第3回 発売4ヶ月で150万冊のノート。


ひきつづき「Campus」ノートの開発を担当されている
村上智子さんに、お話をおうかがいしています。
今回は大ヒット商品となった「ドット入り罫線シリーズ」
(通称「東大ノート」)について、お聞きします。
罫線にドットを打っただけで、150万冊‥‥!?
ほぼ日 中身については、変わってきてるんですか?

スタンダードなノートですし、
そんな劇的な変化は、なさそうですけど‥‥。
村上 はい、「Campus」が好きで
長く使ってくださってるお客さまに対して、
機能的な面で
あまり変わらないものを提供していきたいので、
大きな変更はしていません。
ほぼ日 同じノートを続けて使える、というのが、
「Campus」のいいところですもんね。
村上 ただ、細かなところでは工夫をしてるんですよ。


ほぼ日 ほう、細かなところ。
村上 ノートって、紙面のまんなかでふたつに折ったり、
端から3センチくらいのところに
線を引いたりして使う人が、多いんですけど‥‥。
ほぼ日 ああ、そうですよね、なぜか。
そうしてたような気がします、みんな。
村上 たぶん、日本語って改行せずに
だーっと横書きするのに向いてないと言うか、
読みにくくなっちゃうんですよ。
ほぼ日 ああ、それで、紙面を効率よく使うために
まんなかで2等分してた‥‥のかな?
村上 そこで、現行の「Campus」の紙面には、
中央と、左端の2カ所、
三角のマークを、打ってあるんです。
ほぼ日 つまり、タテ線を引くときの目印に?
はー、なるほど。

いや、この工夫はほんとに細かい‥‥。




村上 ええ、よーく見ないと気づかないので、
今まで知らなかった人も多いと思うのですが‥‥。
ほぼ日 はい、たしかにこれは、いま知りました!

でも便利そうですので、
今後、活用させていただきます(笑)。
村上 でね、ノートの使いかたをリサーチしてみると、
紙面の右端の数センチには書き込まずに
余白になっている
という人が、
55%くらいだったかな、けっこう多いんです。
ほぼ日 ムダになってるんだ、ノートの右のほうは。
村上 そこで生まれたのが「スリムB5」というサイズ。

これは、B5サイズの「左右」を
「3.3センチ」短くしたシリーズなんです。


通常のノートサイズより幅が3.3センチ、スリムなつくり。
ほぼ日 へぇ〜、細長い。ムダをカットしたわけですか。
村上 はい、それだけじゃないんです。

日本人の平均的な手のひらサイズは
195ミリメートルなんです。
ほぼ日 はぁ、195ミリ。
村上 そのサイズの手のひらで持ったときに
「持ちやすいと感じる」のは、
この「スリムB5」の横幅である
「146ミリまで」と答える人が、9割以上‥‥。
ほぼ日 えー、ようするに「持ちやすい」と。
村上 そうです。説明がややこしくて、すみません(笑)。
ふつうのノートよりも持ちやすくて、
片手に収まるから立ったままでも書きやすい。
ほぼ日 なるほど。
村上 さらに、この「スリムB5」というサイズは
開いたときに、
頭をほんの少し動かすだけで読める範囲
である
注視安定視野に、ほぼ収まるサイズで‥‥。
ほぼ日 はい、あの、
「頭をほんの少し動かすだけで読める範囲」
というのは何でしょうか。
村上 上下232ミリメートル、
左右323ミリメートルの範囲のことなんですが‥‥
えー、この資料の図をごらんください。


ほぼ日 はぁ、なんとなくわかりました。
村上 つまり、なにが言いたいかというと、
「スリムB5」というサイズは
ふつうのノートより「読みやすい」幅だということ。
ほぼ日 そんな、頭をほんの少し動かす角度のことまで
ノートづくりのために、研究しているとは‥‥。
村上 ええ、まぁ(笑)。
ほぼ日 ちなみに、その「リサーチ」というのは、
実際に使っているノートを
見せてもらうとか、そういうことですか?
村上 はい、ページのコピーを取らせていただいて、
いろんな観点から、分析をしています。

ここにあるのは、100人ぶんの高校生のノートですが‥‥。
ほぼ日 100人! すごいなぁ‥‥。

あ、これは歴史のノートですかね。
「天下統一のうごき」。

村上 この人は、紙面をめいっぱい使うタイプですね。
ほぼ日 ああ、国語の場合は、こうやってタテにしてました!
「下二段活用」とか書いてある。‥‥古文かな?

村上 最近の高校生は、色をたくさん使うみたいですね。

ほぼ日 なるほど‥‥こういうリサーチから生まれた
商品のひとつが
あの、話題になった、通称東大ノートですか?


「キャンパスノート(ドット入り罫線)」
(通称「東大ノート」)。
村上 東大合格生のノートのとりかたから生まれた
キャンパスノートのことですね。
あれも「Campus」シリーズのひとつですけど、
ちょっとまた、別なんですよ。

出版社の文藝春秋さんと
太田あやさんというライターのかたが
東大合格生は、ノートのとりかたが美しい
ということに注目されたのが、
そもそもの、きっかけだったんです。
ほぼ日 なにか本を出版されてましたよね?
村上 ええ、『東大合格生のノートはかならず美しい』という本。
で、その本との共同企画として
実際のノートを開発したんです。
ほぼ日 ははぁ。
村上 太田さんは、本を書くにあたって
「東大合格生のノート」を
200人ぶんくらい、集めてらしたんですが‥‥。
ほぼ日 こんどは200人ですか。すごい(笑)。
村上 それら太田さんが集められた「東大合格生のノート」を
研究して開発したのが
「東大合格生のノートのとりかたから生まれた
 キャンパスノート」として有名になった商品なんです。

このドット入り罫線の「Campus」がそうなんです。


こちらが試行錯誤の末にたどりついた、
「美しいノート」をつくる解決策「ドット入り罫線」。
ほぼ日 罫線にドットを打った‥‥という発明ですよね。
村上 はい。罫に等間隔のドットを打つことによって
文頭をキレイにそろえることができ、
数学の図形やグラフも、
フリーハンドで美しく描くことができるんです。

ほぼ日 あの‥‥こう言っては何なんですけど、
「東大合格生の」‥‥という謳い文句からしても
なんかもっと「ハデな」といいますか、
「なるほどーっ!」という仕掛けがあるのではと
思ったりしたんですが‥‥。
村上 まぁ、見ためは地味ですよね(笑)。
ほぼ日 こういうノートが、
今までなかったことのほうが、不思議なくらいで。
村上 ええ。
ほぼ日 東大合格生のノートのヒミツが
「キレイに書いてただけなのか?」という疑問も、
うっすらとですが、あります。
村上 研究の結果、東大合格生のノートって
復習のために見返したときに、
学んだことを効率的に覚えられるノート
だったんです。
ほぼ日 なるほど。
村上 つまり「何のために、どうノートを取るのか」
ということが、明確なんですね。
ほぼ日 効率よく覚えるために、キレイに書く‥‥と。
村上 そう。文頭がそろっていたり、
項目がキレイに整理されているということは、
単に「見ためが美しい」だけじゃなく、
頭のなかを整理する、
意味を持った「美しさ」だったんですね。
ほぼ日 はー‥‥。
村上 そこで、紙面をそうやって美しくみせるための
サポートをしてくれるような機能性が
新しいノートには、必要だと気づいたんですよ。

ほぼ日 それが「ドット入り罫線」だった、と。
村上 はい、とてもささいなことのように見えますが、
試行錯誤の末、ようやくたどり着きました。
ほぼ日 その結果、えー‥‥売れたんでしたよね?
村上 はい、おかげさまで、
発売4ヶ月で、150万冊くらい売れました。
ほぼ日 ドットをつけて、150万冊。うわー‥‥。
村上 ええ。‥‥見ためは地味なんですけどね(笑)。
  <つづきます>
2009-05-11-MON
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