ほぼ日刊イトイ新聞

ねむりと記憶。 meet unrelated ‘F’ 池谷裕二+糸井重里


睡眠論の第2走者は
「ほぼ日」では『海馬』の著者としておなじみの
脳のスペシャリスト、池谷裕二さんです。
眠っているあいだ、頭の中では
勝手にいろんなものが登場して
いろんなことが起こっているらしいです。
もしかして、いま、
寝ている場合じゃない状況ですか?
そんなときこそ、ちょっとだけ、
眠ってみるといいかもしれません。
すばらしい脳の眠りの世界へ、どうぞ。


池谷さんに、久しぶりにお会いできたので、
スタッフみんなで集まって
ときどきゴハンをつまみながら、お話を聞きました。

池谷裕二さんプロフィール

区切り線

もくじ

第1回
第2回
第3回
第4回
第5回
第6回
第7回
第8回
第9回
第10回
第11回
第12回
第13回

区切り線

第1回 自分が何時間寝たか? 時計を見ずに、当ててみて

池谷
睡眠特集にさきがけて行なわれた
『「ほぼ日」睡眠アンケート』の質問項目に、
僕の訊きたい質問を
じつは、まぜてもらっていました。
どの質問かというと、これです。

ふだんの睡眠時間
ふだんの睡眠時間

理想の睡眠時間
理想の睡眠時間

科学的に正しい睡眠時間のイメージ
科学的に正しい睡眠時間のイメージ

この結果を見て、まず思ったのは、
みなさんが実際に寝ている時間と、
「これだけ寝れば科学的に十分だろう」
と思う時間が、けっこう似ていることです。
みなさん、自分がやってることは正しいと
思っていらっしゃるんです。

その一方で、当然といえば当然なんですが、
「何時間寝たいか」をたずねられると
より長い時間を答えています。
糸井
そうですね。
「理想の睡眠時間」で、
もっとも回答の多かったのは8時間。
僕も、睡眠はやっぱり、
長ければ長いほどいいと思ってます(笑)。
池谷
「もっと仕事したいから、3時間に減らしたい」
と、逆の答えをする人が
もう少しいるかと思っていました。
つまり、多くのみなさんが
長く寝たいと思ってるんですね。
糸井
それは、ある種の
自己愛から来ているのかもしれませんね。
「こんなにがんばっているのに、
 本来手にできる幸せを得られていない。
 いずれは望んだ分だけ寝られるような、
 自分になってみたい」
僕もそうです(笑)。

池谷
なるほど。
睡眠をたくさん取るということが、
ひとつの理想、いわばステータスなんですね。

糸井さんは、睡眠時間は
短いほうですか?
糸井
短くないです。
僕はいつも眠くて、いくらでも寝たい人間です。
だいたい6時間は寝ていて、
それで、少ないと思っています。
二度寝も好きです。
池谷
二度寝は、みんなが好きですね。
糸井
二度寝は「俺は寝てるんだ」ということを
意識できつつ眠るから、心地いいんでしょうね。
つまり二度寝は、ごちそう感がある。
ほんとうに熟睡している場合には
熟睡と感じられないから。
池谷
まさにそうです。
最後の30分は気持ちいいとか、
あと10分寝ていようとか、
それは自分が「そう考えた眠り」です。

例えば、ほんとうに集中してるとき、
「オッ、俺、集中してる」とは思わない。
「俺、集中してる」と思ったら、
それは集中してないんです。
同じように「俺、いま寝てる」と思えるのなら、
それは寝てないわけです。

みなさんは、おそらく
自然にフッと起きたときには、
まず時計を見るでしょう?
糸井
見る、見る。
池谷
「自分が何時間寝たか」を
ほんとうは、脳はわかっていないんです。
もしわかっていたら、
時計を見なくていいんですから。

糸井
いやあ‥‥それは、
ほんとうに、わかってないですね。
「まだ暗いから3時くらいかな?」
なんてことは、すぐ考えるけど。
池谷
何時間寝たか、見当をつけても、
意外とはずれたりします。
糸井
はずれる、はずれる。
池谷
そういう点から考えると、
アンケートで訊いた
「何時間寝たいか」といったときの
「何時間」が、
どういう意味合いをもってくるのでしょうか。

どう、たくさん寝たところで、
「寝た」という実感は、ほんとうはないんです。
糸井
ない、ない。
わかってないんだから、ない。
池谷
ですから、たくさん寝たという実感は、
どれだけ、朝、ふとんの中でグダグダしたか、
という感覚だけなのかもしれません。
それだったらば、ピュアな睡眠とはいえないです。



(つづきます!)


  次へ

そのほかの「ほぼ日」の睡眠論。

2007-12-26-MON

メールをおくる ほぼ日のホームへ 友達にしらせる