HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
台湾のまど 青木由香の台湾一人観光局 ほぼ日支所
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鄭先生の服。

台湾は、老若男女、Facebook中毒。
うちもこれを使って
sunuiのイベントを宣伝しようと模索中です。
 
Facebookの達人に
「Facebookを盛り上げたかったら、
宣伝系は投稿の半分に抑えるべし!」
と言われた店長さん。
今、Facebookでハリキッテ
店周りのネタを大放出中です。
ここ数日で、
ひっそり系行列店ももう書いちゃった。
自分の行きつけの近所の日本食屋も書いて
滑ってもいた。

ネタがなくなったら
突然こっちにパスして来やしないか。
「多分、来くるな」と私はドキドキしながら
見ています。
ネタ切れ知らずでやっているので
みなさん、こちらから是非「いいね」押して
旅の情報を探してみてください。

では、ここからは、秘蔵の大ネタ行きます!
私が「おかっぱ先生」と呼ぶ「鄭先生」。
最近日本でも、
クラスカや洒落た店で見かける
あのヤケに着やすそうな布の服、
鄭恵中布衣のデザイナー。
60歳初頭のおじさんの話しです。
日本のデザイナーと言われる人たちのように
チャラいカッコはしていません。
私が先生を知り合ったのは、10年以上前。
そのときは、先生は完全におかっぱ頭で
おかっぱ先生とは、私が勝手につけた
日本名です。
自分で切っていたらしいんです。


最近の先生を昼寝あとに捕獲。
寝癖は、昼寝後でなくてもあるときも。
鄭恵中布衣は最近、日本で人気の日常着です。
台湾では、茶人や書家、伝統芸能系文化人に
何十年も着られています。
形がシンプルで、色展開が恐ろしく豊富。
先生が25歳の時、37年前に
デザインしたこの服が、
今や日本の女子に大ブレイク。

アトリエに行くと、たくさんの中から選ぶのにくたびれちゃいます。
お腹をいっぱいにして時間をたっぷり取っていきましょう。
言葉は通じません、カードもダメです。
先生は、台北市内からちょっと行きにくい
紡績工場のある街にわざと住んでいます。
工場の近くに自宅とアトリエを構えているのは、
全部歩いて行きたいから。
布のサンプルは近所の工場で作り、
先生は歩いてチェックに行けるんです。
できた布は、裁断部隊がバシバシと切って
それを、また徒歩圏内の近所のおばちゃんに
内職にだして縫ってもらう。
縫いあがったら、おばちゃんも歩いて納品し、
それをアトリエの二軒先の染場で染めて、
また手でアトリエに運んでそこで売る。
最近は、縫い手が
バイクで納品したりもしてるけど
基本、運搬に大量のガソリンと時間が
使われないようにと、
これも37年前に考えてこうしたんです。
オイルショックもなんのその。

アトリエ兼販売所。
もっと面白いのは、お針子さんへの対応。
一人のお針子さんには何種も担当させません。
とにかく一種類だけをひたすら縫う。
「農夫褲」というズボンならずーーっと「農夫褲」。
「短麻」というシャツなら、ずーーッと「短麻」。
おばちゃんたちの腕は、どんどん上がる。
色々させて混乱を招かないように、
それにお針子のおばちゃんには、
ノルマも課しません。
気が乗らないときは、
おばちゃんを好きなだけ放っておきます。
先生にストックがたくさんあっても
おばちゃんが稼ぎたくて大量に作ってきたら
全部買い取ります。
おばちゃんのスランプや大量注文に備えて、
それに、無理やり作らせて適当な物が
上がってこないようにこうしています。
こだわっているようで
こだわっていないというか
酔拳みたいな感じもあって
適当に見えて、芯がしっかししている、
そして、無理を強いないのが先生の特徴です。

おばちゃんの気分によって縫われた服たちは、こうして種類で分けられています。
見ての通り、山積み具合に差があり
染めは、草木染めではありません。
あの着やすい形から草木染めと
勘違いされることが多いんですが
覚えておいてください。
ここは、化学染料です。
地味に多摩美の染色科卒の私。
その理由がよく分かる。

いろんな金属の水溶液を媒染剤として
布に定着させる草木染めは、
そのまま流したら地球に優しくない。
もちろん、今は染料を流しても
問題なくする薬品とかあるんだけど、
どっちみち、植物相手。
気候次第で色も安定しないし、
たくさん作るのは大変でコストが上がる。
草木染めより価格も供給量も安定している
環境にも人体にも無害な物を
調べ抜いて選んでいます。


みよ、このカラーバリエーション。
台湾の安いイッセイミヤケ??
服の色が、色見本みたいにたくさんあるのも、
赤100%の染液は、一回染めたら
例えば70%の濃度に下がっていて
そこでまた染めると、違う赤ができる。
また染めれば、また濃度の違う赤ができる。
黄色も、青もそうして行って
混色は、70%の青と30%の黄色を混ぜたりして、
染料が「もう、無理〜」というまで
染めまくって、染料分を搾り取って最後に捨てる。
無駄を嫌った方法な故にできる
カラーチャートのような服なんです。
全く同じ色はなかなか出てこないけど、
だいたい同じ色はあるし、草木染めよりは安定的。
自分の気分で微妙な色の違いを選ぶのが
楽しいんです。

ナチュラルと理想を追っかけては、
資本主義の世の中で
自分がいいと思うものを幅広く安く長く提供できないから
理想と資本主義の間で無理なくできることを
考えてるんです。


一番人気は、お土産にも使える手軽な価格のストール、
400元(1400円くらい)。
カラフルなので二本二色使いで個性を演出。
男女いけます!
棉麻混紡の布の気持ち良さを伝えたくて
作る服だから、
先生は、作る方もシンプルで楽でいたいんです。

筆を持った時、お茶を入れた時、
踊りを踊った時に、
動きが綺麗に見えるように意識して、
作られたおかっぱ先生の服。
日本では、おしゃれさんたちが
着るようになったけど、
台湾では昔っから文化人のおっさん、
おばちゃんに愛されているという
不思議な服です。


遠くて行く時間がない、という方は、
是非、MRT大橋頭駅から徒歩7分の我が店へ。
日本語オッケー、カードもオッケー。
日本人好みのものをセレクトしておいてあります。
次回は、もうデザインすることもないのに
服が売れまくってるウハウハの先生が
今、何をやっているのか?
ここに迫りまっす!
惠中布衣文創工作室
北市中和區中山路三段179巷15號
(02)2225-3839
日休 9:00〜18:00
2016-10-26-WED