますが、おばさんも公開お昼寝。
店頭で寝ています。

2017-12-13-WED