あの会社のお仕事。 気になる会社に  素朴な疑問をどんどんぶつける。  コクヨ株式会社  篇
コクヨという会社が、おもしろそうだと思いました。
きっかけは、昨年実施した「社会人の人気企業アンケート」
そのなかで
「製品・サービスに好感が持てるから
 転職したいと思う企業」ランキングの「3位」に
この会社が、ランクインしていたのです。
(ちなみに1位は任天堂で、2位はオリエンタルランド)
高給だから、有名だから、安定してるから‥‥など
転職には、いろんな理由や動機がありますけど、
「つくってるものが、好きだから」という理由で
多くの人に選ばれてるのが、コクヨさん。
そういうのって、なんだかいいなぁ。
そこでいろいろ、取材をさせていただきました。
人に好かれる「ものつくり」についての
ヒントやひみつが落ちてるかも‥‥なーんてたくらみつつ。
なにかを見つけてもらえたら、うれしいです。
第1回 なんで「好かれている」のかが知りたい。
第2回 累計販売数「20億冊」のノート。
第3回 発売4ヶ月で150万冊のノート。
第4回 30年以上、売れ続けている理由。
第5回 プニョプニョピンの田中さん。
第6回 説明なしでもわかるものをつくりたい。

今から、だいたい1年くらい前のことです。

当時、発売されたばかりの『はたらきたい。』
関連コンテンツとして
「社会人がえらぶ人気企業アンケート」
という企画をやったのです。

これは、社会ではたらく社会人のみなさんに
「あらためて就職したい会社」を
アンケート方式で、たずねてみるという試み。

毎年、春先になると発表される
「学生の就職人気ランキング」と見比べてみると、
なかなか興味深い結果が出たので、
くわしくはこちらを読んでいただきたいのですが‥‥。

そのなかでひとつ、
「へええ、そうなんだ」という会社がありました。

下のランキング表を、ごらんください。

ユーザーとして、
製品もしくはサービスに好感が持てるから

という理由で
得票数が多かった企業の、第3位のところ。


「社会人がえらぶ人気企業アンケート」(2008年実施)より。

そうです、あのノートなどの文房具や、
オフィス家具などで知られるコクヨという会社です。

まぁ、全国的に有名な企業ですし、
こういうランキングに入ってくることじたいは、
べつに驚くことじゃないかもしれません。

でも、学生の人気ランキングでは常連中の常連、
ソニーやら資生堂やらANAなんかよりも上位とは。


大阪市営地下鉄千日前線・新深江駅を出るとすぐ。KOKUYOの本社ビル。

なにしろ、上にいるのは「Wii・DS」の任天堂と、
「ディズニーランド」のオリエンタルランドだけ。

なんで、そこまで上位に来てるんでしょうか。

ここで、コクヨがランクインしたのは
製品もしくはサービスに好感が持てるから
転職したい企業
ランキングです。

つまり、「コクヨに転職したい人」のなかには、
給料がいいとか、有名だとか、大きくて安定してるとか、
そういうことよりも
コクヨの製品が好きだから
と思ってる人の割合が、とても多いということ。

むむー。製品って「Campus」ノートとかですよね。
作っているものが、
それだけみんなに好かれてるコクヨって、どんな会社?

なんか、人によろこばれる仕事をしている会社みたいで
ちょっとうらやましいし、おもしろそうだぞ。

‥‥というわけで、
コクヨさんの大阪本社を訪問してきました。

2008年、暮れも押し迫ってきた季節のことです。





でも、そんなコクヨという会社を
われわれ、詳しくは知りませんでした(すみません!)。

もちろん、代表的な商品「Campus」ノート
学生時代に使っていたし、
横山やすしさんや桂文珍さんが
宣伝していた学習机「くるくるメカ」のことは、
CMともども、かなり鮮明に覚えています。

でも、コクヨってそもそも、どんな会社‥‥?

次回からの取材本編をはじめる前に、
ウォーミングアップとして、
コクヨさんのことを、ちょっと紹介しておきましょう。

まず、創業は1905年。

当初は、和式帳簿の表紙を売る店として
その歴史をスタートさせました。

創業者は黒田善太郎さんというかたで、
お店の名前は「黒田表紙店」。


こちらが創業者の黒田善太郎さん。

当時の商人さんが使っていた和式帳簿の、
表紙だけを売るというお店でした。

なぜ「表紙だけ」‥‥?

そもそも、和式帳簿の「表紙」というのは、
帳簿全体の価格の「5%」しかなく、
コクヨさんのホームページにも
「割の合わない商売」
「ニッチな仕事」
‥‥などと
当時の商いのことが書かれていたりします。

しかし、善太郎さんは信念を持って事業に打ち込み、
じょじょにじょじょに、店を大きくしていきました。


大阪の南堀江に建てられた創業当時の社屋‥‥
というか「黒田表紙店」の店構え。

ちなみに、1905年ということは、今年で創業104年。
そんなに老舗だったとは、知りませんでした。

余談ですけど、100年以上の歴史を持つ会社って、
日本全国160万ある会社のうち、1%にも満たないそうです。





和式帳簿の「表紙のみ」を売っていた黒田表紙店ですが、
その後、事業の拡大につれ「商標」が出来てきます。

それが、こちら。そうです、これで「コクヨ」と読むのです。
作ったのは、創業者の黒田善太郎。1917年のことでした。


最初のロゴマーク「朝日ににおう山桜」ではまだ漢字表記だった「国誉」。

この商標「朝日ににおう山桜」には
「自分の立身出世を温かく見送ってくれた郷里の
 ほまれ(誉)とならなければならない」という、
善太郎さんの思いが込められていました。

それで「国誉=国のほまれ=コクヨ」なんですね。

だから「国」とは「日本」を指すのじゃなくて
創業者の郷里・越中富山のことなんだそう。

そして後年、この商標が正式社名となっていきます。
1961年、コクヨ株式会社が、誕生するのです。


時代がくだるにつれ「国誉」ロゴマークも変遷してゆく。

現在2009年は、善太郎さんの創業から104年め。

コクヨという会社は、
いまやグループ全体でなんと13万品番(!)もの
ものつくりを行う、
みなさんご存知の有名メーカーとなっているのです。


2005年、創業100周年を記念してリニューアルされた現行のロゴ。





コクヨを取材してみたいと思った大きなポイントは、
「なんか、みんなに好かれてる」ということ。

そして「好かれている」のが「製品」なので、
コクヨ製品の開発を担当されている
おふたりの方に、話を聞かせてもらうことにしました。

そのおふたりとは
定番商品「Campus」ノートを手がける村上智子さんと
入社20年、さまざまな文具を開発し続ける田中茂一さん。


村上智子さん

田中茂一さん

30年以上にわたる「Campus」ノートの歴史、
4ヶ月で150万部を売った「東大ノート」のエピソード、
コクヨきっての名物開発者(田中さん)が、
新たな文具を開発するとき、大切にしていること‥‥。

みんなに好かれる「ものつくり」のひみつに
迫れたかどうかは、わかりませんが、
いろいろと、素朴な質問をぶつけてきました。

そのようす、次回からくわしくお伝えしていきます。

どうぞ、おたのしみにー。

<つづきます>

2009-05-07-THU
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